戦闘終了
前に突き出した拳から複数の炎が放たれ、一体のオーガーに当たったが、両腕を頭の前でクロスされてしまい、簡単に防がれてしまう。
それでも放たれ続けられる炎を鬱陶しいと思ったのか、オーガーは大きな悲鳴を上げ、その場で地団駄を踏み、大きな音を立てた。
後ろにいた二体も、ルーナとフォンセを狙うように前に出始める。
「…………ちっ。|Never underestimate a woman《女を舐めるなよ》」
ルーナはそんなオーガーの姿を見て、コツ……コツ……と。
足音を鳴らし散歩をするようにゆっくりと近づいていく。
「お、本気のルーナを久しぶりに見ることが出来そうだな。これなら、俺の出番は少なそうだ」
フォンセの隣を通り抜け、そのまま近づいていく。そんなルーナの瞳は兄に似て鋭く、殺気が込められていた。
「え、女性に一人であんな大きな化け物を相手にさせる気なんですか?」
「本人も言っているだろう。女を舐めるなよ──ってな。安心して見てな」
したり顔を浮かべ、ルーナと入れ替わりに星壱郎を守るよう移動したフォンセがそう口にする。そのため、星壱郎はルーナの戦闘を見届けることにしたらしく、その後は何も言わなくなった。
「
そう口にすると、ドレス風の服を着ているとは思えないほどの瞬発力で、迅雷の如く走り出した。
薄紅色の長い髪を翻し走り出したルーナに、オーガーが手に持っている棍棒を振り上げた。だが、それに当たる直前で横へと軽やかに跳び躱す。
その流れのまま体を横向きにし、両足を広げ重心を均等に。両手に持っている拳銃のうち、右手はオーガーの額に、左手は棍棒に銃口を向けた。
相手が攻撃動作に入る前に、彼女は迷うことなく引き金を引いた。
破裂音が森に響き、銃口からは硝煙が昇り、棍棒が地面へと転がる。
ルーナの一寸の狂いもない弾は、オーガーの額を撃ち抜いたように見える。
しかし、それだけでは終わらせないというように細い左足を軸にし、オーガーの左側の腰へ右足を蹴りあげた。
女性が蹴ったとは思えない鈍い音が響き、風が起きる。
「────ちっ」
そんな中、不機嫌そうにルーナは舌打ちをした。
「え、なんで……」
「相当硬いらしいな。ん?」
そうオーガーを分析していたフォンセだったが、自身の方にフリーになっている一体のオーガーが近づいて来ていることに気づいた。
「俺はこいつから離れるわけにはいかないんだけどな……」
「ひっ……」
近づいてくるオーガーを煙たがるように、フォンセは眉間に皺を寄せる。その後ろでは、カタカタと体を震わせ、星壱郎が顔を青くしていた。
「全く……。俺を狙うなんて、命知らずにも程があるな」
低音ボイスでそう囁き、フォンセは組んでいた腕を解いた。
そのまま二丁の拳銃を握り直し、胸あたりでクロスさせながら挑むような瞳を向けた。
「
その言葉と同時に、フォンセは姿勢を低くする。そのままオーガーへと勢いよく飛び出した。
接近してくる彼に対してオーガーは棍棒を振り上げるが、その動きは先程見たばかりだ。
瞬時に右手に持っている
少し後ろへと仰け反ったオーガーの額に銃口を向け、弾丸を放つ。
「確かに硬いな」
口元に笑みを浮かべながら無傷の額を目にし、フォンセは余裕そうに次の攻撃体制を作る。
次に狙いを定めたのは、オーガーの両足。
オーガーが棍棒を横一線に薙ぎ払ったのと同時に、彼は姿勢を低くする。左手を地面に手をつけ、避けた。
そこで、自身の勢いで少しふらついたオーガーの足元に弾丸を放ち、それと同時に足払いした。
倒れる前にすぐさまその場から立ち上がり、オーガーの横顔を回し蹴りし、地面へと叩きつける。
そのまま流れるように右手を前に出し、左腕の肘を上げ、顔の横で逆手に構えた。
「か、かっこいい……」
星壱郎はそう呟き、フォンセの戦闘に釘付けとなっていた。
そのようなことを気にせず、フォンセは余裕そうな笑みを浮かべながら長いコートを翻し、体勢を整えようとしているオーガーに向けて、弾丸を放つ。
再度、弾丸は額に当たったが、やはり皮膚が硬いらしく傷一つつかず、何も気にした様子を見せない。
やられ放題にされたオーガーは、怒りで顔を赤くする。地面に落ちた棍棒を拾い上げ、ドシドシと地鳴りを響き渡らせフォンセへと走る。
「甘いな」
向かってきたオーガーなど気にせず、彼は構えた体制のまま弾丸を打ち込む。だが、それは棍棒により弾かれてしまい、オーガー本体に当たらなかった。
「ほぉ、少しは頭を使うらしい」
それでもなお、フォンセは余裕な笑みを消さない。
咆哮と共に振り下ろされる棍棒を、左手に持っている拳銃の銃底で受け止め、左腕の下から右腕を通し、銃口を先程と同じようにオーガーの額に向けた。
「
先程まで普通の弾丸だったはずだが、今回放たれた弾は今までとは異なり、青く輝いていた。
その弾丸は、オーガーの額へと吸い込まれ。暗闇の中で突如として、青い閃光が放たれ辺りを輝かせた。
獣のような鳴き声が響き、地響きが起こる。
耳が痛くなるほどの声量なため、慣れていない星壱郎は思わず顔を歪め、耳を両手で隠す。
「ふぅ。とりあえず終わったな。ほかの二人ももう少しで終わりそうだが、ルーナが手間取ってんな」
地面に倒れ込んだオーガーを横目に、ほか2人を見る。
カマルは、横薙ぎされた棍棒を上へと跳ぶ事により躱す。
空中で拳を作り炎を纏わせ、笑顔で前へと突き出した。そこから炎の玉が複数放たれ、オーガーの顔面に直撃した。
地面に降りたカマルは、そのまま地面を蹴り近づいていく。そして、肉付きのいいオーガーの腹に、渾身の一撃を食らわせた。
「
炎が纏われた拳が腹へとくい込み、オーガーは口から唾を吐き出し、背中から地面へと倒れ込み、動かなくなった。
ルーナは自身の身軽さを活かしている。
慣れたような手つきで、左手を前に、右の肘を上にあげ、逆手で拳銃を構える。
オーガーが距離を詰めようと走り出したため、彼女は弾丸を放つ。それと同時に走り出し、相手の懐へと滑り込み、左側の腰へと回し蹴りを食らわせる。
鈍い音が響くが、オーガーはよろめくだけでダメージはない。だが、それすら予想通りというように、体をひねり上へと跳んだ。
オーガーの顔を回し蹴りし、銃口を額にくっつけた。
「
額と銃口の隙間から、薄紅色の光が漏れ、オーガーの脳天を撃ち抜いた。
そのまま、フリルのついているスカートを翻し、両手を横に広げ、右足からゆっくりと地面へと着地した。そんなルーナの後ろで、バランスを崩し前方へと倒れる。
大きな音を立て土埃が舞い、ルーナの薄紅色の髪を揺らした。
本当に倒すことが出来たか、フォンセが近づき二体のオーガーを確認した。
もう動こうとしないオーガーに触れ、そのまま立ち上がり、ルーナとカマル、星壱郎に目線を向け、したり顔を浮かべた。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます