第247話 そして、彼女は伝説へ
キリングオークのコジキーは、空に向けてけたたましい咆哮を放つ。
荒々しく炎を吐き出しながら舞台に立つホンアちゃんを睨んだ。
「まあいい。男のくせに俺の純情を弄んだ罰を受けてもらう。ここにいる狂った似非アイドルファンもろとも、地獄に送ってやるよ」
コジキーが大きく息を吸い込む。
胸のあたりがメロンを詰め込んだかのように膨れ上がる。
……ああ、聖ちゃんが見たらたいそう羨ましがるんじゃないだろうか、……じゃなくて。
「ははは、みんな燃え尽きちまえぇ!! 【
コジキーがファンとホンアちゃんに向けて黒い炎を吐き出した瞬間、俺は動く。
「やらせるかよ。【
俺はファンとホンアちゃんを守る巨大な盾を作り出した。
技の性質上、ミライも一緒に覆わないといけないので、無駄に広範囲を守ってしまったが。
「あ? なんだこの盾は。俺の最強の技が効かないだと?」
自慢の技を簡単に無力化されたコジキーが、俺に困惑の視線を向ける。
俺はそんなコジキーをどうだと睨み返した。
「おい。俺はいま、ものすごく怒ってるんだ」
ゆっくりとコジキーのもとに歩いていく。
「だからどうした? お前の口が臭いのは事実だったろうが」
「そんなこと、いまはどうでもいいんだよ」
「誠道さん。どうでもよくありませんよ」
なぜかミライが割って入ってくる。
「いつも一緒にいる私にとっては死活問題です」
「ミライはいちいち俺を傷つけないと気が済まないの?」
「だってその、口が臭かったら……その、なんていうか、……の時に集中できないっていうか」
絶妙に聞き取れない音量でもじもじとしゃべるミライは面倒だから放っておいて。
「おい、コジキー」
俺は再度コジキーに向き直り、拳をぎゅっと握りしめる。
「俺が怒ってるのはな、俺をバカにしたからじゃねぇ。口が臭いってのも、まあ事実らしいから置いておこう」
それから俺は、「【
心が熱さで昂り、可視化できる炎が俺の周りで暴れ狂う。
オーバーキルだと言われても構わない。
全力を持って制裁を加えるつもりだ。
それだけのことを、コジキーはしたのだから。
「……お、おい、なんだ、それ、おまえ」
燃え上がる炎をまとった俺を見て、コジキーはあからさまに狼狽える。
俺を指差しながら、足を震わせている。
「ま、待て。ち、近づくな。わかった。も、もう、関わらねぇから」
「ふざけんな。俺たちの応援しているぷりちーアイドルホンアちゃんを、男だ女だっていうしょうもない理由でバカにした罪はなぁ」
握りしめた拳に、龍の形をした炎をまとわらせる。
「俺をクソ引きこもり男だとバカにすることより、はるかに重いんだよぉ!」
「え? 誠道さん? それだと『はるかに』という修飾語がついていても、そんなに重く感じられないのでは? だって引きこもりはただの事実ですしドMの誠道さんにとってはむしろ褒め言葉」
「ミライはいちいちうるせぇなぁもう!」
ああくそ、どうして格好つけさせてくれねぇんだよ!
水を差すんだよ!
いつかのイツモフさんの真似をしてみただけなのに!
「だいたいいまはなぁ! 人類みなユニセックス時代なんだよ! 男女雇用機会均等法なんだよ!!」
――覚悟しろ、【
そう叫びながら、俺はコジキーの腹へ炎龍を宿した拳をぶち込む。
「おい! 待て! その拳には、いまそこの女にバカにされたっていう本来であれば俺に向けられることのない怒りもぉおおおおおおああああああああ!!」
ふぅ、すっきりしたぜ。
ホンアちゃんをバカにするものは、この俺が許さない。
炎に包まれながら空高く吹っ飛んでいくコジキーを見送った俺は、舞台上のぷりちーアイドルに向けて。
「さぁ、ホンアちゃん。ライブの時間だ」
「うん! それじゃあみんなー! 今日も盛り上がっていこうぜぇ!!」
「「「うぉおおおおおおおお!!」」」
その日、ぷりちーアイドルホンアちゃんが披露したライブパフォーマンスは、後世に語り継がれる伝説となった。
第五部 アイドルの秘密は背徳感の中の欺瞞編 完
====あとがき====
ここまでお読みいただきありがとうございました。
できれば明日、少なくとも一週間以内には、第六部『海では誰もが強がりた
今後も誠道とミライのわちゃわちゃ異世界生活をどうぞお楽しみください!
また、フォロー、評価していただけるとすごくすごく嬉しいです。泣いて喜びますのでまだの方はよろしくお願いいたします。
田中ケケ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます