第30話 グレイ様が迎えに来てくれました

※話が前後してすみません。街に置き去りにされた直後から話は始まります。

よろしくお願いします。



~本編~

中心街で馬車を降ろされてしまった私は、どうしていいかわからずその場に立ち尽くす。このままグレイ様と話も出来ず、お別れになるなんて…


そう思いつつも、家に戻ってもきっとフェアレ様にまた追い出されるだろう。どうしたらいいのかしら?


とにかくここに居ても仕方がない。そうだわ!

向かった先は、リンダさんのお宅だ。リンダさんの家の前に来たものの、やっぱり迷惑じゃないかしら?そう思い、中々ドアを叩くことが出来ない。どうしよう…やっぱりホテルに行こうかしら?


そんな事を考えていると、ガチャリとドアが開いた。


「スカーレットさんじゃない、こんな時間にどうしたの?何かあったの?」


出て来たのはリンダさんだ。リンダさんの顔を見たら、今まで張りつめていた糸が切れ、瞳から大量の涙が溢れ出す。


「リンダさん…私…私…」


堰を切ったかのように泣きじゃくる私に


「とにかく中に入って」


そう言って部屋の中に入れてくれた。そして椅子に座らせ、温かいお茶を入れてくれる。そして私が落ち着くまで、背中を優しくさすってくれるリンダさん。お茶を飲み、少し落ち着いた。


「それで、一体何があったの?」


心配そうな顔で訪ねてくるリンダさん。リンダさんにさっきの出来事を事細かく話した。


「何ですって!なんて女性なの、スカーレットちゃんを追い出すなんて。それで、スカーレットちゃんはこのままでいいの?」


「私は…」


本当はこのままグレイ様とお別れなんて嫌だ。出来れば、きちんとグレイ様と話がしたい。でも…


「スカーレットちゃん、騎士団長様は本当にその女性の事が好きなのかしら?それにもし本当に騎士団長様が、その女性の家でもある男爵家を継ぎたいのであれば、どうして昨日その女性を追い返したの?辻褄が合わないわ」


「それはきっと、私がいたからだと思うわ。責任感の強いグレイ様の事だもの。私がいる限り、グレイ様はフェアレ様の元には行きづらいのよ」


「100歩譲ってそうだったとしても、スカーレットちゃんは本当にそれでいいの?このまま、お別れでいいの?ねえ、スカーレットちゃん、もっと自分に自信をもって。確かにあなたは、元夫のせいで、人間不信になっているところもあると思う。自分に自信を無くしてしまっているのもわからなくはない。でも、あなたはとても魅力的な女性よ。お願い、勇気を出して。元夫と戦った時の様に。あなたは1人じゃないのだから」


1人じゃないか…

その言葉が、胸に響く。


「ありがとう、リンダさん。やっぱりこのままグレイ様とお別れ何て、絶対嫌だわ。もう一度、家に帰ってしっかりグレイ様と話をしてくる。もしダメだったら、またここに来てもいいかしら?」


「もちろんよ。その時はコメットにお酒でも買いに行かせて、2人で朝まで飲みましょう。でも心配だから、私も付いていくわ」


リンダさんに手を引かれ、玄関を出ようとした時だった。


「ただいま、リンダ。大変なんだ、スカーレットちゃんが…て、なんでスカーレットちゃんが家に?」


物凄い勢いで家に入って来たのは、コメットさんだ。そしてなぜか目玉が飛び出るのではないかと言うほど、私を見て驚いている。


「コメットさん、おかえりなさい。もう私は帰りますので…」


そう言って玄関を出ようとしたのだが…


「待ってくれ!とにかく中に入ろう。リンダ、スカーレットちゃんを居間へ。俺はちょっと急用を思い出したから、出てくる。いいな、絶対に逃がすなよ!」


逃がすなよって、私、何か悪い事をしたかしら?リンダさんと顔を見合わせる。


「とにかくコメットもああ言っているし、とりあえず少し待っていてくれるかしら?それにしても、一体どうしたのかしらね?」


リンダさんも何が何だかわからないと言った顔をしている。リンダさんがお茶とお菓子を出してくれた。でも、早くグレイ様の元に向かいたいのだが…


その時だった。


「スカーレット!よかった、ここに居たんだな!よかった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る