うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので美少女メイドとスローライフしつつ最強の引きこもりを目指します。

田中ケケ

あなたと私で引きこもる編

第1章 俺の転生どうなってんの

第1話 俺のステータスだけ特別すぎないか

「バスガス爆発……ふふふ、どうじゃ? 早口言葉が死因となった気分は」


 え? それに関しては普通にムカつきますけど?


 俺たちの目の前に浮かんでいるのは、朱色と白を基調とした巫女服を着た女の人――女神リスズさんだ。


 大きな瞳と艶やかな長髪は綺麗な藍色をしている。


 豊満な胸とくびれた腰はとても色っぽく、妖艶という言葉がお似合いの美人女神だ。


「そう気を落とすな。先ほど伝えた通り、今からおぬしらに、それぞれの人間性に準じた固有ステータスと、異世界を生き抜くためのサポートアイテムを与える。固有ステータスは異世界人の1%以下しか持っておらん特別なものじゃ。しかもおぬしらの固有ステータスはカンストさせた状態にしてやろう」


 女神リスズはそう説明してくれたが、そんなの今はどうでもいい。


 だって女神が目の前にいてさ、上下左右どこまでも真っ白な空間に立っていてさ……これって夢にまで見た異世界転生だよね?


 頬つねったらちゃんと痛いよ!


 高校に入学してからすぐに引きこもりになり、そのまま退学。


 十六歳にしてニートになってしまった俺は、テンション爆上がりで昇天しそうになっていた。


 ま、さっき死んだばかりだけどね。


 しかもその理由が、とある人物のお墓参りにいこうとして久しぶりに外出したときに乗ったバス。


 変な音がしたなぁと思った瞬間即爆発で乗客乗員全員死亡。


 つまり死因は女神リスズの言った通り、バスガス爆発。


 地球で生きつづけていたらとてつもなく不幸になってしまう人たちを、爆破予定のバスに意図的に集めたらしい。


「わらわが救済してやるのじゃから、これからはわらわの玩具として、せいぜい異世界で幸せになれるようあがくのじゃ」


 女神リスズに上から目線でそう言われたときは、みんな、


「元の世界に返せ!」


 だの、


「私たちこれからどうなっちゃうの?」


 だの、


「バブ、バブバブバブゥウ」


 だの騒いでいたが、もう後戻りはできないと理解した後は冷静さを取り戻していた。


 夢も希望もない社会から解き放たれるんだ、と喜びはじめている人もいる。


「このバスは決して事故を起こしておりませーん。宇宙人に夢を見させられているのでーす。異世界うえぇええええい! 完全に停車してから降車していただいても安全かどうかわかりませーん」


 あ、バスの運転手だけは完全に精神がおかしくなってるけど、しょうがないね。


 そういう人だっているよ。


「俺のことを誰も知らない世界にいけるのなら、本当の自分をさらけ出すのが定石だな」


 つづけて聞こえてきたのはダンディな声。


 さぞイケメンのおじさんがいるのだろうと思いつつそちらを向くと、そこにはオムツ姿のイケメンおじさんがいた。


 この人も別の意味でおかしくなってやがる!


 脱ぎ散らかしているスーツを早く着て!


 その性癖は、さらけ出しちゃダメなやつだから!


「バブ、バブバブバブゥウ!」


 あと、さっきからあの赤ちゃんの興奮度合いマジ半端ねぇ。


 喜びのあまり、立ち上がって全力でガッツポーズしてるよ。


「嘘? うちの子まだ生後三か月なのに、立ち上がってガッツポーズしてるわ」


 その赤ちゃんの母親は、我が子の才能に感動して涙している。


「やっぱりうちの子は天才だったのよ! さっそくテレビ局に電話を……あ、転生するんだから異世界でサーカス団を探して」


 さらに、早くも赤ちゃんの才能を活かしてお金を稼ぐべく思考をめぐらせている。


 愛していたはずの我が子が金儲けの道具に見えてしまう。


 そんな親が生まれるのが、今の日本の闇なんです。


「バブ、バブバブバブゥウ!」


「今度は走り回ってるわ! この子絶対に金の成る木……じゃなくて神童よ!」


 ほんと、あの赤ちゃんかわいそうだなぁ。


 親ガチャ、確実に失敗してますね。


 ってかそんなことよりも……。


 俺はたった今視界に入ったそいつらから目を逸らし、パーカーのフードを深く被って顔を隠す。


 なんで俺をいじめていたクソ野郎四人衆、大度出皇帝たいどでかいざー鶏真喜一とりまきいち勅使太一てしたいち五升李男ごますりおん、通称大度出独裁国家たいどでキングダムがいるんだよ。


 俺がバスの一番後ろの隅に座っていたら、あいつら乗り込んできたんだっけ。


 ま、でもフードを深く被って黙っていれば大丈夫だよな。


 その場にいないかのように振る舞えるのは、ボッチであるこの俺の悲しい特技だし。


 ええー、石川誠道いしかわなるみち、只今より隠密行動を開始いたします。

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