キングワルズワ!
カズキングハッチャン
オレ、ジャーマン!
ジリジリ…
太陽が眩しい。
ザワザワ…
人が騒がしい。
“うるせえうるせえうるせえ!何でこんなに人が居るんだよ!”
炎天下の埃舞う砂漠の商店の道中、周囲の異様な目線の元。
小石を蹴りながら町中を放浪する男(少年)が居た。
“あちいし!気分わりーし!変な目で見られるし!ブツクサブツクサ…”
男の名はジャーマン、本名王王子オウ!オウジ!だ。挨拶っぽくて悪いと思うが実は結構前異世界からやって来た奴。
何処かの異世界アドベンチャーワールドのソフトいじくってたら汗で感電死、天才かよっていう位のあっけなさだ。
ちなみに此処、砂漠の風習でターバンを頭に付けるのが普通なのだが彼はアフロ頭だ。
何で彼だけターバン頭に付けてないかって?金が無いから!
一文なし、かといって素晴らしいスキルも持たずに人生出発したらこうだ。
十三年、そう十三年も!
勇者?冒険?んなのねえ!
ただ、チンケな家(タダのバー)を見つけただけの人生。
この有り様、実に異世界人として恥ずかしい!
けど、彼の脳内にはそういう概念なんかない!
何故かって?めんどうくせえから!
全ての全てが面倒臭い。
転生する前は会社で働いて働いて、社畜になった自分はもはや病人。しまいには嫁に逃げられ子に裏切られ。最後はゲームソフトにスラ裏切らた!
もうええ!俺は自分の為に生きると彼は決心!
辺境?砂漠?男の脳内はアニメしか勝たん!
唯一面倒な事と言えば、一年前。
十三年バーで働いたらバーの親父が急に消えたもんで何故か!
そう、何故か店主に仕立て上げられた事くらいだ。
だがガキに何ができる?
“ホラ見ろ!おかげでターバン売らねえと酒代すらならねえぞ?どーすんだよアチャー!だから面倒事は嫌いなんだよ。ブツブツ…”
ジャーマンはそう愚痴りながらもトボトボとバーへと歩く。
バー、要するにただのタワツキの集まり場だ。
こんなチンケなぼろ屋敷。
名はビールだじょい!
爺さんが酔っ払って書いたから仕方ない、結構長い年の店だ。
風が吹けば、窓がギャーギャーいうし雨が降ったらコーズイだ!もはや屋根の意味が無いんじゃ!?とも思う。
それでも、それでも!このバーはジャーマンにとったらかけがえのない家だ。彼の行動は単純。家なのだから帰って営業をする!ただそれだけだ。
“たっだいまオジサンにハイボールっと!”
“おうジャーマン!アリガタイゼ。すっかり店のオーナーだな。”
ぼろカウンター席に二つの椅子に座らなければならない巨体。
タバコをくわえた黒服の男の名はエルグリス。
姓はないが年は35…だろう!
謎の旅行者だ。
彼はジャーマンが子供の頃からの店の客で今じゃすっかり仲いいダチだ。
片目の黒眼帯にまるでオーガのようなガタイ。
旅行者とは言えいつもこのガタイといかつさ故に山賊の類だと思ってしまう客も多い。
だが、年は離れてるんだが、いざ友達としてならすっげえ頼りになる奴で、ふらっとやってきてはすげえニュース持ってくる奴くらいしかジャーマンは知らないが。
“で、どうだったんだよそれ。ワルズワー、今年も何かすげえ事になったって?”
ジャーマンはこの世界の事が気になる。十三年、パソコンを離れた今。情報収集は日常的になっている。この村の中じゃ結構頭いいやつだと言われてるが。本人程、身の程を知ってる奴はいない。何がともあれ本当は知りたいのだ、色々とこの世界を。
“あぁ、それな。今年のカウントダウンタイムは明後日だ、国王が変わるらしい。少なくとも、次の争いを待つ間に何とかなるんだとかよ。”
“エエッツ!マジかよ?けど国王のエドワードも老人だったしな、もうちょっと平民をいたわってくれたらとは思うけど新しい奴はもっとやべえんだろう?アアッ!アタマが、ハア考えるだけで面倒くせえ!”
