第八恋 チクチクぬいぬいオタク君、その1
オンラインショップに並んだぬいぐるみの数々。正直、デフォルメされ過ぎてて自分には合わない。いや、このコンテンツは女性ユーザーが多いからこのくらいカワイイほうが商売としては正しいのかもしれない。大学で見た、似たようなキーホルダータイプのぬいぐるみを鞄から下げているのはみんな女子だったし。というかまぁ
「高いなぁ。」
思いっきりおサイフにダイレクトアタック。属性不利。オーバーキル。リスポーン不可。一撃ヘッドショット。
バイトもしてて推し事用に資金を確保してはいるけど、それでも俺には敷居も値段も高いと感じてしまう。全長25cm、お値段3000円の公式デフォルメぬいぐるみ。もちろんこれを安いと思う人もいるんだろうし、逆に俺が安いと思うものがその人には高かったりするんだろう。そこらはそれぞれの感性なのでどうこう言うのはアレだ。公式にお金を落とすのは別のやつにしよう。いやでも、ぬいぐるみは欲しい。ぬい撮りがしたいとかじゃなくて単純に枕元にでも置いておけば毎日がもっと楽しくなるだろうなと思っただけなので、できればもう少しお手頃でもっとデフォルメされてないやつがいい。値段順に並べ替え、祈りながらスクロールスクロール。しかし、祈りが届かなかったと知ったのはその4分後だった。
「おし、やるぞ。」
橙・青・黒・白・黄のフェルトに、ネットで配布されていた型紙と綿。カラフルな刺繍糸に小中と授業で使ったドラゴンの裁縫箱。それと絆創膏。机上に所狭しと置かれた、これからぬいぐるみになる予定の材料たち。あれから色々と考え、推しと好きなキャラにおはようからお休みまでを見守って貰うことを諦めきれなかった俺は、ぬいぐるみを自作することにした。動画サイトで「ぬい 初心者」などのワードで出てきた中から一番分かりやすくて型紙も配布していた神動画を見つけすぐに100均に走った。ボタン付けくらい自分で出来るようにと裁縫箱は実家から持ってきていたし、20代目前の男にしては裁縫が出来ると自負しているのでクラフト自体に抵抗はない。一応用意した絆創膏は死角からの針に備えた保険でありぬいぐるみに血を付けないための配慮だ。
さてどちらから作るか。俺の統計上、大体最初のものは上手くいくが2つ目は失敗しがち。で、3つ目はそこそこ上手くいく。推しも好きなキャラもどっちも大切だし上手く作りたい。。。長考。。。Loading。。。うん、最初に好きなキャラ本体を作って、専用衣装を作ってから推しキャラ本体と衣装を作ろう。それがいい。相談しました、そうしましょ♪
心が決まった俺は早速橙色のフェルトを型紙に固定し、裁縫用のやたらデカイ鋏を入れた。
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