転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯

第1話 村外れの少年 アウルム

「父さん、遅いよ〜! 早く、早く〜!!」

「アウルム、急いでも川は逃げないぞ?」


「だって早く着いて遊びたいんだもん」

「ハハハ」


「そんなに急ぐと転ぶわよ〜!? アウルム」

「大丈夫だよ〜!」


 よく晴れた休息日、親子三人は川に遊びに向かっていた。


「おぉ、アウルム。おはよう。家族でお出掛けかい?」

「おじさん、おはようございます。これから川へ行くんだ!」


「おぉ、嬉しそうに。気をつけてな」

「はーい!」


ーーーーーーーーーーーー


 三人は川に着いた。水は綺麗で澄んでいて、魚もよく釣れる。


「よし、アウルム。父さんと釣り勝負するか」

「うん、負けないよ!」


 二人で釣り糸を垂らす。

 母親はお昼の準備、生活魔法で火を熾した。




「わぁあ、大きい! 引っ張られる〜」

「アウルム! 手を離すな、あっ!!」


 バッシャーーン!!!!


 二人とも川に落ちる。幸い川は浅く、流される事はない。


「ハハハ、濡れちゃったな〜」

「あらあら、焚き火をつけたから服を乾かしましょ」


「濡れてて、上手く脱げない〜」

「もう、しょうがない子ね。こんなに大きくなったのに甘えんぼで‥‥‥」

と、言いつつも母親は笑顔でアウルムの服を脱がしてあげる。


「もう来週は祝福の儀だしなぁ。本当に大きくなったなぁ」

「アウルムはどんな加護が欲しいの?」


 祝福の儀とはこの世界で12歳になった子が『才能』を教会でもらえる儀式の事だ。それは加護であったり、スキルであったり。


「父さんと同じ『農業』が良いかなぁ?」

「もっと良い加護だってたくさんあるんだぞ?」


「いや、父さんと畑仕事したいから‥‥‥」

「そうか、ありがとな。嬉しいよ」


ーーーーーーーーーーーー


 三人は夕暮れ前に帰宅した。この辺には街灯などもちろん無い。この村では太陽と共に寝起きするのが当たり前。蝋燭はもちろんあるが、必要な時しか使えない。お世辞にも裕福とは言えなかった。


 だが、そんな生活でも不便を感じた事は無かった。アウルムの心は満ち足りていた。


 帰り道空を見上げると月が二つうっすらと出ていた。


 この世界は『エウロパ』 地球によく似た異世界である。

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