第5話 弔い
「母さん‥‥‥」
野盗達は簡単に討伐出来た。だが両親や村の人たちは助けられなかった。
叫び出したいくらいの大きな怒りと悲しみ。それをどこか俯瞰的に見ているような感覚の混じり合った不思議な感覚。
「ごめんなさい、助けられなくて‥‥‥」
野盗達の装備から鉄の部分をスキルを使って掻き集めて一つの鉄塊を作った。
金貨、銀貨の類いも全て回収してストレージにしまった。
掻き集めて作った鉄塊を前世でいうところのパワーショベルのバケットのようにして穴を掘った。母さんの遺体を運んできて穴に安置した。
母さんのネックレスを形見にいただいた。
ふと思い出して村の方に向かう。
しばらく歩いて村の入り口付近に父さんの遺体があった。食い止めてくれていたんだな。父さんの遺体、胸や腹は傷だらけだったが背中側には一つも傷が無かった。きっと逃げずに食い止めてくれていたのだろう。
「父さん、ありがとう」
さっきの母さんの遺体のところまで担いで運ぶ。父さんはそこまで大きくなかったけど重かった。母さんのいる隣に並べた。
父さんの腕輪を形見としてもらう。
バケットからスコップを作って手作業で土をかけていった。
一言ずつ言葉をかけるように。
「父さん、母さん、ありがとう。スキルがちゃんと使えれば助けられたかも知れないのに。助けられなくてごめんなさい。二人で一緒に天国でも仲良くしてね‥‥‥。うぅ‥‥‥」
それまで我慢していた涙が一気に溢れてきた。
どれくらい泣いていたのかもわからない。
きっともう一生分泣いただろう。
もう泣かない。強く生きないといけない。
ーーーーーーーーーーーー
村に戻ってみた。生き残りがいるかも知れない。村の広場にもみんな倒れていた。
それもそうだよな。で、ふと思い出す。
『若い女と子供は残らず攫って‥‥‥』
あ、つまり殺されてないかもだな。
どこかに閉じ込められているのかも。
「アウルムです! 誰か居ませんか? 無事なら返事をしてください!」
ダメ元で問いかけてみた。
「アウルム? おーい! ここよ!」
! 返事が返ってきた。
「!! スズ? ディーンも? 無事だったのか!」
「教会の地下に潜って隠れてたの。って血が付いてるじゃない!! 大丈夫なの?」
「あぁ、そういえば‥‥‥」
服に返り血が付いていた。血も鉄を含むだろうけどこれは操作出来なかった。
何の違いだろうか? 後で検証してみよう。
「本当にアウルムか? 髪の色が全然違うじゃねぇか!」
「あ、言われてみれば、視界に入る前髪が違うなって思った」
「目の色も違ってるぞ」
「あとで鏡で見てみるといいわ」
「もう、連中はいないのか?」
「あぁ、野盗は居なくなったみたいだ」
「本当? 良かった」
ここで俺は嘘をついた。俺が全滅させた事は伏せておいた方がいい気がしたからだ。
村の子供達は結構助かったみたいだ。俺たちが最年長で下の子が5人いた。全員で8人。
「これからどうする?」
「そうだな‥‥‥どうしようかな‥‥‥?」
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