第3章 異世界からの逃亡者

第20話 アルバイトについて考えてみました

「どうしようかな・・・」


 僕は部屋で一人、うんうん唸っている。

 題材はアルバイトについて。

 実は結構前から・・・それこそ、美嘉と知り合う前から、アルバイトしようかなって考えていたんだ。


 


 幸い、お父さんやお母さんの残したお金があるから、生活や学費なんかはなんとかなっているけれど、それでもそれをただ消費していくのは違うかなって思っていたんだよね。


 僕には、異世界での経験で、強靭な身体もあるし、色々な人と話をした事もあって、偉い人相手でも冷静に話が出来る。

 働くのには向いていると思う。

 だから、帰ってきてからはよりいっそう働きたいと思うようになったんだ。

 美嘉やクォンが来てバタバタしていたから、考えるのが止まっていたけれど、話題にも出たし、いい機会だから真剣に考えてみよう。

 

 どんなバイトが良いかな?

 高校生らしいっていうと、やっぱりファーストフード店?

 それともコンビニ?

 新聞配達や、普通の飲食店なんかも面白いかもしれない。

 理想は学校帰りに行けるところだけど・・・ 


「う〜ん・・・」

「何悩んでるのよ?」

「そうそう。シューくんどうしたの?」

「うわっ!?」


 突然後ろから、顔を覗き込まれるように声をかけられて驚いちゃった。

 

「い、いつの間に!?」


 ここ、僕の部屋だけど!?


「え?なんか部屋で唸ってたから、気配を消して来ただけだよ?ね?ミカ?」

「ええ、簡単だったわよ。考え込んでたわね。」

「・・・」


 ・・・一応、勇者として気配察知は磨いたつもりだったんだけど・・・


「で、何悩んでたの?」

「・・・悩むって言うか・・・アルバイトどうしようかなってさ。」

「え?あれ、本当にするつもりだったの!?」

「うん。」


 僕がそう言うと、二人は顔を見合わせる。

 そして、真剣な顔で振り向いた。


「シュン。やめておきましょう?ね?お金が無いなら援助するから。」

「シューくん!ミカの言う通りだよ!止めよ?一緒にいる時間が減っちゃう!」

「で、でも・・・」

「なんでシュンはそんなに働きたいの?」


 難色を示していると、美嘉がそんな風に言ってきた。

 なんで、か・・・


「親の遺産をあんまり使いたくないんだ。それに、異世界でのおかげで、身体も丈夫になったし、社会経験もしておきたいんだ。大学にも行きたいし無駄使いできない。だから、節約しようかなって・・・」


 そう僕が言うと、二人は考え込んだ。


「・・・シュン、ちょっと待ってて。」

「え?う、うん。」


 美嘉がクォンの手を引いて、自分の部屋に戻っていく。

 なんだろう?

 え?防音の魔法?

 なんでそこまでしてるの!?





side美嘉


 あたしは部屋に入ると、すぐに防音の魔法で自分の部屋を包んだ。


「ねぇ、クォン。シュンとパーティを組んでいた時の事を聞きたいんだけど。」

「え?何、突然。良いけど・・・」


 きょとんとしているクォン。

 もう!この子は危機感が足りないわね!!


「あのね?あなた達って、みんなシュンの事が好きだったのよね?」

「う、うん。まぁね。」

「それってなんで?」

「ふぇ?なんでって・・・シューくん真面目で一生懸命だし、優しいし、強いし・・・可愛いし・・・」

「他の人もそれが理由?」

「・・・多分。」


 テレテレしながらそう言うクォン。

 もう!照れてる場合じゃ無いわよ!!


「ねぇクォン?それって、こっちでも同じだと思わない?」

「そ、そりゃそうでしょ・・・って!?」

「気がついた?こっちで仕事しても、多分シュンはおんなじだと思うのよ。それでアルバイト先の女の子も・・・」

「そ、それは困る!」

「でしょ?」


 凄く焦った様子になるクォン。

 そう、困るのだ。

 あたしは、クォン達は仕方がないと思っている。

 なにせ、世界の驚異魔王アルフェミニカすら協力して倒した仲間達なのだ。

 それだけの絆はあるだろうし、気持ちもあるだろう。


 だが、こっちでのポッとで(?)の小娘達にシュンが食い散らかされるのは我慢出来ない。

 シュンの見た目はかなり可愛い感じだ。

 その上で、強い精神力と強靭な肉体を持ち、性格も穏やかだ。


 惚れないわけがない。

 

 学校では、城島たちクズでゴミな奴らのおかげで心配はいらない。

 シュンをそういう目で見る女はいないだろうし、これから出来てもあたしやクォンがいる。

 なんとでもなるだろう。

 

 だけど、あたし達の目の届かない所に行くのは不味い。

 それまでに、男女としての強固な関係性を築いているのなら良い。

 でも・・・今はそこまでだとは思ってない。


「ど、ど、ど、どうしようミカ!!シューくんって向こうでもすっごくモテてたんだよ!特に大人の女の人達から!見た目可愛いからって!何回助けに行ったか!!だってシューくん、一人にしておくと、すぐに大人の女の人に騙されて連れて行かれちゃうんだもん!だいたい助けに行くと、あわあわしながら抱きつかれてたし!!」


 顔を青ざめながらそうまくし立てるクォン。

 ていうか、聞き捨てならない事言ったわね?

 まだ食べられて無いよね?


「うん。その筈だよ・・・今は、まだ。」


 ならよし。


「じゃあ、こうしましょう?あのね・・・」

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