エンゲージ・ユグドラシル
理想論者
プロローグ 絶望と破滅の龍
炎と血で覆い尽くされた戦場で、少年は叫んだ。
「団長!まだ、まだ…死なないでください。
俺、まだ教わってない事沢山あるんです。…救護班がすぐ来ますから、」
少年が抱き抱えていたのは、女騎士団長、ミステク・ドロシア。彼女は、アーク戦争中に投槍兵に脇腹を刺されて倒れていた。
「…お前は、ユニスか。聖騎士様の元で援護しろ。」
ユニスは、黙ってしまった。なぜなら数十メートル先に聖騎士だったものが頭が無く転がっているからだ。
「聖騎士様は、もう…。」
「…まあ、最期に見るのがこんな雑魚とは…な。」
ミステクは、ユニスと言う少年を最期に息を…
『汝、我と契約せよ』
「誰だ?!」
俺は暗闇の中に叫ぶと辺りは闇と炎に包まれていた。
『我が名は、ゼータ・ネメシス。世界に絶望
と破滅を贈る龍である。』
ゼータと名乗る龍は咆哮と共に頭に直接語り掛けてきた。
『知らないというのか!』
「知らない…です。」
『暗黒竜 ゼター、これはどうだ。』
「それは知ってます。ただ、あなたは百年前…」
ゼターと言うのは百年前に聖騎士ディミク様
に討伐されたはず。
『だが我は死ぬ前に、我の身体に呪いをかけたのだ。我達は百年後に黄泉から戻るとな。』
「…ということはま…た、百年前の惨状を創り出すのか?」
俺は、震えながらも声を出した。
『ところで、あの
ミステクを指差し、ゼータは言う。
確かにゼータにとっては雑魚だろう。人間とドラゴンじゃ差が有り過ぎる。
だけど…
「…ミステク団長を、馬鹿にするな。」
『なんだと?耳が遠くてのう。』
「ミステク…団長を、…馬鹿にするな!!!」
ここは、言わないと気がすまなかった。
『ほう、我に逆らうのか愚かな若人よ。』
逆らうも何も、此奴は団長を馬鹿にした。
まだ気取った聖騎士だったらここまでキレなかった。
『まあ、許そう。人間は恋をすると愚かな行動を起こすものよ。』
それは否定出来ない自分がいる。
「…さっき、あんたは、救いたいのだろう?と聞いてきたよな。救える…のか?」
『ああ、お前が私に契約するならな。』
「内容は?」
『我にお前の命を差し出せ。』
「は?」
何を言っているんだ?此奴は。
『我に!お前の!命を!差し出せ!って言ったんだ!…大賢者あたりの魂の方が良かったが。まあ、差し出せば、助けてやる。』
ゼータは、轟き、天をも突き上げるほどの咆哮を上げた。
「そしたら、救えるのか。」
『ああ、』
ここで朽ちても団長がいずれ幸せを掴めるなら…。
「やってくれ。」
『愚かな若人、我と契約し、身体を捧げしもの。』
闇から出てきたのは、肌が鱗に包まれそうになっている銀髪の青年である。
「『グルァァァァァァアア!!!』」
此奴が、此奴が、治してくれる訳ないんだ。
でも、でも、俺は縋ってしまった。強大な力なら治してくれると思って。
なら、壊れるのかこの世界は。また誰も救えないのか。
「ん?」
頭の代わりに砲弾がある聖騎士の腰が光った。いや、光っている。
聖剣ヴィングスは、暗黒竜ゼターを滅した剣。なら、もう一度。
「く、っく、…ゔが、。」
痛い、俺の体から紫色の煙が舞う。そして、どんどん紫色の鱗が。
紫色の煙はまるで巨大な龍に成り。
『グルゥ…グフォォォォォルル!!!』
辺りの人は吹き飛んで行った。
『どうだ若人よ、我の力は。』
「強…すぎる。」
聖剣ヴィングスに、手を掛ける。
『待て、貴様!やめろ。』
「やらなきゃ、やらなきゃやらなきゃやらなきゃ…。」
聖剣を、鞘から取り出す。
その時、聖剣のブレード(斬る部分)の合金が剥がれ落ちた。
「え?」
そこには、紫に光るブレードと、同じ長さの光線があった。
悪魔との契約は、双方のどちらかが消えると解除されると、知り合いの魔術師に聞いた事がある。
もしこのゼータにも通じるなら。
『やめろ!やめろ!やめろぉぉおおおお!』
ゼータが気づいた時にはもう遅かった。
俺は剣で自分の身体に風穴を開ける勢いで、突き刺した。痛ぁぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!
「幸せ…に、なって…くださいって、多分…助からないか。」
ユニスの視界が暗転した。
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