“フッハッハ!大袈裟ダナ、ジャーマンはガキなのにこういうのに敏感だよな!平民らしくねえ。前世貴族とかだったんじゃねえのか?”
“っせえ!貴族ならとっくにここらの政治を覆しとるわい!”
“へえへえ。”
話し合えるダチはかけがえのない存在だ。残り僅かの酒ではあるが、二人の会話は夜遅くまで続いた。
“俺、ほんっとお前が羨ましいぜ。旅してえな。いつかは、ほら。秘宝とか、キングの試練とか受けてみてえ。”
“フッハ!お前がキングのシレンッ?ムダムダ!俺も十三年も旅してたけど、それらを求める奴はほとんど死んでったぜ。マ.ジ.デ.だ。”
“か、考える事位いいだろべつに!”
“だな…考えるだけ…だったらな。”
店を閉めたジャーマン、この三日間は酒の調達と色々な事しないといけない。何せ、もうすぐカウントダウン、祭りが始まるからだ!
そして何と、事件が起きた。
“オイオイオラオラオラァ!”
“何飯食っててからチャラにしようとしてんだ?アア?俺らと遊べやお嬢ちゃん。”
“ヤダ!離して!”
騒がしい、嫌な予感。
ならば簡単、前世なら飛び出して止めてるが今はスルーすべき…のはず。
“な、何か面倒くせえ騒ぎ…逃げよっとって、走って来た?エエッ!?”
ぱふん!
鼻に触れる柔らかい感触と清らかな体の香り。女なのに何で襲うんだよ俺を!?と内心叫ぶジャーマン。
“た、助けて!”
“ヒイ!!めんどくせえ奴が来た!!”
男の脅迫気味な声が暗い街角から聞こえる。
そして面倒くさいと思ったジャーマンは離れようとしたが、何故か女に飛びつかれたまま動けなかった。トロイ!トロすぎる!!肝心な脱走時間を丸々逃してしまったじゃねーか!
“オイ、ちょ!まっ…んなのゴカイだあ!”
“アンダァ?てめえは?”
ぎらつく目線から見てぜってえやべえ奴らじゃねえか!何故巻き込まれたんだジャーマン!と心の中で悲鳴を上げるジャーマン。
ジャーマンはこう思った。
め、めんどくせえ!!!
と。
“ザコブスは引っ込んでろっつうんだよ!僕が誰だと思ってるんだこの田舎者が!”
カチン!
何か、とんでもねえことをこのチビハゲは言ったことをジャーマンは感じた。それは、男の尊厳。許せない戦いが今始まった!!
“アン?誰がブスって?うおるらあ!!”
バッコン!!
くりちぇかるのザ!ヒット!魚を釣った如く空を飛ぶ棒は美しい楕円を描いて賊(同じく少年、だがハゲ!)の顔面にHIT!
真正面に戦いを挑んだので有る!
“や、やりやがったなてめえ!”
“いて!ブッ!オゥフ!…”
ドンチンカンのドンガラガラガッシャン!!
ボカスカチーン…
“ぐぬぬ、手が四つに足が六つ…”
ザコはどうでもいいがブスだけは認めたくねえ!そういう意気込みで男らをぶったたく!だが相手の動きは速い、ジャーマン何度もぶたれたし!
“クッ!大人数で卑怯な奴らだ!”
倒れそうになったのを目の前に白いふわっとした姿が!
“やめて!もう、良いの!”
パキッ!ペしぺし!
この時逃げたはずの女が戻って来た、その手にはこん棒、いや、ただの枝じゃねーか!
“わ、私が!あ、ああああ相手よ!このハゲ!坊主頭!グスン…”
“うっ、そっちのほうがダメージが。”
女の子の意思の強さはわずかだが、ジャーマンに時間をくれた。
“下がってろ…もう大丈夫だぜ”
“けど、血が…”
“女は下がってろ!ここは男の尊厳を賭けた戦いなんだ。例え弱くても、例えバカだったとしても、ブスだけは許せねえ!!俺は世界一イケメンなんだ!”
ジャーマンの手から何やら丸い何かが飛んだ!これはまさかの暗器、他人の事を卑怯と言っておいて暗器とは何事だ!
