第52話 夏休みもそろそろ終わりになりました
もうすぐ夏休みも終わる。
今年の夏休みは、昨年とは比べ物にならない位楽しかった。
これも、全てみんなのおかげだと思う。
旅行にも行ったし、アルバイトもした。
みんなで、お祭りに行った時に、軽く騒ぎになったのもいい思い出だ。
何があったのかというと・・・まぁ、想像つくだろうけれど・・・
「何あの人達!?芸能人!?」
「うぉぉぉぉ・・・すっげぇ・・・」
「テレビ来てるのか!?どこだ!?」
周囲がざわついてる。
何故なら、美嘉達が美人過ぎて。
急に思い立って行ったので、みんな浴衣じゃなくて、普通の格好なんだけど・・・それでも周囲の目を惹くんだ。
僕達が移動すると、遠巻きにぞろぞろとついて来る人たちがいた。
「・・・鬱陶しいわね。」
「まったくよね・・・」
「何故あの方達はついてくるのでしょう?」
「我々が目を惹いているのでしょう。リリィ達は美形ですから。」
「そういうラピもでしょ?それにしても、アタシ達について来たって良いことないのにね〜?」
みんなが、少しイライラしながらそう呟いている。
ちなみに、認識阻害の魔法は使用していない。
何故なら、ここまでの人混みになっちゃうと、阻害すると多分ぶつかりまくっちゃうからなんだ。
そして、そんな目を惹くみんなに、必ずといって現れる人たち。
「ねぇねぇ!君たちすっごく綺麗だね〜?」
「俺たちも五人なんだ!一緒に祭りを回らない?絶対楽しいぜ?」
「なんなら、お金全部出してあげても良いよ?どう?」
こういう人達です。
みんなは、冷たい目で見て、そのまま無視して通り過ぎようとする。
「ちょっと待ってよ!」
しかし、立ちふさがる男たち。
なんでこういう人ってこんなにしつこくするんだろう?
僕はナンパなんてしたことないから、わからないや。
相手が嫌がってるのに、止めない意味がわからない。
そもそも、あんな風にじろじろとぶしつけに顔や胸なんかに視線を送ってニヤニヤしてるのが、失礼にあたるってなんでおもわないんだ!
・・・なんだろう?
ムカムカとする・・・
「・・・あたし達は、彼と一緒に回ってるの。邪魔よ。」
「邪魔って酷いなぁ・・・彼って、こいつの事?弟じゃなくて?こんなチビよりも、俺らと一緒の方が楽しいって!なぁ?」
「ただのガキじゃん。君たちには似合わないって!」
「そうそう!だから・・・」
そう詰め寄ろうとした男達に、美嘉達は一斉に殺気を放出した。
周囲の人達が、足を止めて、こちらを見る。
こちらの人は、平和な世を生きているから、何が起こっているのかよくわかっていないのだろうけど、
「・・・な、なんか寒気がするんだけど・・・」
「あ、ああ・・・あの子達に絡んでるあいつら・・・ていうか、なんかあの子達の方に行きたくない感じ・・・」
「・・・なんだろう?心臓がばくばくする・・・」
周囲の人は冷や汗をかいたり、手を
だけど、直接矢面に立っている男たちはというと・・・
「な、な・・・何だ・・・これ・・・」
「・・・ひっ・・・動け・・・ねぇ・・・」
「息が・・・吸い・・・辛い・・・はっ・・・はっ・・・」
経験した事が無いであろう殺気を一身に浴び、蛇ににらまれたカエルの如くぴくりとも動けなくなってる。
5人のうち2人は声も出ないようだし。
「・・・貴様らのような鬱陶しい輩は、本当にどこにでも湧いてでるな。反吐が出る。」
「ミカの言う通りだな。それに、よりにもよって、シュンを愚弄するとは・・・死にたいのか?」
「ねぇ、ミカ?殺っちゃっても良い?」
「だめよクォン。そんな事したらシュンくんに迷惑が掛かっちゃうから。だから殺るなら証拠が残らないように・・・こそっとね?」
「・・・神様もお許しになるでしょう。」
「いや、お許しにならないから!!やめてよみんな!?」
とても怖い事を言っているみんなに思わずツッコむ。
「そんな人たちの事より、みんなで楽しもう?ね?」
「ですが、シュン様・・・彼らはシュン様の事を・・・」
「良いんだ。それよりも、僕はみんなが殺伐としている方が嫌だな。」
「・・・仕方が無いわね。シュンくんったら。」
苦笑しながら殺気を押さえ、そう言うみんな。
うんうん、その方がみんならしくて良い・・・
「・・・くそっ!ガキに舐められたままでいられるか!!」
硬直が解けた男の中で、一番大柄な人が殴りかかってきた。
はぁ・・・
僕はその手を払いながら腕を掴み、そのまま片手で投げ飛ばした。
「ぐえっ!?・・・ってぇ・・・離・・・」
そして、そのまま腕を掴んだまま、その人を見る。
「あんまり、暴力はいけませんよ?中には・・・」
「ひっ!?」
僕も、殺気を放出する。
男の顔が引き攣り、そのまま失禁した。
「僕達のように、貴方よりも遥かに強い人もいるんですから、ね?」
「・・・はっ・・・はっ・・・」
過呼吸とまではいかないみたいだけど、息を短く吸ったり吐いたりしかできなくなってる。
・・・あんまり強くすると、そのまま呼吸が止まっちゃいそうだね。
僕は殺気を解く。
その瞬間、男は大きく息を吸った。
「わかりましたか?」
「・・・ひっ・・・ぃ・・」
そんな僕の言葉にも、男は涙目で呆然としていたんだけど、
「てめぇ!ガキが!!」
「舐めんじゃ・・・」
「やめろ!!」
他の男たちが、僕に殺到しようとした瞬間、僕に投げ飛ばされた男がハッとして仲間の男達に叫んだ。
仲間の男達は意外そうに男を見る。
「こいつらヤバい!もう、これ以上手ぇ出すんじゃねぇ!ライセンス持ちの俺がこんなに簡単にのされたんだぞ?これ以上は・・・殺される!」
その男の形相に、他の男達は、息を飲み動きを止めた。
その人の心を読むと、どうやらプロのライセンスを持った格闘家だったみたいだ。
たった一回の交錯で実力差を感じとれたみたいだ。
・・・でも、確かライセンス持ってると、身体が凶器扱いされるんじゃ無かったっけ?
