第346話 後世に残るカップル
「でも、本当に俺たちがみんなを、世界を救ったんだな」
みんなの安らかな顔を見ていると、ものすごいことをやってのけたんだなという思いが湧き上がってくる。
「そうですね。私と誠道さん。幾多の困難を乗り越えて恋人になった二人が世界を救った。つまり私たちはこの世界公認、後世に語り継がれる伝説のカップルとなったわけです」
「それはちょっと大げさじゃないか?」
「大げさじゃありません。歴史の教科書に載るほどの偉業ですよ」
「そ、そうかな?」
そこまで自信満々に言われると、そんな気がしてきた。
「はい! ですから、私たちはもう別れるわけにはいけませんね。世界を救った伝説のカップルが破局だなんて、後世に残る笑いものです。グランダラ史に残る最大の汚点です」
「それはちょっと大げさじゃないか?」
「ですから! 私たちはずっと一緒にいなければいけません。誠道さんもぜひそのつもりでいてくださいね」
ミライが顔を赤らめながらそう言ってきた。
ああ、これはあれだ。
だてに俺もミライの隣にずっといたわけじゃないぞ。
ミライがふざけた感じで回りくどくなるのは、純粋に恥ずかしがっている証拠だ。
本当にかわいいなぁ。
「なんですか? 小動物でも見るような顔をして」
「いや、ただ別に世界とか気にしなくても、俺はミライとずっと一緒にいる覚悟はできてるから」
「誠道さんも、そういうところがとてもかわいいですよ」
ミライは満面の笑みを浮かべながら俺の手を取る。
「しかも私と一緒にいる覚悟があるということは、多額の借金と一生一緒に過ごしていく覚悟があるのと同義で」
「それはないから。借金とは早くおさらばしたいよ」
「そんなぁ!」
「いてててて、危なかったね、お姉ちゃん」
とその時、どこからともなく声が聞こえてきた。
この声は……あれ? でも、ん?
「そうですね。あとちょっとでも脱出が遅れていたら、危うく死ぬところでしたよ。ジツハフの好判断のおかげです」
なんでジツハフくんとイツモフさんがここに?
貸し切りのはずのフェニックスハイランドに二人とも来ていたけどさ。
なぜか戦いに現れなくておかしいなぁと思ったけど、結局ここにいたの?
しかも会話の内容的に、戦いに巻き込まれてた感じじゃん。
声のした方を見ると、イツモフさんとジツハフくんはゲンシドラゴンの亡骸の近くにいた。
「でも、ジツハフをこんな危険な目に合わせた誠道くんには、制裁が必要ですね」
そして、なぜかイツモフさんからものすごく怖い目を向けられる。
「なんでだよ! 世界を救ったんだから必要なのは制裁じゃなくて称賛だろ!」
あなたの大事な弟を危険な目に合わせたのは、ゲンシドラゴンとアテウ・マークだろ!
「世界を救った? ジツハフを危ない目に合わせておいて、よくもそんな妄言を」
イツモフさんからさらに冷たい目を向けられる。
「妄言もなにも、実際俺たちでアテウを倒したんだぞ。なぁミライ、マーズ……って、マーズ? ミライ? どうしたんだよ?」
二人に助けを求めるも、マーズはへたくそな口笛を吹いて聞こえていないふり。
ミライは視線を右往左往させたあと、一目散にイツモフさんに駆け寄って。
「そんなことよりイツモフさんはどこにいたんですか! ってか秘密っ! 誠道さんには秘密ですよっ!」
「そうだよお姉ちゃん。今回の件がすべてミライお姉ちゃんの自作自演で、僕たちが全員協力者だってことは秘密だって言ってたじゃないか」
「あっ! ジツハフくんっ! しーっ! しーっ!」
ミライが慌ててジツハフくんの口を押えるも……え? 自作自演?
「苦しいよっ! ミライお姉ちゃん」
ジツハフがミライの手を払いのけてそう主張すると。
「ジツハフくん。あの件は秘密だって言ったでしょう」
ミライはジツハフくんに顔を近づけて、小声で言う。
あのぉ……一応言っときますけど、全部聞こえてますからね。
「うん。だから僕は『誠道お兄ちゃんには絶対にばれてはいけないよ』ってお姉ちゃんに注意したんだよ」
「それがいけなかったんです!」
「どうしていけないの? 僕わかんないよ。だってまだ何色にも染まっていない、幼気すぎる子供なんだから」
ジツハフくんが首を傾げるが……やっぱり確信犯だよね?
幼気なんて言葉を幼気な子供は使わないからね!
ジツハフくんに会うたびに同じようなこと思ってる気がするよ!
「……そうだわっ!」
いきなりマーズが手をポンとたたいた。
なにかひらめいたみたいだけど、その不敵な笑顔と荒い息、絶対に変なこと思いついてるよね?
「誠道くん。実はここ、フェニックスハイランドで起きたことの全部が、ミライさんのっ……ああっ」
「マーズさんも黙ってくださいっ!」
マーズがなにかを言いかけたところで、ミライが鞭を取り出してマーズを縛り上げる。
「ダメッ! ああんっ! ミライさん! その鞭で、鞭でもっときつく縛ってぇ!」
なるほど。
マーズはこれが狙いだったのか。
「あのぉ、もうなんかバレてるっぽいので、私たちも起きていいですか? じっとしているのも疲れたので」
そして、気絶していたはずの聖ちゃんが平然と声をかけてくる。
「バレてるってなんだよ! さっきから俺だけをおいてけぼりにするなー!」
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