第五恋 絶対領域のオタク君
「絶対領域」とは、女子のミニスカートとニーハイの間の地肌が見えている部分を指す言葉。幹孝曰く「ロマンであり聖域」。だが、かつての俺は微塵も心が動かなかった。「寒そう」なんていうオカンでももう少し気の利いたことを言うだろうレベルの感想なら出たが、そんなもんだった。
そして今。俺が「絶対領域」を曝す女子のように、人生で初めてトゥンクと心をキュムキュムさせているゲームキャラ(男)と元々の推し(男)が出るイベント情報が解禁された。そこで俺は「絶対領域」の威力を思い知ることとなった。イベント内容としては、幻獣界のお偉いさん一族である我が推しの親戚が結婚することに→結婚相手もお偉いさんなので何か良い感じの催しがしたいと報告ついでに相談される→推し「そうだ!瑞獣に出席して貰えば喜んで貰えるんじゃないか?」推しの親戚「それだあああああ」→青龍の一族である想い人キャラに話を持ち込む→親戚がそれなりの報酬を約束したことで出席を決めた→どんな結婚式になるのか?という所謂「結婚式イベ」。推しは配布SSR、好きなキャラはガチャSSRだが、ガチャ石は天井分あるので無問題。が、問題はその立ち絵。
推しは落ち着いた赤と黒のタキシード&黒地に灰色で模様が描かれたマント、好きなキャラは鮮やかな緑色の前衛的なデザインの着物と龍のような内巻きの爪がついた金色の手袋。二人とも特殊メイクをしていて、日頃は見ることがない幻獣の面影をこれでもかと浴びることができるすんばらしいSSRだ。で、ですよ。本題はここから。着物の袖をピシッと伸ばし手袋をはめれば腕は全てカバーされるはずが、なんと好きなキャラは着物を肘辺りまで捲っていた。そうして現れている健康的に日焼けした筋肉質な肌。
っっっっっっかかかかかかかかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああこれかああああああああああああああああああああああああああああああ
「絶対領域」!!本来であれば隠れているハズの場所が、本人のきっちりとした服装嫌いの性格により人目に曝されている!そして、切り取られているように現れている地肌!!あー、どうしよう!年齢制限かかる!ここに挟まれて最期を迎えたい!どう挟まるのかは知らないが!好き!え、は?そんなことして良いんですかああああ!!
ぜぇぜぇはぁはぁ。失礼しました、ただでさえ限界オタクなのに恋フィルターがかかっている面倒くさいオタクが出てしまいました。
いやそれにしても、本当に心臓に悪い。なにかが捻じ曲がりそう。てかもうツイストドーナツ並に捻じ曲がった気がする。ヤバいな「絶対領域」。ごめんなさいあの時の女子、ごめんな幹孝。これからは「寒そう」とか絶対に言わない。
恋は人を変える。よく言われていることを実感しまくる毎日だが、いや本当に、人を好きになるってなんか凄い。
【逆に好きな人ができないと理解できないってなんだよお前。】
なんの前振りもなくタイミング良く送られてきた幹孝からのTALKには恐怖したが、翌日学校でその手の写真集を何冊か見せられ、こいつただのむっつりじゃねぇかと思ったらなんかどうでも良くなった。
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