登校日には頭も気分も切り換えよう!

「あー、暑……お、田中、おはよう。忘れずに登校してきたな」

「ハイおはよう山川君! さてここで質問です、今日はなんの日でしょ~う?」

「なんの日って、登校日だろ」

「違う、今日は夏休みだ! 誰がなんと言おうと今日はサマーホリディだ! 七月二十一日から八月三十一日までは夏休みって、先生も確かに言ってただろうが!」

「まあ、夏休み期間中に今日が含まれているのは確かだな。で、それがどうした?」

「どうしたもこうしたもあるか! 考えてもみろ、夏休みだぞ、夏休み。今日は学校は『休み』なんだぞ。なんで俺たちは、休みにも関わらず制服着て登校してるんだ? なんで蒸し風呂みたいな校舎内で腐るか溶けるかしそうになってるんだよ?」

「お前みたいな馬鹿が、長い休みの間に救いようのない馬鹿にまでレベルアップしないか、取り返しがつかなくなる前に確認する必要があるからじゃないか? 手遅れみたいだけど」

「今年の夏休みは全部で、えーと、じゅーいち、と、さんじゅーいち、で、足して……四十二日しかないんだぞ! その貴重な一日に、なんでわざわざ――」

「分かった」

「――ん? 分かったって、何が?」

「田中、今日はもう帰れ。他の連中が登校してくる前に」

「へ?」

「ちなみに、このクラスには四十名の生徒が在籍している。長く会わなければ、級友の顔や名前をあっさり忘れるようなやつがいてもおかしくない。夏休みは長く、登校日は長い休みの中で唯一、そんな薄情な級友に自分の存在を思い出させることができる日だ」

「う、うん?」

「もう一度言うが、今日はもう帰れ。そしてそのまま九月一日まで登校するな。他の連中から綺麗さっぱり忘れられて、顔と名前を一致させて貰えなくなった挙句、あやふやな笑顔で挨拶されて微妙な空気に包まれることになってもいいならな」

「……」

「……」

「九月一日まで毎日登校しようかな、俺」

「ご自由に」

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