第203話「顧問じゃなく、さ、最高顧問!? どういう事!?」

未曽有の大災厄、大破壊の発生で、

俺のスケジュールは、大幅な変更を余儀なくされた。


まあ、これからもこのような事は度々起こるだろう。


何故なら、俺は3つの仕事を掛け持ちする身。

国王陛下直属の王国執行官であり、

冒険者ギルドとルナール商会の顧問を兼ねている。


王国、冒険者ギルド、ルナール商会、

当然、王国がまずありきの優先順位はつけなくてはならない。


でも、その都度、最善の対応を目指して行こうとは思う。


ちなみに明後日、王立闘技場において、大破壊収束の正式発表を行うのだが、

準備に関してはグレゴワール様が手配するとの事で、

俺は「明日午前中、リハーサルをすればOK」とだけ言われている。


なので今日は、別の用件を済ませる事にあてる。


さてさて!

朝の合同連絡会議において、俺は秘書達と相談。


結果、あまり時間をかけず、午前中は冒険者ギルド、

午後はルナール商会を訪問する事を決めた。


午前9時30分過ぎに、公爵家邸を秘書3人と出た俺は冒険者ギルドへ。


本館1階の受付で、トリッシュさんが入館手続きを行う。

既に、シルヴェーヌさん、シャルロットさんの所属登録証も出来ており、

全員の所属登録証を見せるだけだから、煩雑な手続きは不要である。


すると、受付に俺宛で、伝言が入っていた。


ギルドマスター、テオドール・クラヴリーさんからだった。


内容は、俺が出勤して、タイミングが合えば、会って話をしたいというものであった。


このような場合、本来ならば、公爵家邸別棟へ直で呼び出しが来るところ。

しかし大破壊収束や、王家との絡みで「遠慮した」に違いない。


先ほど予定を立てた際、午後は訪問すると、ルナール商会へ魔法鳩便で連絡を入れてある。


「申し訳ありませんが、本日、ロイク様は、お昼までならギルドにおります」


そう、トリッシュさんが受付の職員へ伝えると、


「かしこまりました、マスターへお伝えします」


との事。


職員さんは魔導通話機で、多分マスターの秘書なのだろう。

その旨を伝えていた。


そして俺達には、


「そのまま、お通りくださいませ。マスターから顧問室へご連絡を入れますね」


と笑顔で言う。


入館許可が出たので、そのまま魔導昇降機で、8階の幹部専用フロアへ。


個室の扉のあるフロアをしばし歩き、とある部屋の前に。

扉には、木のプレートが掲出されていた。


何げに見ると、プレートの表記が微妙に変わっている。


『ロイク・アルシェ最高顧問室』と書いてある。


え!?

何、これ!?


顧問じゃなく、さ、最高顧問!?

どういう事!?

受付で何も言われなかったけど……


「ロイク様、最高顧問ってどういう事でしょう? トリッシュさん、これは一体?」


「ええっと、申し訳ありませんが、私は何も聞いておりません」


「もしかして、ギルドマスターのお話しに、関係があるのでしょうか?」


秘書達も気付き、同じ思いだったらしく、首を傾げていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


最高顧問室となった部屋の内装はほとんど変わっていなかった。


12畳くらいの広さ。


俺の事務机、椅子。


トリッシュさん、シルヴェーヌさん、シャルロットさんの事務机に椅子。


書類入れを兼ねた書架。

ロッカーが4つ。

テーブルをはさんだ、応接用の長椅子がふたつ。


俺、シルヴェーヌさん、シャルロットさんが着席。

トリッシュさんが全員分の紅茶を淹れる。


ひと息ついたところで、魔導通話機が鳴った。


すかさずトリッシュさんが出る。

やはりというか、ギルドマスター専属の秘書さんからだ。


用件はやはり、俺に対して面会の申し込みである。


トリッシュさんが微妙な面持ちで言う。


「あの……ロイク様」


「何だい?」


「ギルドマスターが、こちらへ……伺うとおっしゃっているらしいのですが……」


ええ!?

この部屋へ!?

ギルドマスターが来る!?


何でそんなに気を遣ってるの?


たった16歳の小僧が、遥かに年上で、ドラゴンスレイヤーたるギルドマスターを、

偉そうに呼びつける。


そんな事をしたら、いくら大破壊収束の英雄でも反感をかうのは必至だ。


「いやいや、とんでもない。すぐに伺うとお伝えしてくれ。人数は? この場の4人全員で伺っても構わないのかな?」


トリッシュさん、すぐに確認。


「………ロイク様、私達秘書3人も一緒、4人でギルドマスター室へ伺って構わないそうです」


「分かった! じゃあ4人全員で行こう」


プレートの記載変更も含め、多分、悪い話ではない。

秘書全員同席OKも、それを物語っている……と思う。


……という事で、俺と秘書3人の計4名は、テオドールさんが待つ、

ギルドマスター室へ向かったのである。

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