第9話

『それは、鎮魂です。


あなたは、いつも、窓の外を眺めている。


私には、それは、祈りに見えました。


あなたは、死んでしまった施設のかたと。あなたの知らないあなたのご両親に。


祈っているのだと思います。


あなたは、とてもやさしいかたです。


既にそのかたとの関係が破綻しても、ずっとがまんして、まだここにいる。


ここで、祈っている。


わたしは、あなたを一目惚れで好きになったのだと、思っていました。


いま、わかった。


あなたは、とてもやさしかった。


それが、わかってしまったから。


だから、好きになってしまったのだと、思います』

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