12話目

「お人形…?」

アイが呟いて近づこうとすると、レンはアイの腕を引っ張った。

「ちょっとちょっと!そんな怪しいものに簡単に近づいちゃダメでしょ!」

レンは、軽く呆れたようにアイを見て言うと、コウの「えっ」と言う声が聞こえた。

「……」

何も言わずにレンが声のした方を見ると、コウが人形の前に屈んでいた。

「〜〜っバカなのかな!?」

レンは思い切り大きな声でツッコミを入れると、コウは「ごご、ごめんなさい!」と謝っていた。

「で、でも、何も起きないよ…?」

コウは人形を持ち上げて言うと、レンは「ちょ、そういう物に簡単に触れちゃ…」と言い、慌てて止めようとした。

そう、止めようとしたのだ。

次の瞬間、コウの元へ棚が倒れてきた。

コウは「わっ…」と声を漏らすと、棚に押しつぶされた。

「……え」

アイは困惑していた。

目の前で起きた光景に、状況に。

レンは急いで棚の方へ近づこうとし、アイに手を伸ばした。

「アイちゃん!離れないで!」

アイは、後ずさりそうになるのを堪え、レンの手をとった。

棚の方へ近づくと「ぐすっ」とすすり泣く声がした。

「…?」

レンが不思議そうに棚を持ち上げようとすると、棚が一瞬にして白い花びらとなった。

「は、はぁ?」

レンが素っ頓狂な声をあげた。

「待って、何これ?こんなの…」

レンとアイは、花びらの先を見た。

そこには、人形を持って泣いているコウが居た。

「…こんなの、最上級魔法と変わらないじゃないか…」

レンはどこか焦っているような表情を浮かべながら言った。

アイは、コウの姿を見て

「本当に、コウだよね…?」と不安気な声を出した。

コウは涙目でアイを見上げると

「ほ、本物だよ…? 」と首を傾げた。

アイはレンから手を離すと、コウのことを抱きしめた。

「よかった…」

「わ、わ…?」

コウは困惑しながら、抱きしめられていた。

そんな中、レンは一人呟いていた。


「……人間に…負ける、なんて…」

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