鏡の中のチョコレート【バレンタイン🍫短編集】

桃もちみいか(天音葵葉)

最後のバレンタインデー

 もう、明日のバレンタインデーで終わりにしよう。


 手作りは重たくなるし、あたしのキャラじゃないから、今年もチョコレート専門店で買った濃厚ミルクチョコレートと生チョコのバレンタインセットを選んで買ってきた。


 ミルクチョコレートのくまさんが、生チョコのハートを持っている。

 それと【義理です。いつもお世話になってます】ってピンクのチョコを横に添えてもらって、ひと箱に詰めてもらう。


 義理でもないし、お世話してるのはどちらかといえばあたしの方なんだけど。

 お人好しで、ドジなアイツ。

 私は、弱虫で泣き虫だけど物知りでとことん他人に甘くて優しいアイツが大好きだ。

 困っているアイツを助けるのが、生きがいみたいになっちゃってて。

 お姉さんみたいだって周りに言われて、満更でもない、ちょっと得意げな気分でいた。


 あたし、アイツの一番だって。

 自分の好きって気持ちに気づいてしばらくは、あたしがアイツの一番近くてにいられる特別な女の子だって、勘違いしてたんだ。

 アイツのとなりには、私だけがいるって。そんなの根拠なんてなかったけど、ちょっと自信があった。

 今思えば、あたしって純粋で馬鹿みたい。


 ふと、自分の部屋の窓から外を眺めて見た。

 わあっ、雪が降ってきた。

 寒いはずだね。



 あたしの気持ち、アイツはね、いつまで経っても気づかないんだ。

 アイツはあたしの気持ちなんか知りもしない。

 知ってる。

 アイツがずっと好きなのは、あたしの双子のお姉ちゃんだから。


 あのね、アイツって鈍感だから、真っ直ぐだから。

 好きな子以外、興味がないんだよね。


 だから明日は、ラストバレンタインデー。

 やばっ、泣けてきたじゃん。

 隣りの部屋にいるお姉ちゃんに、泣いちゃってるのバレたくないよぉ。


 この義理の文字でカモフラージュした本命チョコを渡したら、あたしの初恋は終わりにするんだ。


 さよなら、初恋。

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