“いやいや、どっからの自身やねんブス…ってギャーッ!!虫!!”
“秘儀、暗器術、ハチの巣落とし!からのお…滅多打ちじゃ!!”
“ギャーッ!助けてえ!!”
カンモンバチ、関門蜂。魔物以外の危険生物の内、レベルは2。
砂漠には危ない生物がいるのはどの世界でも同じ。蛇やムカデ、そういう系は前の世界にも居たが。関門バチは聞いたことない。つまりジャーマンは、この世界に来てからようやく知った生物だ。
それもそのはず、これは異世界のハチの一種なのだから。
黄色の羽に太った黒い頭。
この類のハチは毒が弱い代わりに集団性の攻撃をする特性を持つ。そして何より、物陰の地面に無防備な巣を作る彼らの特性からうっかり踏んでしまえばとても危険である。
砂漠は物陰がない、だからこのように民家付近へと巣を作るから余計に被害が多い。
だったら何故ジャーマンは刺されなかったんだって?そりゃ指で唯一の出入り口を先に塞いだから!
ハチは昼行性の生物、夜は寝てるから油断してる。それでマリのように投げられたので有った!
そしてここでの秘密だが。ここら砂漠の人はその性質を利用して自然の罠を仕掛ける事がある。何せ、マリ状の巣は投げれば良いのだからな。気を付けろ?爆発すればソイツに災いは降りかかるぜ!此奴等のようにな。
“ぎょめんなしゃい、もうじまぜん!”
“まさか、ぎょんな卑怯な手を。”
豚。それ以上に顔面を狙われた賊等で有った。ジャーマンは服の上のハチを追っ払い大いに笑った。
“フハハ!卑怯だろう?大勢だからって調子に乗るんじゃねえ、なんなら関門バチよりも多いってのならどうぞこいや!次からはもっとくれてやる、わあったか?アン!?まあいい、これでお前らは俺よりもっとブスになったんだからな。ふっははは!どっかに行けブスブース!”
“(つд⊂)エーン!”
ハチに刺されて樽のような顔になった賊らが夜道を逃走して行く姿を見てハッハハハハ!と笑う。
流石にもう人前で悪さは出来んだろう。
“あ、あの…”
“ヨーシ!スッキリしたことだし帰るとするか!って…アン?まだいたのか?”
“ありがとうございます!”
“っつ。なんだ…次からは夜道気を付けるんだぞ。じゃっ!もう憑いてくるんじゃねえぞ!?分かったか?お、恐ろしい。”
“お、恐ろしいとは何よ!女子なのに守って有らないわけ?夜道なのに?”
美しい金髪に真っ白な項、砂漠の民とはまるで違う上品かつ美しき瞳からは清らかな感謝の意がこもっていたが。怒ってると何故か本当に怖いように感じる。
だがもちろん何事よりも面倒くさがり屋なジャーマンは例えどんな美小女にも興味は無い、むしろ初めから恐ろしい!に嘘は無い。
なぜかって?めんどくせえから!
“ま、待ってってば!もう!なんて人なの!せめてこれ。”
“ア?何だこれ?”
“ぺ、ペンダント!これで、せめてのお金にはなるから。”
“ヤダし面倒臭い!どうせ後から取り立てるんだろう?”
“しないわよ!じゃーね面倒くさがり屋さん!プンプン!”
“は?オイちょ…変な奴。”
走り去ってゆく少女の姿を見てアン?と首を傾げる。なんだ!?変な奴!この世界にも変な人は居るんだなオイ。
ペンダントは銀色のバラで覆われ真ん中には青い石、宝石らしきものが有った。手に取ると清々しい感じが体へ伝わるからに。いくら凡人なジャーマンでも、少女の言ってるように高価な物だろうと感じた。
“まあいっか、売るのもめんどくせえしいいもんは心にしまうべきだしな。”
ペンダントを首に付けて、ルンルンと家へ帰るジャーマン。
今日はスカッとしたぜ!帰ったら寝るとするか!騒ぐのめんどくせえし!騒ぐ金ねえし!
そう心の中で叫んだのであった。
次の日。
“ぐがーぐがー!!”
ぼろい机に黄色掛かった粗麻の布でできたザ、倉庫ホームレス寝床の上に半腹出しにみっともなし!
