第5話 夕雫、退院
碧唯と汐音が両思いであったと知ってから。もう早くも一週間がたっていた。
時間の経過は思っているよりも早いものだ。
そんなことを思いながら、もう慣れてきた図書館への道を進む。
「おー、令央!遅いじゃんかよ~!この俺を待たせるな!なんてなww」と僕が歩いている坂の上から汐音がはつらつとした声で笑顔をたたえながらこっちへかけてきた。
「早くいこうぜ!お前の彼女が待ってるんだろ?」と近くに来た汐音がニヤニヤしながら言っている。
「あのさぁ、前も言ったけど。夕雫は彼女じゃねえよ。」
「ふーん、つまんねぇの」そう言って、興味を失ったようだった。
「僕的には、碧唯とお前が両思いだったことが今でも意外だが」
「へー、そんなことが気になるの?私たちのことより自分の彼女の心配でもしたら~?」と横から耳を引っ張って来た碧唯。
「いてぇよ。いてぇって!離せって!お前どこから来たんだよ?それに、さっきも言ったけど夕雫は別に彼女じゃないってば!」
「そうなの?その割には結構夕雫のこと気にしてんのに~?」
「だよなぁ~?」二人そろってニヤニヤするな。
こっちが変な気分になるだろうが
にやにやといえば今日の朝兄弟にもされたなぁ。
なんでわかるんだ?僕には分からぬ。
「令央兄~、また図書館で女の子にでも会うの?」
「えっ⁉ああ、そうだけど。なんでわかったんだ、華梨?」
「うーん、お兄が土日なのにおしゃれするときって女の子に会うから。」
「そうだっけか?」
「そうよ~。紗矢ちゃんの時もそうだったじゃないの。覚えてないの?」
「姉ちゃん…。あいつのことは言わないでよ。」
「ははは、令央にとっては黒歴史なのか?」
「兄貴もうるさい、じゃあね。」
「おう!行って来いよ!俺も行くわ。遅かったら花(龍一の彼女)に怒られるからな」
「うーん。私もバイト行こう。華梨、留守番よろしくね。」
「はーい。もう一回寝よう」
はぁ、家に帰りたくない。どうせ帰ってからも色々聞かれるから。
まぁ、今日は一人じゃないし、話題少ないかもなぁ。
補足しとくとさっきの話に出てた紗矢っていうのは僕の幼馴染で元カノです。
とっくの昔に別れたんだけど、そのことはあまり今でも触れてほしくない。
そんなことを考えいたら上から声が降ってきた。
「そんなしょげた顔してどうしたの?さては碧唯たちにいじめられたか~?」
驚いて顔を上げる。すぐ近くに会いたかった人がいて。びっくりしたような、うれしいようなよく分からない気持ちになった。このままなぜか泣きたくなっていたけど、そこはこらえる。
「そんなことないよ。大丈夫。」
「そっか。ならよかった」
「そっちこそ、退院おめでとう。なんともなくて良かった。」
「うん。学校のこととか聞きたいし。中で話そう。」
「早くいくよ~、夕雫!」
「あっ、待ってよ碧唯!」
「ボケっとしてんじゃねぇーよ」
「うるさい。今行く」
そんな楽しそうな声を引き連れて、四人は図書館には行っていった。
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