第66話 焼き鳥と、炭火と、醤油だれ

 俺達は建国祭で露店巡りをしているところだ。

 メンバーは俺、マイラ、セレン、エミッタにアキシャルの5人。


「タイト、串焼き食べようよ」

「そうだな、甘い物ばかりじゃ飽きるよな」


「私も」

「ふっ、焼肉で花を作ってくれるかい」

「おっちゃん、5本なのだ。一本は花の形で」


「あいよ」


 ノリのいい店主だな。

 串に焼けた肉を刺して花を作り始めたぞ。

 形で美味さが変わる訳ではないが。

 アキシャルの提案は店主にぴんと来るものがあったのか、俺達4人の分を除いてありったけの材料を花の形にし始めた。


「お待ち、いいアイデアを貰ったお礼に、花の兄ちゃんの分のお代は要らないぜ」


 俺達は串肉にかぶりついた。

 うっ、硬い。

 焼き過ぎだ。

 良く見たら俺が設計したコンロの魔道具を使ってる。

 火力の調整が上手くないのか。


 作り手としては何となく悔しい。

 じゃ、魔道具を作るか。


extern MAGIC *charcoal_fire_make(float mana);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp;

 mp=charcoal_fire_make(0.00005); /*炭火を生成*/

 while(1); /*無限ループ*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 こんなので良いな。

 炭火でじっくりだ。

 串と言えば焼き鳥が食いたい。


 塩も良いが醤油だれが食いたい。

 異世界で醤油は存在しないからな。

 錬金魔法でチャレンジだ。


extern MAGIC *magic_make(char *obj,int obj_size,int imege);

extern void magic_alchemy(MAGIC *mp,char *process_data);

extern int mclose(MAGIC *mp);


char soy_sauce[100]; /*合成する物質100立方センチ*/

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 char process[9]; /*工程データ*/


 mp=magic_make(soy_sauce,sizeof(soy_sauce),IMAGE_LIQUID); /*醤油を魔法登録*/


 process[0]=WHEAT; /*小麦*/

 process[1]=ROAST; /*炒る*/

 process[2]=CRUSH; /*粉砕*/

 process[3]=KOJI_MIX; /*麹を混ぜる*/

 process[4]='\0'; /*終わり*/


 magic_alchemy(mp,process); /*プロセスに従って錬金*/


 process[0]=SOY; /*大豆*/

 process[1]=WATER_MIX; /*水*/

 process[2]=BOIL; /*茹でる*/

 process[3]=COOL; /*冷ます*/

 process[4]=SEED_KOJI_MIX; /*種麹を入れる*/

 process[5]=SALINE_MIX; /*塩水を入れる*/

 process[6]=AGING; /*熟成*/

 process[7]=SQUEEZE; /*絞る*/

 process[8]='\0'; /*終わり*/


 magic_alchemy(mp,process); /*プロセスに従って錬金*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 よし、こんなで良いだろう。

 魔法を実行だ。

 おう、醤油が出来た。

 後は砂糖を混ぜてと。

 みりんは無いからお酒で代用。


「おっちゃん、これで鶏肉を焼いてみてくれ」

「おう、任せとけ」


 炭火コンロと醤油だれの合わせ技で良い匂いが立ち込め始めた。


「こいつは堪らない。良い匂いがするぜ。おっちゃん、今焼いているのを全部」


 そう客が注文する。

 押すな押すなの大盛況になった。

 食ってみたところ、前世の味と比べると素人丸出し料理なのだが。

 懐かしさに涙がこぼれた。


「タイト、泣くほど美味しかったの?」


 心配そうに俺を見るマイラ。


「そうだよ美味い。美味いよ。おっちゃん追加で10本」


 醤油の錬金魔法は魔道具にしておこう。

 この世界にも焼き鳥文化が根付くかも知れない。

 そうなればもっと美味い焼き鳥が食えるかも。

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