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 恥ずかしいことに、僕はここまでの道順を全く覚えていない。だからといって分かっている振りをして洞窟内を進むのは危険だ。それこそ戻れなくなっちゃったら命が危うい。


 だから僕は正直に話すことにする。今ならまだなんとかなりそうだし。


「あ……あはは……えと……その……ゴメン。今の時点ですでに道が分からない……」


「やれやれ……。ダンジョンでは地図の記録マッピングをしながら進むのが基本だぞ? こうした場所で最も大切なのは無事に戻ること。例え目的を達したとしても、戻れずに命を落としてしまっては元も子もないからな」


 ミューリエは呆れ顔で深いため息をついた。僕に向けられている視線も痛く感じる。


 責めているわけじゃないんだろうけど、やっぱり落ち込むなぁ……。


「うん、今後は気をつける……」


「ま、失敗は誰にでもあるものだ。では、私が記憶しているここまでの道順を描いてやるから、この先はアレスが地図の記録マッピングをするのだぞ?」


「うん、分かった」


 ミューリエは道具の入っている袋から羊皮紙とペンを取り出し、そこへ手慣れた様子で地図を描いていった。


 その後、僕はそれを受け取ると、地図の記録マッピングの役割を引き継いで行程を記録しながら洞窟の探索を再開させたのだった。



 →6へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927860513437743/episodes/16816927860514006758

 

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