ま、いっか。
失禁までして立場も無いだろうし。
「すんませんでした!迷惑かけました!勘弁して下さい!」
「・・・鍛えた技術が泣きますよ?これからはこういう事はやっちゃいけませんからね?」
「はいっ!もうしません!行くぞお前ら!」
その男がすぐに立ち上がりお辞儀をした後、他の男たちを
「・・・すごぉい・・・あの子・・・あんなに大きな人を・・・」
「・・・あの体格差をものともせずに・・マジかよ?」
「・・・ヤバいな・・・ってこっち見てる!?おい、行こうぜ!もう、見るの止めとこう・・・」
「ああ、そうしよ・・・」
僕達に遠巻きについて来ていた人達も、僕がそちらを見ると離れて行った。
「・・・くっくっく。シュン、お主が自分でケリをつけるとは珍しい。」
「・・・良いじゃないか。たまにはさ。」
・・・だって、みんなをやらしい目で見られるのが、嫌だったんだ。
「・・・うふふ♡シュンくん♡可愛い♡」
「ジェミニ?どういう・・・」
「あのね?こしょこしょ・・・」
ジェミニが呟いたのを、リリィ達が不思議そうにしている。
そして、ジェミニがみんなに耳打ちを・・・ってジェミニ心を読んだね!?
やめ・・・
「おっと。」
「はぶっ!?」
いきなり弾力のある何かに視界を塞がれる。
誰・・・ってこの匂い、美嘉だね!?
「・・・ふ〜ん。にひっ♡シューくんそうなんだぁ〜。」
「シュン様ったら・・・わたくし達は、シュン様のものですよ?」
「リリィの言う通りだ。だけど、そう思って貰えるのは、ボクも嬉しいよ、シュン。」
「もが〜っ!?」
美嘉に捕まったままの僕の耳元で、それぞれみんながそんな事を言う。
恥ずかしい・・・
「まぁ、良いではないか。シュンにそう思われるのは妾達にはご褒美だ。そう考えると、
う〜!
美嘉まで面白がって!
もう!!
「・・・あれ、なんだ?すっげー羨ましいんだけど・・・」
「だな・・・距離ちけー・・・」
「はぁ〜・・・俺たちは男だけで来てるってえのに・・・不公平だ・・・」
「・・・あの子、周りにいる女の子達が囲ってるのかな?」
「そうじゃない?だって、あの子達、完全に男を見る目で見てるし。」
「確かに可愛い顔してるもんね。それにさっきの格好良かったし、良い子っぽいし・・・良いなぁ・・・」
・・・色々な声が聴こえる。
は、恥ずかしい・・・
僕は、美嘉の胸から逃れる。
「ぷはっ!み、みんな行こう?」
「・・・くくく・・・うん。行こうかシュン。」
ニヤニヤとするみんなと共に移動する僕達。
もう、僕達の後をついてくる人達はいなくなっていた。
って感じだった。
結果として、その後はお祭りを楽しめたけれど・・・僕たちってトラブルメイカーだなぁって実感したよ。
でも、そんな夏休みも終わって、もうすぐ新学期。
もう、学校は退屈じゃないし、すっごく楽しみだな。
二学期は、文化祭や体育祭もあるしね!
新学期になったら頑張ろうっと!
「シュ〜ン〜?お風呂沸いたわよ〜?」
・・・はっ!?
しまった!物思いに耽ってたから、逃げ遅れた!?・・・今からでも・・・
「だ〜め♡」
ジェミニ!?いつのまに!?
「シュン様♡行きますよ?」
「シュンも女性の身体の洗い方に手慣れて来たな。良いことだ。但し、洗って良いのはボク達だけだぞ?いいね?」
「シューくん?新学期になってもアタシの身体をよろしくね〜?」
ジェミニに捕まった後、すぐにみんなが僕を捕獲。
「シュン?いつまで我慢できるか楽しみね♡」
そして、目の前には魔王の笑顔100%
・・・僕、がんばります
マル
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