拘束プレイとスライムさん

目が覚めた。本日3回目。


とても高く、綺麗な天井が目に入った。


どうやら私は寝転がっているっぽい。


体を起こすと、ぐるりと、辺りを見渡した。


私は、なんだろ、教会?みたいな所の、台座、かな?そんなところに寝転がってた。


一度、お母さんの友達の結婚式に行った時に見た場所に似てる。


あの日食べたプリン。美味しかったなぁ。また食べたい。


私の左側には、おっきく綺麗な女の人が書かれている。女の人の周りには、泉や、森、たくさんの動物が描かれていた。


絵画の価値や素晴らしさなんて全く分からない私にも分かる。わかりやすく綺麗な絵だった。


その絵画には、天井に設置された小さな窓から光が差し込んでいて、とても幻想的。


右側には、通路とその奥に大きな扉。通路の脇には長めの椅子が等間隔に並んでる。


あれ?なんか、生贄にされそうなんだけど、わたし。だいじょぶかな。だいじょぶだよね。


朱里と結構前に見たアニメで女の子が生贄にされるシーン。こんな場所で生贄にされてたっけ。


少し怖くなって、素早く台座から降りると、ふわっと、私の事を淡い光が包み込んだ。


『女神から加護が与えられました』


おー。らっきー。なんかいいことあるかな。あるといいな。


「女神さん、ありがとうございます」


そう言って大きな絵にお辞儀する。


たぶん。この女の人が女神さんだよね。


女の人は静かに瞳を閉じていた。心無しか笑顔に見える。


私はトコトコと扉の前まで歩くと、一度振り返って言った。


「おじゃましました」


誰もいないけど、いちおうね。




外に出ると、全くもって新鮮な景色が広がった。


日本と違って色々な髪色の人が、ゴツゴツとした装備とカッチョイイ武器を持って歩いている。


街並みは近代的とは言い難く、時代は少し古いように感じる。自動車ではなく馬車が行き交い、マンションではなく平ったいレンガ作りの家が立ち並んでいる。


ザ、ファンタジー。


「ほぇー。やっぱすごいなー。このゲーム」


と、そーいえば、街に着いたら連絡してって朱里が言ってたっけ。忘れるとこだった。


現実で連絡先知ってればゲーム内でも連絡できる。とてもべんり。


朱里に電話を掛ける。ワンコールで出た。ずっとスタンバってたのかな。ズラじゃないとか言わないかな。


『ほのか?今どこにいる?』

「んっとねー。教会?みたいなのの前だよ」

『そうなんだ。ごめんけど、ちょっとそこで待っててくれない?』

「ん、どうして?」

『ちょっと、めんどいことが───────』

『アカさま!あぁ、こんなところであえるなんて!これはもう結婚するしかっ───』

『うるさい、しねっ。離れろカス』

『照れ隠しはいいんです!素直になってくださいっ』


……。


「おっけ。状況はわかんないけど、事情はわかった」

『ありがとっ。このばか片付けたらすぐ行くっ!』

「ん、まってるねー」

『あぁ、アカ様!アカさまぁ!』

『このっ!ころっ──────』


通話が切れた。


「大変なんだなぁー」


それから私は、朱里に言われた通りに、その場でじっとしてた。


することも無く暇だったので、プレイヤーさんたちの話していることを聞いていた。


『北の森いこうぜ』

『なぁ、あの子可愛くね?あの白髪の』

『武器を新調したくて─────』

『えー、北の森かよーあそこスライムしかいねぇじゃん』


ん?スライム?


『いいじゃねぇか』

『いやだ!今日は西の方行こうぜ』


さっき、スライムって言った?言ったよね。スライムさんがいるの?このゲーム。


……まじか。


「行くしかないよね」


抱きつくしかないよね。


あぁ、おやつを上げて、撫でて、抱きしめて、なんなら飼いたい。


だいすきな、愛してるスライムさんに。会いたい!


私の部屋に鎮座する。様々なスライムさんグッツを思い浮かべる。


あぁー。生きて、動いてる。スライムさんに会える。なんて、なんてすばらしい。


朱里の言ったことなどとっくに忘れて、スライムさんに会いに行くために、北の森などという場所に向かった。


もちろんダッシュで。







それから、2回ほど迷って、北の森にたどり着いた。


3回人に尋ねた。結局最後に訪ねた人に、ここまで案内してもらった。やさしい。そして私の方向感覚に涙が出る。


「スライムさんーどこかなー」


ドロドロじゃなきゃいいな。プルプルの、悪くないスライムさんがいいなぁ。


あー。スライムさんがいるなら、モンスターを従えれる職業になればよかった!


たしか、あったよね、そんなゲームの職業。ていまー?だっけ。そんな感じの。このゲームにあるかは知らないけどさ。


あぁ、仲良くなれるかなぁ。なれるといいなぁ。


そんなことを思いつつ、スライムさんを探すこと数分。


うさぎさんに出会った。


かわいい。ツノついてるけど。かわいい。


抱きつきたいけど、抱きついたらたぶん。刺さる。


うさぎさんは私のことを見ると、トコトコとこちらに走ってきた。


かわいい。かわいんだけどさ。


あれ、あの、ツノこのままだと、刺さるくね。


恐ろしく身の危険を感じた。うさぎさんのつぶらな瞳がかえって怖かった。


「た、たいひー!」


うさぎさんは加速した。


はじめて、うさぎさんが怖いと思った。




それから、結構走って、何とかまいた。


「はぁー。ツノがなかったら、良かったのに」


角無かったら、全力でモフったのに。ざんねん。


というか、スライムさんいない。


来る場所間違えたのかなぁ。


実際。ここに来るまでに2回くらい迷ったし、場所間違えててもおかしくは─────


あ、みっけ。


「かくほー!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る