爆睡中のジャーマンはザ、面倒くさいポーズそのもの!
“チックタック!チックタック!…ブッ!!”
“オウフ!クセー!!”
ジタバタジタバタ…ブーンブーン!
でっかいカナブンのような虫を離し、飛び起きるジャーマン。換気!今直ぐ換気!
寝起き専用、クサクサ寝起き虫!
動きが遅いが、時間設定できる背中の時計の針のような羽を持っている。それを回せばあら不思議、朝七時に屁をこいた!!
“激臭、流石は俺の寝起き虫ダゼウウッ…”
涙を拭き笑うジャーマン、恐らくドリアンでも食ったんだろう。
これで朝ご飯を食べずに済む。
このクサクサ寝起き虫は、昔市場の高級ペット店で譲ってもらったものだ。ま、それもそのはず。何せ本物の寝起き虫は覚醒作用のある香りよい花のエキスを吸わせるが何故かこの寝起き虫だけ雑食だったため捨てられた。で、そんな不良品をジャーマンは拾った。
“あちい…”
今日は伯爵家の管理する大町にやって来たジャーマン。
ジリジリと照る太陽に黄色掛かった茶色い凸凹な土道、店舗なのに路上に集結してるのもいかにも異世界って感じだ。長い赤か黄色の伸ばし布に、地面へ固定された茶色の棒でできた薄暗い空間。その一つ一つが屋台で埋まり、自然なローカル商店街になっている。人はこの道を通ればどんなものでも買いそろえられそうだ。
“いたぞお!”
“アン?あれ?ブスのブータさんじゃねえのか?”
一人か、豚の丸焼きにしてやる!って待てよ。何だこの集まり方は?
“てめえ!よくも昨日やってくれたな!俺はこう見えて貴族の出身でね、傭兵くらい雇えるんだぞ?この、貧乏人が!へっへへ!”
“ひ、卑怯だぞおお!!!”
キラリーン!ぞろぞろ…
逃げろ!ジャーマン!
“捕まえろおお!!!”
“うおおおお!!!”
全力疾走!チンピラなら何とかなるが傭兵なら話は別だ!剣や鎧を着た奴らは素手で勝てるもんじゃねえ!しかも結構いるし。
“待て待て待てえ!”
“どいてくれえ!どいたどいた!”
騒ぐ商店街。人を次々と飛び越し、ジャーマンのパルクール(疾走!)が始まった!!
“逃がすな!ってどこ行った?”
路上で突如姿をくらますジャーマン、小さい体はいつの間にか上に!?
“上だ!テントの上に上りやがったぞお!”
“俺らも上がるぞって!ウワア!”
ベリベリッツ!どんがらがっしゃん!
“ざまあ見ろ!鎧のデブがハッハ!ってやべええ!”
テント破けて落っこちる傭兵を見て大笑いするジャーマン。しかし!目の前に急な大河!何処に出たんだよ、ジャーマン!!
“ワッハハ!バカめ!隣国との辺境に崖を使ってる事も知らねえのか!マジうけるんだけどってハアン!?”
フワッと浮き上がるジャーマンの姿!そして青く光るペンダントの姿!
“ヌオ!?オレ…シー*タ⁉…ギャーッ!!”
“突っ込んできたぞ!逃げろおお!!”
浮かんだかと思ったら暴走だ!急旋回した後青い流星のように突っ込んできたジャーマン!そして今度は傭兵らが全力疾走!
“どけええええ!ぶつかるぞおお!!”
“ウワーッ!!走れえお前ら!それより…何とかしろ!おめえのモンだろ!それ!”
カオス!もはや報復なんかどうでもいい。命惜しけりゃ逃げるんだあ!
“知らねえし!勝手に飛んだんだし!暴走するし!!傭兵なんだろ!助けろ!”
“どういう理屈やねん!”
一番焦ってる人間はジャーマンの他居ない!叫ぶ坊ちゃまの声なんかは空耳に、ともかく追いかけ回す!
“ギャーッ!!お化け!!”
“ママ?流れ星ってこんなに大きかった?”
“人が飛んでるぞ?!”
