第376話 エルフの村と、リフトと、商売

 エルフの村は樹を利用して作られている。

 なんとなく作為を感じるな。

 俺が小説とかを読んで想像してたのとかなり近い。

 それともエルフのありようがそうさせるのか。

 菜食主義の人間嫌いで火を忌む。

 そういう文化だと家を樹で建てるのか。

 深く考えても仕方ない。


「こっちだ」


 クリアに案内されて、ある大木の家に入った。

 縄梯子が怖かった。

 だって揺れるんだもの。

 思わず魔法で上がりますとか言いそうになったが、そうすれば良かっただろうか。

 次は魔法で昇り降りしよう。


「長老のハロゲンですじゃ」

「タイトです」


「ほほほ、人間と会うのは500年ぶりだったかのう。それで村の滞在許可と商売の許可がほしいのじゃな」

「ええ」

「構わんが、退屈な村じゃぞ。前に来た人間は3日で飽きて、帰るなどと言いだしおった」

「見たところ変わった文化をお持ちなようで」

「変わっとりゃせんがな。まあ心行くまでみるとええ」


 よし、リフトの魔法を作ろう。


import magic

import readchar


stone = [0] * 100000

global stone


lift_height=0


mp=magic_make(stone,IMAGEBLOCK) # 石を魔法として登録

while 1:

 kb = readchar.readchar() # 入力

 if kb == 'u' :

   lift_height += 1 # 上がるボタンで上がる


 if kb == 'd' :

   lift_height -= 1 # 下げるボタンで下がる


 if lift_height<0 :

   lift_height=0 # 下げ過ぎないように


 if kb == 'r' :

   magic_rotate(mp) # 回転ボタンを押したら回転

 magic_lift(mp,lift_height) # 石を浮かす

 if kb == 'q':

   break


mclose(mp) # 魔法終わり処理


 こんな感じだな。

 クリアが驚いた眼で俺を見ている。


「何か変か?」

「器用だなと思って。人間の魔道具職人はみんなお前みたいに器用なのか?」

「このぐらい簡単だろう。1文字入力とループと条件分岐ができれば簡単さ」


 クリアに白い目で見られた。

 そんなに変かな。


 リフトの魔法を使っていたらエルフが集まってきた。


「何それ、家に物を運ぶのに便利じゃないの」

「欲しいな。木の実いくつ?」


 前にいた商人が3日で帰ったと聞いたが、なぜかわかった。

 木の実を貰っても嬉しくないからだ。

 非常食として木の実は嬉しいけど、ある程度集まったら虫に食われる未来しか浮かばない。

 商売になどならない。

 貨幣の概念があるだけましなのだろうか。

 ディップ人も貨幣がなかったが、あれとほとんど変わりない。


「代金は魔石でお願いするよ」

「そりゃいい。魔石は使い道がほとんどないからな」


「魔道具は作らないの?」

「魔法でやったほうが早い。エルフは記憶力が良いんだ。スペルブックもほとんど使わない」


 ハイスペック人類だな。

 上位種といっても過言ではない。

 ただ寿命が長すぎて、あくせくすることがないのだろう。

 人間は効率を求める。

 これが無ければ道具の発明もないはずだ。


「リフトの魔法を教えるよ。まず高さという変数を用意するんだ。これを意思で上げ下げする。でその高さに従って石の板を持ち上げる。これに繰り返しという概念を与えれば完成さ」

「興味深いね。10日も考えれば出来るかな」

「俺は一瞬で出来たぞ。【石の板を魔法とする。高さはゼロ。ループ起点。上げろで高さが上がり。下げろで高さが下がる。石の板を高さの位置に浮かべる。ループ起点までループ】」


 エルフの魔法で石の板が上下する。

 エルフは意外と賢いな。

 俺の拙いヒントで魔法にした。

 出来なかった人もいたみたいだが。


「おお、魔法の革命だな。商人よ、ありがとう」

「どういたしまして。まあ、魔道具のほうが便利だから売るけどね。みんな魔石を用意しておいて」

「おう」

「俺も持ってくる」


 集まってたエルフが散って行った。

 これから忙しいぞ。

 プログラム魔法で作った魔道具の便利さに驚け。


「寝る場所に案内するわ」


 クリアに言われて空き家に案内された。

 風呂に入りたい。

 洗浄魔法は使っていたけどお湯に浸かる気持ちよさとは違う。

 よし、作ろう。

 湯屋と湯舟と排水設備を作ればいいな。

 さあやるぞ。

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