第119話 地雷と、通信講座と、盗賊退治

「困った事になった。地面に爆発物が仕掛けられて多数被害が出てるのである」


 ランシェが愚痴りにきた。


「寮に来る時は大抵、愚痴だね」

「しょうがないのである」

「俺は地中の爆弾、それを地雷と呼んでいる。バリアブル領でも同様の事件はあったんだ。その時に探知の魔道具を作ったから、試してみて」

「恩に着る」


 探知の魔道具は前に作ったから、手間ではなかったけど、後手後手だな。

 闇雲に探知しても結果は出ない。

 被害があったところを重点的に調べるしかない。

 結局、被害が起きないと動けないわけだ。

 歯がゆいな。


「タイト、どうしよう」

「こっちもトラブルか。マイラ、どうした?」

「お金が、沢山なの」


 今までもマイラは結構荒稼ぎしたが、さすがに魔法陣の権利料にははるかに及ばない。

 マイラが困惑するのも無理はない。

 製品が腕時計とラジオだけでこれだからな。


「マイラはどうしたい?」

「スラムのみんなを助けたい」


「その場合、金を配るのは愚策だな」

「それは分かる。働かなくなっちゃうからね」


「スラムの人達が貧しいのは色々と理由があるけど、まともな職につけないからだ」

「そうだね。どうしたらいい」


「教育するんだよ」

「今思いついたけど、それなら良い考えがあるの。ラジオを使ったらどうかな」


「なるほど通信教育をやろうと言うんだな。映像じゃないので、教科は限られるがいいと思う。テキストを配りたいところだが、それは金を配るのと一緒だな」

「そうだね。紙を配ると金に換えちゃうと思う。掲示板はどうかな。舞踏祭でカンペを表示したでしょ。人を派遣してラジオの時間にスラムで表示するのよ」


「いいと思うよ。熱心な人は自分で紙を買って写すと思うから。一応、格安でテキストも売ろうよ」

「いいね。買ってくれる人はいると思う」


「科目は何にする?」

「算数と文字」

「最初はそんなところか」


 通信講座がラジオで始まった。

 金を使っただけあって立派な物ができたと思う。

 俺の入れ知恵でコマーシャルも流す事にした。

 金が出て行くばかりじゃ健全ではないからな。

 マイラが支援出来なくなっても続けられるようになるのが理想だ。


 通信講座が始まると。

 次第に人気になった。


 スラムの人達だけでなく平民にも人気が出た。

 教育熱心な人はどの世界にもいる。


 村からの欲求が凄い。

 ラジオを普及してくれとの要望がオルタネイト伯爵に多数寄せられた。

 目的は教育だけではないけどね。

 ラジオでは歌とかやっているから。


 教育を理由にすると財布の紐が緩むらしい。

 いい職につきたいとの思いは強いようだ。


 オルタネイト伯爵は、腕時計とラジオで儲かっているので、ラジオを普及する事に決めたようだ。


 俺達は街道の安全を確保してほしいとのオルタネイト伯爵と要望で盗賊退治に行く事になった。

 地雷探知しながら、荷馬車をゆっくりと進ませる。

 地雷を見つけると、容赦なく魔法を叩き込んだ。


 盗賊は出て来ない。

 見張りを置いて商人が地雷に引っ掛かったら、強奪する手はずなのだろう。

 地雷を破壊しながら進む俺達の前に、姿を現す間抜けはいない。


 安全な囮を用意できたら良いんだろうが、魔法では無理だ。

 何か手はないかな。


「どうしたら良いと思う?」


 みんな首をひねっている。

 妙案は無いようだ。


「一人捕まえれば芋づるなんだけど。それには情報が要るね。村に行ったら何か分かるかも」


 マイラがそう言った。

 村に行って、村長の家を訪ねる。

 冒険者カードを提示。


「ラジオの普及に来ました」

「おお、ありがたい。それで何時からですかな?」

「俺達は依頼された冒険者なんだけど、盗賊が地雷を仕掛けていて、安全ではないので、本隊が来られないんだ」

「それは、難儀しているでしょう。普通なら報復が怖いので、盗賊の討伐には協力しないのですが、特別です」


 そう言って村長は盗賊のアジトを教えてくれた。

 盗賊は電撃の魔法で麻痺させて、簡単に捕まえる事ができた。


 今までの苦労は何だったのか。

 マスコミが力をもっていたのが良く分かる。

 こんなにも簡単に協力が得られるとは。


 盗賊退治は上手くいった。

 被害が報告されたエリアは、根こそぎ行けたと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る