第144話 心出の本音

 代表して、心出が口を開く。


「俺たちを頼ってくれてありがとう。誠道くんのためなら俺たちはなんだってするから」


「いや、お願いするのは俺の方だ。頼む、ミライを一緒に助けてほしい」


 俺は心出たちに深々と頭を下げた。


「えっ? ミライさんを助ける? それより顔を上げてほしい、誠道くん」


 心出に言われて頭を上げると、困ったような顔をしていた心出と目が合った。


「助けになりたいとお願いしたのは俺たちなんだから、誠道くんが頭を下げる必要はないんだ」


 そう言われても、これは俺のけじめだ。


 いまここで、心出たちに頭を下げることが俺にとって必要なことだから、悔しいとか、惨めだとかは一切感じていなかった。


 俺はこれまでのことを心出たちに説明する。


「実はミライが連れ去られたんだ。しかも、マーズ・シィっていう元氷の大魔法使い、現リッチーのものすごく強いやつに」


「そうか……ミライさんが連れ去られて」


 心出の表情が引き締まる。


「それは、命を懸けて救出しないといけないな。特に俺たちは」


「ですね、皇帝さん」


 光聖志が、心出の右肩に手を置く。


「俺だって、同じ気持ちです」


 真枝務が、光聖志の手の上に自分の手を置く。


「マーズ・シィって、いまの皇帝さんの懐事情の方がマーズ・シィですよ。ってことはマーズ・シィよりも貧しい皇帝さん――貧始皇帝まずしこうていさんの方が、そういう考え方をすれば強いってことになります! 絶対勝てます!」


「一文無しの心出のことを秦の始皇帝みたいに言うなよ!」


 五升も同じく手を乗せたが、こいつだけはやっぱり心出のことバカにしてない?


 そりゃあオールインして負けたから、心出は一文無しの貧しい男だけどさ。


 貧始皇帝だけどさ。


「光聖志、真枝務、五升。お前ら、本当にありがとう」


 心出たちは涙しながら互いに抱き合っている。


「感動しているところ悪いんだが、マーズ・シィは本当に強いんだ。俺はマーズ・シィに一度コテンパンにやられている」


 敗北した事実を伝えるのは恥ずかしかったが、正直に言うことにした。


 ミライを助けるため。


 心出たちに驕った状態でマーズ・シィとの戦いに臨んでほしくなかった。


「そうか。でも、それがどうした?」


 心出は怯むどころか、むしろより気合を露わにした。


「相手がものすごく強い。それは俺たちの逃げる理由にはならない。誠道くんが助けてほしいと頼ってくれたのだから、俺たちはどんなことがあっても、その思いに報いるだけだ」


「心出……」


「こやつら大丈夫そうじゃにゃ」


 ネコさんも心出たちを受け入れてくれたみたいだ。


「はい。頼りになりそうです」


「あ、ちなみになんだが、誠道くん」


 突然心出が、なぜか俺の顔に耳を近づけてひそひそ声で。


「あとでこの猫耳の女の子について詳しく教えてくれ。真面目に好きになってしまったんだ」


「お前ケモナーだったのかよ!!」

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