第57話 少しだけ慣れはじめました

 周防さんが転校してから三週間を越えた。

 結構色々な事もあったけれど、そのほとんどが、美嘉達と周防さんが張り合っている?感じのことばかり。


 なんでそんなに張り合うのかよくわからないけれど、まぁ、喧嘩とまではいっていないから止めてはいないんだけどね。


 どんな事かと言うと、例えば体育の時には、




「さて、本日の体育はバトミントンという事でしたね。」

「ええ、そうね。で?やるの?」

「勿論です。美玲?準備は良いかしら?」

「はっ!」


 コートに入る周防さんと轟さん。

 そして相手コートに美嘉とクォン。


「では、いざ尋常に。」

「ええ、勝負よ!」

「負けないよ〜?」

「・・・お嬢様、フォローはおまかせ下さい。」


 そして始まる試合。

 めちゃくちゃレベルが高い。

 もっとも、正々堂々と戦う為にか、美嘉達は魔法でわざと負荷をかけて、ちょっと凄い一般人レベルに身体能力を落としてるけどね。

 周りの生徒は、みんな手を止めて見ている。

 その中には、先生や、バトミントン部の人たちもいる。


「はっ!」

「くっ!?やはりやりますね!」

「ふっ!」

「おっと〜、いいトコ狙ったけど・・・てやっ!」


 目まぐるしく試合は動き、結果・・・


「・・・残念です。」

「・・・本当にやるわね。流石だわ。」

「トドロキちゃんも強いね〜。」

「・・・お褒めに預かり光栄です。ですが、異世様には力及ばずでした。」


 美嘉達の勝利で、今は握手している。

 

 そうそう、轟さんは、いつも無口なんだけど、少しづつ喋るようになっていた。

 でも、友達に対するものというよりかは、どこか敬意のようなものを感じる。

 この違いはなんだろうね?




 例えば美術なんかだと、




「・・・スオウさん、あなたって絵も上手いんだね。」

「凄いわ・・・プロの絵描きが書いたみたいよ。」

「あら?ラピスさんもジェミニさんもお上手ね。」

「いえ、本当の事です。素晴らしいですわ。」

「リリィさんも、ありがとうございます。」

「・・・それにしても、クォン?いくらなんでも、それは無いわ。」

「え〜?ミカ酷くな〜い?」


 本日の題材は友達の絵。

 スオウさんの絵は、とても上手だった。

 本当に、プロの人が書いたみたいだ。

 それに比べてクォンが書いたのは・・・絵日記?

 

「まぁまぁ。クォンは芸術的なのは苦手なんだから。」

「む〜!シューくんもひどーい!うりゃ!」

「むぐぅっ!?」

「あっ!?久遠さん!?はしたないですよ!?離しなさい!」

「べ〜!や〜だね〜!シューくんが悪いんだもん!!」

「美玲!?引き離して!」

「お嬢様。不可能です。」

「美玲!?」

「「「「あはは!」」」」



 例えば、音楽の時は


「・・・周防さん!素晴らしい!!」

「先生、ありがとうございます。」


 周防さんがバイオリンを披露してくれたんだ。

 とても上手だったよ。


「周防さん。凄いね!」

「・・・ありがとうございます。瀬尾さん。」

「ええ、確かにすごかったわ。」

「ありがとう、桜咲さん。」


 そして、

 

「・・・リリィ・グランファミリアさんもとてもお上手です!」

「ありがとうございます。先生。」


 リリィも宮廷仕込みのフルートを披露してくれた。


「リリィさん。あなたもとても素晴らしいわ。」

「ありがとうございますスオウさん。あなたのバイオリンも綺麗な音色でした。一度合わせてみますか?」

「ええ!それは楽しそうだわ!」


 二人の二重奏が音楽室に響く。

 ・・・うん、心が洗われるようだね。

 


 こんな感じ。

 ・・・あれ?

 いつの間にか、打ち解けてる?

 いや、対抗しあっているのは間違いないんだけど、なんかお互いに認め合っている感じ?


 まぁ、僕としては仲良しの方が嬉しいんだけどさ。


 一度みんなに聞いてみた事がある。

 その時に言われたのはこうだった。


「あの子も私達も譲れないものは確かにあるよ?でも、いくら心を読んでも、あの子は隠していることはあるけれど、それでもあたし達に向ける感情やほとんどの事柄に嘘は無いのよ。だから嫌えないわ。それに、なんのことかは言えないけど、あの子の気持ちが本物だってのも良くわかった。そこには好感が持てる。それにとても面白いし聡明だし、なんだかんだで真っ直ぐぶつかってこられるのは気持ち良いし楽しいから。」


 美嘉のこのセリフは、全員の共通認識だったみたいだ。

 うんうん!

 良いね!

 なんだか、みんなにこっちの友達が出来るのは、自分の事みたいに嬉しい!


 僕がそう言ったら、ため息をつかれたのは、何故だろう?

 今でもわからない。


 そう言えば、今度の連休中に周防さんの家のパーティにお呼ばれしたんだ。

 泊りがけで。

 

 もともと予定も入っていなかったし、みんなも乗り気だったから、2つ返事で了承したんだ。


 あ、そういえばこの間、従姉妹の子がなんか泣きながら電話してきた。

 めずらしくしおらしい感じだったけど、なんだったんだろう?

 なんか、連休中、どうしても用事があって忙しいとかなんとか・・・なんでそれで僕に電話をしてきたんだろ?

 

 よくわかんないや。

 

 さて、もうすぐお呼ばれの日だ。

 ちょっと楽しみ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る