通り魔に刺されて死んだけど、ユニークスキルで異世界無双したい思います!
はるさめ
第1話 死亡〜転生
ない。彼女いない歴=年齢だ。
自分で言うのもなんだが、身長は低い訳でもなく、顔に至ってはそこそこイケてると思っている。だけど、モテない。何故だろう。
一応、彼女を作ろうと努力した事もあった。何回か告白を試みたけれど、全てフラれた。そして、俺は心はポキっ音を立てて折れた。
もうこの歳だ。結婚なんて諦めている。
・・・いや、機会があれば是非・・・。
仕事が忙しいというのもあるが、そういう機会がない。別に居なくても困るものではないし、身の回りの事は自分で出来るし。言い訳してる訳じゃないからね?本当だからね?
・・・何故俺がこんな事に考えていたかって?
それは・・・、
「先輩!今度の休みに合コンに来ませんか?一人来れなくなっちゃって」
笑顔で話しかけてくる爽やかな青年。俺の後輩の西崎だ。10歳年下の25歳だ。
そう、合コンに誘われたからつい、考えてしまったのが理由だ。
何故、俺を誘うのだろうか.....?
俺みたいなオッサンではなくもっと西崎と同年代の.....そう若い子を誘えばいいのに。
・・・何故、俺を誘ったのかすぐに分かった。
「先輩!どうするんですか?行くんですか?行かないんですか?もし、この機会を逃したら一生独身ですよ」
どうやら、俺がこのまま独身で一生を終える事が心配らしい。
10歳年上の先輩になんて口の利き方だ。後でゆっくり、みっちりと指導してやろう.....。
でも、まぁ、この機会は滅多にないだろう。
西崎の言う通り、これを逃したら一生独身かもしれない。
ここは素直に提案に乗ることにしよう。
「おぉ、分かった。行けばいいんだろ行けば」
「そうこなくっちゃ!じゃあ、今度の休みの19時に会社の近くにあるカラオケ店で!!!」
そう言うと西崎は去っていった。
35年間生きてきて合コンという名の神イベントは初めてだ。
顔には出さないが、西崎から言われた時は正直ワクワクドキドキした。
- 合コン当日 -
俺は10分前に待ち合わせのカラオケ店へ入った。
だが、既に俺以外のメンバーは集まっていた。
女子2人、男子は俺と西崎の2人の少数だ。
・・・いや待て、これはおかしい。おかしすぎだ。
俺は女子の方の見て思った。
若過ぎるのだ。20代前半といったところだろう。
おっさん1人と若人わこうど3人。
当然の事ながら俺はハブられた。
・・・まぁ、知ってたけど。 でも、なんだろう..... この雰囲気は.....。
その女子2人は明らかに西崎を狙っている。
まぁ、それは普通のことだと思うよ。
でも、アプローチがこれまた凄い。
特に化粧の濃い方はアプローチがヤバい.....いや、えげつない。
正直、羨ましいどころか恐怖すら覚える絵面だ。
それに対し、西崎は・・・
「いいね!今度一緒に行こうよ!」
満更でもない様子だった。
この空気に耐えかねた俺は、
「西崎。俺、外に出て風に当たってくるわ」
と言い、その場を後にした。
俺には合コンは早かったらしい。
そのまま俺は残り時間を外で過ごした。そして、合コンは終了した。
その合コンの帰り道。
「先輩。これからっすよ!これから!あ、ちなみに僕、あの右側にいる子と今度、デートする約束したんですよ」
西崎は上機嫌だ。
どうやら、静かに座っていた清楚な感じの女性とデートの約束をしたらしい。まぁ、賢明な判断だろう。もう1人の女性は獣、と言うか野獣そのものだった。
・・・思い出しただけでも鳥肌が立つ.....。
「そうか、良かったな」
・
・
・
「「「キャァァァァァァアアーーーーーーーーーーー!!!!!」」」
どこからか女性の悲鳴が聞こえる。
何だ?一体何が起きている!?!?
「どけどけー!どかねぇと殺すぞ!!!!!」
その声がした方を振り向く。
顔にはマスク、手には包丁。そして、全身黒ずくめの格好をした男がこちらに向かってくるのが見えた。
これは流石にヤバいな.....。
俺は走って逃げようとする。だが、西崎の様子が変だ。
「お、おいっ!!!どうした、早くに逃げないとヤバいぞ」
「す、すみません先輩。足が竦んで動けないんです」
西崎は足が竦み、身動きが取れないようだ。
「先輩、俺のことは構わずに逃げてください!!!!!」
・・・と言われても西崎を見捨てることなんて出来ない。
俺はすぐに西崎に駆け寄った。
「俺の肩に掴まれ、西崎」
「すみません、先輩」
「掴まったな。よし、行く・・・」
「「どけどけぇぇぇぇぇえ!!!!!」」
ドスッ!俺の背中から全身にかけて焼けるような痛みが走ってきた。男はすぐそこにいた。
・・・マジかよ..... さっきまであそこにいたじゃねぇか..... どゆだけ足速いんだよ.....。
俺は膝から崩れて落ちた。
・・・痛い.....。
「先輩!」
西崎は叫び声が聞こえる。
どうやら、怪我はなさそうだ。良かった。安心した。
こんな奴でも俺の可愛い後輩だ。
「しっかりしてください!だ、誰か早く救急車を」
今にも泣きじゃくりそうな顔で俺を抱えた。変な顔だな。俺は笑いたかったがそんな気力どこにもない。
「・・・先輩。しっかり、しっかりしてください」
「・・・心配するな。それよりもお前今、顔が面白いぞ。そんな顔してたらあの女の子に振られるぞ?」
西崎は少し苦笑いにした。それでいい。お前の泣き顔なんて見たくない。
「・・・そ、そんな先輩だって面白い顔してるじゃないですか」
「・・・俺はいいんだよ」
声を出すのが辛い。
それにさっきまであった強烈な痛みがだんだん感じなくなってきた。
・・・寒い。もう死んでしまうのだろうか。
「先輩。しっかり。もうすぐ救急車が来ますから。」
声が遠い。それに目が霞んできた。
「・・・・・・先輩・・・・・・先輩・・・・・・先輩・・・・・・しっかり・・・・・・!!!!!」
もう目を開けるのがキツイ。
俺は最後に力を振り絞り西崎にこう言った。
「・・・・西崎・・・・ありがとな」
そして、俺はゆっくりと目を閉じた。
俺の最後に見たものは西崎の泣きながらも最高の笑顔だった。
大野健おおのたける35歳。童貞。独身。1人暮らし。彼女いない歴=年齢。
今、彼の35年間の人生は幕を閉じ、そして新たに幕が開かれる。
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