拘束プレイとサバイバルイベント
『あー。皆さん。サバイバルイベントを南の泉にて開催します。30分待ちます。きてね』
やる気のなさそうなだらりとした声が響いた。
アカの話によると、このサバイバルイベントは南北東西いづれかの地域で突発的に行われるもので、街にいれば参加できるが、開催地域と別の場所にいると参加出来ない。
距離的に間に合わない。
勝ち抜くと豪華賞品が与えられるらしい。アカはまだ1回しか参加出来ていないから、今回参加出来たのはラッキーだって。
このサバイバルイベントは途中参加無し、途中退室ありで、1回死んだら終わり。倒したプレイヤーの数と、どれだけ長い時間生き残れたかがポイントとして合算され、最終的に多かった人の勝ち。
賞品に関しては、イベントを開始した運営の人の裁量なので、よく分からないんだと。1位の人しか貰えないとか、10位まで貰えるとか。貰えるものもアイテムとか権利とか、色々なんだと。
アカが前回参加した時は準優勝で、賞品は権利。スキル獲得権貰ったって。
「というかさ、サバイバルなんだよね。アカと戦うの嫌なんだけど」
勝てる気しないし。
「んー。私としては戦っても戦わなくてもいいんだけど、ただイベントに参加するのも面白くないよねぇ」
「どうするの?」
「共闘?……いや……うーん」
そうやってしばらく悩んだ後にアカはぽつりと言った。
「絶望を与えよう」
「?」
物騒なこと言ってるけどだいじょぶそ?魔王かな?
「普通にイベント参加すると、多分私勝つからさ、殲滅戦得意だし。だから、より絶望をみんなに与えた方の勝ちにしよう」
「???」
「こいつやべーって思わせた方のかち」
あー、なるほど。
「おけ。どうやって判断するの?やべー具合は」
「ライブ配信しよう」
「らいぶ?」
「そう」
アカの話によると、このゲームは自分の活動をライブ配信という機能でたくさんの人に見せれるらしい。
その機能を使って、私たちの戦闘シーンを見せて、やべーって思わせたほうの勝ち。
「ん、おもしろそう」
「でしょ?私は結構知名度あるから色々知られてる。最初からやべーって思われてるの。対してプリンは未知の恐怖があるからね。どっちが勝つか見ものだよ」
「未知ねぇ」
んー。出来るだけ情報を出さないように絶望を与える?できるかな?
「勝った方は何でもひとつ言うこと聞くってことで」
「いいよー」
勝てる気はしないけど、まぁ、頑張ってみようかな。
「よし。それじゃ、ライブ配信の準備するから待っててね」
「ん」
アカが手を振って何かを操作すると、私の目の前にポンッとスライムさんが現れた。
「わぁ、スライムさん!浮いてる!なんで?かわいい」
思わず抱きついてムニムニする。
「それ、映像を視聴者に送るヤツ。色んな姿にできるけど、スライムにしといた」
「ないす!」
アカの方にはドクロがあった。昔からそーゆーの好きだったよねぇ。
「そのスライム、早く離した方がいいよ。視聴者が荒れてる」
「ん。わかった」
手を離すとふよふよと私の頭上まで移動して止まった。可愛い。
「コメント見れるようにしとく?」
「んー。訳わかんなくなりそうだからいや」
「じゃ、コメントは非表示設定しとくね」
「ん」
そう言ってアカはまた何かをいじり出すと、顔を顰めた。
「うわー、コメント見てーってめっちゃ言ってるよ」
「えー、情報量多そうでいやだよ。パンクするもん」
「別に表示だけしといて暇な時に見れば?」
「んー」
まぁ。それでもいいか。
「じゃあ。表示だけしといて」
「おっけー」
すると、私の視界の端に枠のようなものが出来て、その中をたくさんの文章が埋めつくしていた。
[みえてるー?]
[アカさんの友達?]
[かわいい]
[またひとり天使が]
[アカさんみたいな化け物出ないことを祈る]
[初心者かな?]
[かわいすぐる]
あー。見てると頭痛くなりそう。
挨拶はしとこうかな。
「えーっと。プリンです。アカの友達です。よろしくです」
[よろー]
[挨拶どうも]
[リアルの友達なの?]
[結局何するの?]
「基本コメントは無視でいいからね」
「わかった」
いちいち対応しなくていいのはありがたい。
避難の嵐がチラッと見えたけど、これも無視でいいよね。
「さてと、そろそろみんなも痺れ切らしてるだろうし。今回みんなを集めたわけを説明します」
[おー]
[ぱちぱち]
[はよ]
[(ノシ ・A・)ノシ バンバン]
「今回、私とプリンでひとつ、勝負をすることになりました。勝負内容はどっちがやべーやつかを決めるというものです」
[??]
[アカさんの性癖の話?]
[やべーやつww]
[謎の勝負始まったな]
「ねぇ、アカ。性癖って、なんの──」
「それはいい!なんでもない!コメント何も言うな!」
アカの性癖かぁ。あー。なんだろ。昔そっち系の話しあった気がする。
「小6?5?いつだっけ、たしか──」
「それはだめ!ほんと話しちゃいけないやつ!」
アカが涙目で狼狽え始めたので口を閉じた。
言うと多分泣くので。
[くっそ気になる]
[やっぱリア友か]
[いくらで話してくれますか?]
[スパチャあり?]
すぱちゃ?
まずいな、コメント見てたら分からないこと増えそう。
「私の話はともかく!やべーってのは戦闘力の話!性癖関係なし!」
[あーなる]
[アカさんの勝ちじゃん]
[プリンちゃん。初心者でしょ。アカさん大人気ない]
[|д゚)アカさんそれでも人間か!?
]
[プリンちゃんかわいそう]
「はっ!なんとでも言いなさい。プリンの実力見たら意見変わるから」
そこで、ひとつのコメントが目に入った。
[プリンちゃん、このゲームはじめてどのくらい?]
「ん?昨日始めたばかりです」
「だから、それ込みで判断よろ」
私の言葉にアカが補足する。
[なるほど]
[そーゆことなら]
[まっかせなさい!]
お、ひとつの文っぽくなってる。ちょっとすごい。
そうやって、コメントの対応をしながら待ち時間を過ごした。
そして。
『ではー。以上でイベントへの参加を締め切ります。えー。ルールは、前回と同じです。説明省きます。めんどいので。皆さん頑張ってください』
「前回のルール?」
「まぁ、死んじゃダメ、たくさん殺してね。ぐらいの認識でいいよ。特に重要なことないから」
「ん」
『それでは、サバイバルイベントまで』
『3』
「「「「「『2!』」」」」」
「「「「「「「「『1!!』」」」」」」」」
『……開始』
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