第282話 ハーレムは副賞

 会場となるビーチには、多くの屈強な男どもが集まっていた。


 端的に言ってみんな強そう。


 まあ、あの魅力的かつ刺激的かつ蠱惑的な大会名だから仕方ない。


 この大会で勝てばハーレム……つまりたくさんの美女たちに囲まれ、天国よりも極楽な毎日が待っているんだから。


 俺は大会の受付がどこにあるかを血眼になって探す。


 エントリー時間制限が迫っているかもしれないからね。


「あっ、誠道さんも血眼になって創流雅さんを探しているということは、やっぱり昨日のゲームが楽しくてファンになったということですね! でしたら今日もじっくりたっぷり語り合いましょう!」


「違うよ! 俺はハーレムをつく――じゃなくて、ここに集った屈強な男どもを見て、自分の実力を無性に確かめたくなったんだ。だから受付を探して……おっ、あっちだな」


 大会の受付所は、男どもが列をなしていたのですぐにわかった。


 ったく、あの列に並びながら鼻息を荒くしている男どもは、俺とは違ってとんだ変態たちだな。


 どうせこの大会名に釣られたんだろ。


 純然たる向上心から参加を決意した男の中の男である俺を見習ってほしいよ。


「ってことでミライ。俺は受付を済ませてくるから」


「わかりました。では、私は引きつづき創流雅さんを探しますので」


 ミライが斜め上に視線を向けて考えるようなそぶりを見せる。


「では……三十分後に海の家の前で落ち合いましょうか」


「おう、そうするか」


 返事をしながら、あれ? と思う。


 今回、なんかやけに物わかりがよすぎないか。


 いつもだったら、こんなちょっとえっちな気配のする大会に参加しただけで、へんた道さんだの土変態男だの土変態王だの、からかってくるはずなのだが。


 それに備えて、俺の純然たる向上心をもっとアピールしないといけないかと思っていたのだが。


 少々意外で、少々拍子抜けだ。


 まあでも、俺の考えすぎってことかな。


 ミライは創流雅の大ファンだから、きっと頭の中も創流雅に会いたいって思いでいっぱいなんだろう。


 なんかそれはそれでちょっとムカつく――いや、いまはとにもかくにもこの大会にエントリーしないと。


 ミライと別れた俺は、大会に参加するべく受付の方まで歩く。


 男だらけの列に並ぶこと約二十分。


 ようやく、俺の番がきた。


 受付の人は……お、ラッキー。


 美人のお姉さんだ。


 優勝したら、この人もハーレムの一員に……いやいや、俺は純然たる向上心に従っているだけだ。


 ハーレムなんて目指していない。


 けど、純然たる向上心を発揮して優勝した結果ついてくるのなら、仕方がなく受け入れるとしようか。

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