主人公になれたらな。

あなたになれたら

ある朝、自分の価値がわからなくなった。

小学校を卒業して。中学校を卒業して。高校を卒業して。

大学に通って。

朝起きて。ご飯食べて。学校行って。帰って。

同じことの繰り返し。

私がいても世の中が変わるわけじゃない。日本が。世界が。変わるわけじゃない。

YouTubeが大好きだ。

もしYouTuberになれたら。

お金もたくさん稼げて。人気者で。

毎日幸せだろうな。

私には動画の才能なんてないから無理だけど。

音楽が大好きだ。

もし歌手になれたら。

注目されて。誰かの希望になれて。

毎日幸せだろうな。

私は歌うまくないから無理だけど。

映画が大好きだ。

もし女優になれたら。

憧れられて。輝けて。

毎日幸せだろうな。

私は不細工だから無理だけど。

本が大好きだ。

もし小説家になれたら。

自分の本ができて。本を読んでもらえて。

毎日幸せだろうな。

私は文才がないから無理だけど。

この世界の主人公はわたしじゃない。

「おれ、おまえが羨ましいよ。おまえになりたいわ」

「え？わたしに？」

「そう。おまえになりたい」

「いや、わたし、いいとこひとつも無いよ」

「いや、そんなことねぇよ」

誰かにとっては私は必要らしい。

YouTuberじゃなくても。

歌手じゃなくても。

女優じゃなくても。

小説家じゃなくても。

別に私は私でもいいかなと思った。

私もあなたになれたらな。