第35話 鉄のメダリオン

城下町カルカッソンにあるセドリックの別邸で一泊し、身支度を整えると編入手続きをするべく、さっそく騎士学校に向かうことになった。

どうやらセドリックは仕事が忙しいらしく、速く手続きを済ませ、自分の仕事に戻りたいらしい。退役従騎士で、今は別邸の全てを任されているマチューという年配の男とロランを連れて馬車で、昨日下見をした騎士学校を訪れた。


騎士学校に着くと、まず事務室を訪れ、編入の手続きをした。

入学手続き担当の職員は初老の男性で、事務室内には男女合わせて十人前後の人間がいた。よく見てみると、顔に古い刀傷のようなものがある者もおり、年齢構成的にも高めであることから、元騎士などの再雇用先にでもなっているのかもしれない。

別邸の執事マチューという男もそうだが、年老いても働く場所があるということは、若い騎士のなり手を確保することにもつながりそうだ。


「はいはい、名前は確か……、ロラン君だったね。神様から授かったスキルは何かな? 」


「えっと、≪≫です。他の人より文字の読み書きが得意です」


「そうか、すごいね。この学校に来る子供たちの大半は、読み書きできないからね。次に年齢は? 」


「水神月に六歳になりました」


担当職員は、ロランの答えを一つ一つ聞きながら、書類に書き込んでいく。


どうやら騎士学校には、スキルや能力値を自動判定する魔法の道具のようなものはないらしい。すべて自己申告のようだ。

普通、この手の異世界学園ものでは入学時に、能力やスキルの判定を行い、クラス分けをして、謎のクラス対抗戦したりするのがテンプレなんだが。


クラス分けはランダムなのか。

それともクラス自体がないとか。

運が悪くて男だけのクラスになるとか、落ちこぼれのヤンキークラスになるとかいう展開はないよね。

心配だ。

クラス分けってそわそわするし、前世の時から苦手なんだよな。

友達一人もできたことなかったから、できれば向こうから友達になろうって言ってくれる人と同じクラスになりたいな。

友達第一号を作ることを当面の目標にしてもいいかもしれない。

彼女なんかもいきなりできちゃってもいいんだからね。


それと騎士階級の識字率ってそんなに低いのか。

力こそが正義、強者は心おきなく好きなものを自分のものにできるみたいな価値観なのだろうか。

同級生が、世紀末なモヒカンや金髪ロン毛のストーカーみたいな奴ばかりでないことを祈ろう。


担当職員から聞かれたのは天賦スキル、年齢、性別の三つだけだった。

あとは、セドリックが何か書類に署名を求められ、入学金と授業料を支払うとこれで手続きは終わりとのことだった。

執事マチューが入寮の手続きとその他諸々を進めてくれて、五日後から騎士学校に通うことになった。


最後に騎士学校の生徒である証となる鉄のメダリオンを渡され、この日はこれで終わりのようだ。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る