第148話 戦闘員と、抗争と、劇薬

 広告を出してくれた店にお礼の挨拶をして回った。

 その途中で戦闘音がした。

 現場に駆け付けると、男が死んでいて、狼の仮面をしたあの女がいる。

 そして、5人の男女が対峙してた。


 弓を油断なく構える男と、短剣を持った男、大剣を担いだ女と、盾を持った男、それに無手の女だ。

 5人の男女が一つの生き物のように動き連撃を加える。

 狼の仮面の女は唸りながらかわしていた。


 右手でスカートをめくると、右腿に装着してある投げナイフを左手で投げた。

 そして逃げた。


「逃げられた」

「狸、見逃してもらったが正しいわよ」

「虎の言う通りだ」


 こいつらコードネームで呼び合っているな。

 どこかの密偵か。


「これはこれは、タイト君。お噂はかねがね」


 狸と呼ばれた男が話し掛けて来た。

 俺の事を知っているのか。

 パレードとかしたからな。

 俺はそこそこの有名人なので、不思議はない。


「そちらは誰だ」

「レジスタのありふれた戦闘員ですよ」


「ふーん、レジスタか。その死んでいる男は?」

「我らが同胞です」


 レジスタと魔導師の抗争か。


「狸、自己紹介しましょうよ。お近づきになっておけば、色々と得になるかも」


 虎と呼ばれた大剣を担いだ女が言った。


「それもそうですな。吾輩、狸と申します」

「虎よ」


「鷹だ」


 弓を装備している男が言った。


「がっはっは、熊だぜ。王族と会話しちまった」


 盾を装備している男が陽気な感じで言った。


「狐。魔王の魔法が見てみたい」


 狐と言った女は内気な感じだ。


「魔法学園に来れば見せてあげられるよ」

「言質はとった」


「では吾輩らはここで失礼を」


 狸が大げさに一礼して、狸達は死体を担いで去っていった。


「あの5人はなかなかやる」


 マイラがそう言った。

 マイラがなかなかと言うとは、驚きだ。

 手練れなのだろうな。


「私と互角ぐらいですね」


 とダイナ。

 5人全てが、ダイナと互角だと思った方が良いな


「オルタネイトの密偵に後をつけさせてます」


 そうレクティが。

 彼らの神秘魔法名は鑑定したから、今度会った時に変装していても分かるだろう。


 再び戦闘音が。

 おいおい、またおっぱじめたのか。


 現場に行くと今度は白い仮面の男が死んでいた。

 そういう事が何回もあった。

 王都はどうしちまったんだ。


 ランシェに会いに行った。

 ランシェは執務室で書類に埋もれている。


「ゆっくりしていくのである。おい、お茶を淹れて差し上げろ」

「王都の至る所で戦闘が起きているけど、どうしまったんだ」

「魔導師とレジスタの戦闘が激化しているのである」


「物騒だな。原因は?」

「狼の仮面の女を知っているのであるか。彼女が魔導師の戦闘員を守るようになって激化したのである」

「なるほどね」


「レジスタは狼仮面を仕留めようと躍起になっておる」

「強力な駒が手に入ったので魔導師が増長したわけだ」

「であるな」


「収まる気配はないだろうな」

「劇薬を使ったから、ほどなく結果が現れるのである」

「劇薬?」


「抗争の場所を地図に起こしたのである。魔法学園が中心にある事とわかったのでな、レジスタに情報を流した。さて吉と出るか凶と出るか」


 魔法学園が戦場になるのか。

 許可したくないが、王家の管轄だものな。

 王族の重鎮がそう決定したのなら、仕方ないか。

 王都の平民に被害が出るのとどっちがましなのだろう。


「不満そうであるな。魔法学園は慈善団体などではない。国に役に立つ人材育成の場である。準役人と言ってもよい。覚悟を持ってもらわねば」


 そうなのか、確かに運営費は王家が出している。

 日本の学校の感覚ではないか。

 軍の学校みたいなものか。

 それも士官学校。

 それなら、仕方ない側面もあるか。

 ひよっこを戦いに差し出すのはちょっとどうかと思うけど。


 俺に出来る事はないかな。

 体のバックアップがない生徒にバックアップを取ってやろう。

 それならもしもの時に完全回復が使える。

 生徒会の出番だな。

 カソードに頑張ってもらおう。

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