異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!
東導 号
第1話プロローグ「俺氏25歳は、某・ダークサイド企業に勤める貧乏リーマン」
俺、ケン・アキヤマ25歳は、某・ダークサイド企業に勤める貧乏リーマン。
絶対的支配者のようにふるまう超ワンマン社長、コバンザメのような超ごますり部長に、あごでこきつかわれながら、いつか幸せになりたいと夢見ていた。
「今の若い奴は甘すぎる! すぐ楽をしたがる!」
「わしが若い頃はな! お前の100倍は働いたぞ!」
「定時3時間前に出社して、定時の3時間後に退社しろ!」
「昼休みの飯は5分で済ませろ! 残りは仕事! わしはずっとそうしていた!」
「目標営業数字を思い切って10倍にしろ! 背水の陣で頑張れる!」
「俺は気合でノルマをクリアした!」
「俺の仕事は教えない! 見て、おぼえろ!」
「人間死ぬまで我慢だろ! 耐えられなくとも退職するまでは辛抱だ!」
「ピンチを気持ちで! 精神力で乗り越えろ!」
「お前は根性が全く足らん! 最後の決め手は根性なんだ!」
「はい! と言え! いいえは聞かん!」
「お前は、どういう育てられ方をして来たんだ!」
「客と酒で仲良くなれ! 自腹でどんどん飲みにケーションだあ!」
「経費は徹底的に節減! 但し、社長と部長の接待交際費は大増額!」
ああ!
もう、うんざりだ!
思わず苦笑し、それ、ある!ある!ある!ある! 全部あるよ! と頷くくらい、
今、モニター画面をご覧になる『心当たりのある方』は、相当多いと思う。
そうです!
このまま、もしくは近い事を言う上司、先輩おじさんは、世間にたくさん居るのだ。
そして、俺の会社のワンマン社長とごますり部長は、
100倍くらい、盛りに盛った昔の『自分自慢語り』をさく裂。
1日中、働きづめで疲れ切った俺に対し、
意味のない精神論を熱く語る事に終始していた。
先輩から聞き、呆れた。
俺が入社する前から、そんな訓話ばっかりらしい。
今日も、明日以降も、ふたりの同じ話は間違いなく、ず~っと続いて行くだろう
そして、ふたり揃って、具体的な施策も提示せず、最後には
「全社員、足で稼げ! 知恵を絞り、営業数字を上げろ!」
と言うばかり。
社員達の先頭を切って戦いへ挑む、重い責任を背負う役職者のはずなのに、
いっつも社内の自分の部屋へ閉じこもり、完全に口先だけの存在、
自分だけは非難されない、安全な場所に居る『外部の評論家』と化していた。
まあそういう自分に甘く他人に厳しい、
『外部の評論家』は、どこの会社でも居るようだ。
けど、特にウチの会社は酷かった。
そんな状況で、社長、部長とも「業務成績、V字回復だ!」
「営業売上の前年比プラス150%目標だ!」とか抜かすから、
何をか言わんや……
これでは、バイバイの「退職者続出!」も、やむなし。
俺も既に、ライトサイドな職場を求め、転職活動を開始していたのである。
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