【 第1話: でらうみゃ~? 】


 俺は、焦っていた。

 今、俺がおかれている状況が、全く飲み込めていなかったのだ。


「お、俺は……、こいつのフィアンセじゃないぜ……」


「はっはっはっ、名古屋国の王子は、やはりうわさ通り、面白い人じゃな」

「へっ? 面白い……?」


「わしの名前は、『ダガヤ』。この国の王を務めておる。『タロー王子』は、わしの娘『ミャー』に最大級のプロポーズをしてくれたそうじゃないか」

「はぁ? 最大級のプロポーズ……? な、何のこと……です……?」


「はっはっはっ、やっぱり面白い人じゃ『タロー王子』は。娘に


 『De Lau Myarデ ・ ラウ ・ ミャー


 と求婚してくれたそうじゃないか」


「へっ? 『で、らう、みゃ~・ ・・ ・・・』……???」


「ああ、わがニヤ国に代々伝わる、求婚する際に使う最大級のプロポーズの言葉じゃよ」

「最大級のプロポーズって……、ま、まさか……」


「ああ、ニヤ国の古い言葉で『De Lau Myar』、つまり、『ミャー、君を愛す』という意味じゃよ。そう言ってくれたそうじゃないか」


「『ミャー、君を愛す』……? は、は、はぁーーーーーーーっ!?」


 俺は、この『とんちんかん』なことを言う白髭しろひげオヤジに呆れていた……。

 俺は、ただ単にきしめんを食べて、『でらうみゃ~(すごくおいしい)』と名古屋弁で言っただけなのに……。

 何故それが、プロポーズの言葉にすり代わっているのか……。


「しかも、タロー王子が命の次に大切にしていた『』とかいうものを、ミャーにプレゼントしてくれたそうじゃないか」

「へっ? クレジットカードは、プレゼントしてないし……」


「はっはっはっ、タロー王子も冗談が好きなようじゃな」

「お父様、私このタローからもらったクレジットカード、一生大事にするにゃ♪」


 ミャーは、そう言うと、俺のクレジットカードを胸に押し当てて、恥ずかしそうにモジモジしている……。

 これは、いかん……。

 このままでは、俺の大事な大事なクレジットカードがこの小娘に取られてしまう……。


「そ、それは、俺の大事なクレジットカードだから、返してくれ……」


「ばかもーーーーんっ!! 男たる者、一度、女にプレゼントした物は、取り返してはならぬ!!」


「(な、何だ……? またこの『おきて』風な言い方は……?)」


「冗談じゃよな? タロー王子よ」

「あ、ああ……、はい。そう、冗談です……」


 俺はとりえず、このイカれた国の『ダガヤ王』にこの場は従うしかなかった……。


 でも、『ダガヤ』ってどこかで聞き覚えのあるような言葉だが……。



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