さあ、見物客が集まって来た。恥ずかしい以前にいつ止まる!坊ちゃんも中々やる、まだ追いつかれないとか奇跡の他がない!
“何の騒ぎじゃ?”
ひげ生えた冠被った太ってる伯爵が騒ぎを聞きつけやって来た。
“はっ、クリムト坊ちゃまが空飛ぶ人間に追いかけられてると。”
“何じゃと!?怪人か!?”
“いえ、それが…”
その時だった!
“誰か止めでえ!”
ビュン!
カツラを吹き飛ばす程のスピードで頭上を通過する少年の姿を見て唖然するバレン伯爵、キラリーン!まさか、父譲りだったとは!
伯爵の内心はこう叫んだ。昨日、息子が辺境の村でハチに刺される騒ぎと言い今日の空飛ぶ少年と言いなんて日なんだ!!
“止まれえ!!”
ブオン!!
“あれれえー!”
ドスーン!
テントに突っ込んでようやく止まったジャーマンである。
“ンダ?い、一応言っておくけど俺は悪くねえからな!”
“捉えろ。”
“ハッ!”
“だああ!離せ!離せえ!”
周囲の吹き飛ばされたテントとカツラを見てやれやれと首を振る伯爵。夢だ、ただの夢。
“まさかハゲテタナンテ…”
テントに絡まったジャーマンをいとも簡単に担いで城へ持って帰る傭兵と、騒ぎを見終えて帰ってゆく人々。
“私の名前はスラプル、ただの執事でございます。ジャーマン様。現時点で貴方が悪いかどうかは分かりません。しかし、我々全員の安全の為にも一つ答えてもらわないといけないのですがよろしいでしょうか?。”
“アン?全員?どういう事だ?”
“そうです。下手すれば貴方だけじゃなく国家同士の争いになりかねません。なので慎重にお答えください。”
執事に質問される少年二人。こう見えてバレンハゲ…っと伯爵は悪良しの分かる立派な大人だ。少年の揉め事で態々罰したりはしないはず。
“おいおい、冗談きついぜ執事のオジサン。”
“そ、そうだぜ!俺らまだガキだろう?”
話の重さを感じ対立してた少年らでさえ緊張で顔が引きつる。
“このペンダントは誰のものですか?”
“アン?侯爵ならペンダントくらいいくらでも持ってるだろう?昨日、オタクの息子さんがセクハラしてた女子を助けた礼だよ。あ、あげねえからな!”
“そうですか…確かに、クリムト様の言ってた青い水晶のネックレスをした可愛い子と一致しますね…伯爵様。あの少年の首に付いてるのは確かに隣国のセルフィ王国の。”
執事らしき人が話を聞き終えた後、少々青ざめた顔で伯爵の耳元で囁くスラプル執事。緊張する大殿の中、クリムトとグルグル巻きのジャーマンは同時に顔を見合わせる。この雰囲気、何かヤバくない!?
“フム。つまりクリムトが言ってた娘とは…このバカ息子が!”
“エエッ!?なんで僕!?”
“い、痛そう…”
ボカッ!
侯爵のオジサンに頭殴られる息子を見て痛そうとドン引きするジャーマン。
“すまなかった。クリムト、お前、謝りな。”
“い、いや…別に…まあ、てめえが居なかったら僕やばかったし?何だ、ぶ、ブスとか言って悪かった。”
“ああ、こっちもハゲとか言って悪い。”
改まって座って話す三人。
あの女子はいったい何者かと言うと。
セルフィ.シェルフィ.マーガレット。通称SSL連邦の最高権力国家のセルフィ王国の王妃セルフィ.アメリアス.スカーレットが最も愛する娘である。
昨日、外の探索で転移魔法を遊んでた所うっかり此処へ飛ばされてしまったの
だそうだ。ジャーマンが聞いてたらきっと、あほ~だなあ。とか言っている。
良いことに皆は知らないものの、現在は身柄が確保されており明日にも王国へ帰還するとか。
“幸い、男の子に助けられただけで済んだが。もし何かあったら命いくつあっても足りはしない。何せ相手はアメリアススカーレット。新皇帝陛下も相手にはしたくないとんでもない女だ。一命をとりとめたな我々も。”
“マジかよ、あぶねえ。”
“なに他人事のように言っとるんじゃい!このバカ息子が!”
