第3話 令央の学校生活

夕雫と会った日、家に帰ってから兄にものすごく質問攻めにされた。

行く前は兄が帰ってくる前には家にいる予定だったのだが、図書館に興味が湧いていろいろ歩き回ってしまったのがいけなかったらしい。しかもそこで、夕雫に会ったし....。


さっきから夕雫についてしか考えてないような気がする....。

嫌だな、、、 何考えてるんだよ!別に嫌じゃないだろ⁉ 

もう考えるのも面倒くさい。 寝よう....


『なぁ、あいつ部屋にこもって何してるんだ?』

『そんなの知らないわよ。ていうか人の部屋の前で何してるの?邪魔なんだけど。どいてくれない?』

『ねぇねぇ、令央兄ちゃん大丈夫なの?家に帰ってきてからおかしいよね。』


ドアの前で5つ上の兄の龍一りゅういち、2つ上の姉の桜良さくら、そして、3つ下の妹の華梨かりんが話している。

僕に気づかれないように小声で話しているつもりらしいが、僕が無言なので悲しくなるぐらい聞こえている....。


「うるせえ!人の部屋の前で何してんだよ!寝ようとしてんのに邪魔するんじゃねぇ!」いろんな意味で苛立っていた俺は、ついつい大声を出しつつドアをドカンと開けてしまった。

いつもはこんなことしたら怒られるのだが、今日は皆、僕が何かあったと察しているため、まったく気にしていなかった。

大きな音だったため、少しビビりな華梨はすこしおどろいていたが、桜良にくっつくことで抑えたらしい。ほんとにごめん。そんなことを思いながら部屋に入り、今度こそ寝ることに成功した。


ー翌朝ー

いつもは寝坊助な僕だが、今日は兄弟の中で一番早く起きてきた。

しかし、学校に行くにはまだ早すぎる。どうしようかと思い悩んでいると「あら、この時間に令央が起きてくるなんて珍しいわね。」と母が起きていた。ちょうど僕と華梨用のお弁当を作っているらしかった。

僕たちの家は幼稚園から大学までついている学園に通っている。一番上の龍一が今大4、桜良が大1、華梨が中2、そして、僕は高2だ。小学校は給食があるが、それ以降は弁当制なのだ。今日は何だろうと思いつつ、気になっていた本を読み始めた。そして、部活の朝練があると噓をつき、いつもよりも早く家を出た。


僕は部活なんて入ってはいない。いや、入ってはいるのだが部員は僕だけだし、文化系の部活だし… と落ち込みながら通学路をトボトボと歩いていた。


「あれー?北ノ山じゃん!こんな早くに珍しー」と声をかけてきたのは、クラスメートの汐音しおんだ。小学校の時からクラスが同じになることが多く自然と仲良くなった奴だ。昔は令央と普通に呼んでくれていたが、彼がサッカー部のエースとなり人気者になったせいで、そう呼ぶことが少なくなっていった。『寂しいが仕方ない彼と僕は違うのだ。』と自分の中で納得していた。

なのに今なぜここにいる⁉ 「えっと、お前今日部活ないのか?」と思ったまんま言っていた。すると彼はきょとんとした顔で「今日からテストだろ?部活ないぞ。」と返ってきた。


.............


マジか…。ヤバイ、忘れてた。昨日早く寝てしまったからノー勉だ。ああ……

ますますブルーになった僕の気持ちがわかったのか、汐音はなんも話さなくなった。

しかし、何も話されないのは困る。何の教科かさえわかっていないのだ。あまり話したくなかったがこいつに聞くしかないのだ。

「なぁ、今日何のテストだったっけ?」と聞いた。

「現代文と世界史だよ。僕が嫌いな二つだ。いやだなぁ」

そうか。お前が嫌いな二つは僕が得意な奴だ。しかし、今日は何もしてないから大丈夫かな…。

そんな不安を抱えつつテストに臨んだ。


今日の分のテストが終わった。

思っていたよりも行けた。なにもしていなかったのに。

どうして出来たのかというと、昨日夕雫におすすめされた本の内容だったからだ。

国語の問題は先生が好きな物語から出されており、みんな初見だったから、難しいと言っていたが、僕は、昨日彼女からあらすじを聞いていたからあっさりと解くことができた。

同様に、世界史も彼女がおすすめした本の内容だった。正確には彼女がおすすめした小説がテスト範囲の時代をモデルに書かれていたからだ。


ほんとは今日、図書館には行くつもりはなかったけど。感謝がてら行こうかな。

彼女がお勧めしていた本も気になるし、今日はどんな内容の本を教えてくれるかな


そんな気持ちを抱えながら、ウキウキとした気持ちで図書館への道を歩いていた。

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