バコーン!
“い、痛そう…”
“感謝の証に、一つ出来る事をしよう。ジャーマンや、何か欲しいものとかあるかね?”
“そうだな…物じゃないけど良いか?”
聞かれたならば答える。素直な事だジャーマン。
“うむ。ただし、人道に違反しなければだ。できるだけの事を約束しよう。”
“俺、小さい頃からずっとこの小さな村に居たんだ。別に嫌いなわけじゃねえけど、いつかはもっと大きい世界へと進みたいと思ってたんだ。だけど、俺ん家バーやってるんでね。親父が五年前いきなり消えて以来ずっとおんぼろなまんまだ。俺が経営しないと、話にならなくてなアハハ!だけど、俺は知ってるんだ。俺はこんなちっぽけな所を見るためにこの世界に来たんじゃねえと。だから、だから旅がしたい!この世界を探索して!強くなって!いつかキングワルズワーに出たいんだ!”
“ワルズワーじゃと…!?”
驚く一同。例え執事でさえもメガネが顎まで落ちている。
“フフッ!それ、私に任せてくれないのかしらバレン伯爵殿。その話、なかなか良いんじゃないの?”
“き、君は!?”
“身分は教えられないわ。けど、これを見れば貴方にはわかるでしょ。”
銀色のバッジ、ソコには美しい花々に囲まれた空を飛ぶ鳥の紋章が刻まれていた。
“そうか。それなら、任せても良いだろう。”
“ついてきな。少年。”
仮面に黒いフード。声すらよく分からない。ナゾの人物である。
“その…紋章何処かで見たような気がするが…まあいいや。ともかく付いていけれればいいんだよな。”
“ええ。”
家付近の道まで案内した謎の人物はフードを外した。
“あ!?あんたは?”
威厳ある赤い長髪と空にキスすれば全てを赤く染めるような真っ赤な唇、美しいルビー色の目に大人の豊満な体系。まるで周囲の温度で溶けだした甘いクリームのような白い肌をツタル水晶のような汗そして、チョンと出た美しいバスト…ゴッホン!…例え方が悪かった!この女はボンキュッボンツルテカキラーン!…だ、ヨシ!
“スカーレット。それ以外は教えない。明後日に貴方には良い友達が来るわ、大切にしてやって頂戴。昨日のは娘の分身だけよ、本人はすっごい怒ってたけど。フフッ、ながらに守ってくれて感謝するわ。”
ゾクッ!
威厳、そして恐ろしいまでの実力を感じる。美しさ以前にそういう考えが脳内を横切ったジャーマン。
身震いが止まらねえぜ!此奴…つええ!!
そして、余計にめんどうくせえ事に巻き込まれちやがった!!!
と心の中で叫ぶのであった。
“お、俺。あんまり女子と接した事無いんっすけど。”
“フフッ、それでいい。獅子は我が子を谷へ落とす。強くない子は私には必要ないわ。貴方もそう。もしキングになりたいのなら、強くなりなさい。私のように国を守り遠い未来でさえも手に入れようとするのです。道は長い、先へ先へと行かねばふふっ彼女も貴方を見ないわ騎士さん。”
“マジか…ちょっと待て誰が騎士だ、こっちはガキには興味は無いむしろ貴女のほうが…ってええ!?き、消えたんだけど??”
一瞬で目の前から消えた美女。
立った所を二度見して再度目をゴシゴシするジャーマンであった。
“これが魔法か!すげええ!!”
今更だがようやく異世界感を感じた。
そうか、俺が知ってる世界は本当にちっぽけなモンだったんだな。俺は、俺は…世界を探索するぜ!
ジャーマンはそう、心に誓ったのであった。
>>>><><><><><>><><><><><><><>><>><>><><>><>><><>><>
作者:
なんか色々と\(^o^)/オワタ!ような感じの小説(?)らしき作品が出来ました。
何か色々これからも書いてみたいですぜえええっっと!!
ちなみに本編は一人称つまりジャーマンの視点(気分)で書きたいと思います。
01から、本編。
ジャーマン:かんけーねのがなげーよ!激おこ(ノ・ω・)ノ
作者:オブッ!!な、長くてゴメン…
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