第3話・幼女の皮を被った秘書(愛人?)
『秘書』とは、忙しい上司が業務に専念できる環境を作る為に、スケジュールの調整やサポートをするお仕事のことである。
華やかなイメージを持たれる人が多いが、実は事務作業に調整業務がメインのとっても地味なお仕事内容。
悪の組織の秘書もその例に準ずるのかは知らない。
が、今はそんなことどうでもいい!
ウソでしょ? 俺、こんな幼女を首領からNTRするの!?
「軍団長クラスに匹敵、いえそれ以上の能力の持ち主です。これで我が組織の戦力は1000パーセントアップすることでしょう」
身長140cmあるかないかのミニマムな幼女には似合わない、堅苦しい口調。
金髪ツインテにたれ目がちの金色の瞳が特徴的で、肩が大きく開かれた黒のゴスロリワンピース姿は秘書というより魔法少女っぽい。手に持ったファイルが何かの魔導書に見えてくる。
「そうか......でかしたぞドクター
「首領のご期待に沿うことができまして、喜ばしい限りです」
仁王様のような迫力ある風貌の首領に深々とお辞儀をする我が創造主。
組織のボスだけあって威圧感が半端ない.........ていうか、本当にこの二人できてんの?
だってこの組み合わせ、どう見たってコスプレした可愛い孫と改造されたガタイの良いヤ〇ザのお爺ちゃんだよ?
この二人が行為に及ぶのなんか絵面が凄すぎて想像したくないもの〜。
「デモンギャラン。お前の帝国での使命を申してみよ」
「俺の......俺の使命......」
「そうだ。お前の宿命を首領にお聞かせするのだ」
よ~し、ここはダークヒーローっぽくビシッ! と宣言して、幼女秘書様を俺の魅力でメロメロにしてやろうじゃないか。
俺は仮面の下でニヤリと笑い、専用武器である剣を右手に瞬間転送し。
「俺の目的はただひとつ、このサタンブレードでヒーロー達を一人残らず皆殺しにする。それだけだ。必ずや首領の元に、奴らの首を持ち帰って御覧にいれよう」
壇上の玉座に腰かけている首領、とその横にいるちびっこ秘書に向かって見栄を切った。
人の前でこんなことするのは数年ぶり、しかも本物相手だから尚のこと快感だわ。
「おぉ、頼もしい奴だ」
指先から破壊光線でも出しそうなごつい手で、首領はゆっくり拍手をする。
隣の秘書は......無反応だった。やっぱりお嬢ちゃんにこのカッコ良さはまだ理解できないか。
「......しかし、皆殺しという単語は今の時代にそぐわないな。それに首を持ち帰るのもダメだ」
「そうですね。間違いなく協会の審査に引っかかります。最悪組織の一定期間の活動停止の処分もありえるかと」
――は?
真剣な顔で何言ってんだ、この顔面凶器とロリっ子は。
ここは昨今の放送倫理事情なんて入る余地もない、ヒーローと怪人達が血で血を争う理想郷ではないのか?
「申し訳ございません首領。
「ならば仕方がない。初陣までに完璧にしておくのだぞ」
「ハッ!」
ぽつねんとしている俺を横目にDr.葛葉は深々と頭を下げた。
「では、配属先等の詳細は追って伝える。私はこれから大事な用があるので、あとはK、お前に任せる」
「はい。お気をつけて」
薄い煙と無数の稲妻に覆われ、首領ガウザーの姿は一瞬にして消えた。
一人残されたちびっ娘秘書Kは壇上から降りてくると、俺の前までやってきて。
「とりあえず先に、あなたにこれを渡しておきます」
そう言って渡されたのは、変身前の俺の顔写真が貼られたIDカード。
こんな写真、録った覚えないんだが......しかも微妙に半笑いで気持ち悪い。
後日絶対に録りなおしを要求してやる。
「首領は今日も一人で行くのかい? 仕事も忙しいというのに、毎日大変だね」
「本人がそう望んでやっていることですから。それに少しでも長く
急に一般市民の日常のような談笑を始めた二人。
先程までの展開と温度差がありすぎるのもそうだが、いろいろとツッコミどころが多すぎて少し疲れてきた。
この程度で疲れるなんて、おかしいな。俺、怪人のはずなのに......。
「......あの、何か?」
こちらの視線に気づき、怪訝な表情を浮かべる秘書。
「――いや、中学生が悪の組織の仕事をしているのに驚いているだけだ」
「なっ!!?」
秘書Kの綺麗な白い顔が瞬く間に真っ赤になると、俺が反応するより前に、超特殊合金で守られた男の急所部分を足刀で蹴った。
ハイヒールのカカトがめり込むほどに。
[$#&%!!?」
「私は20歳だ! 社歴も年齢もお前より上で先輩だ! 良く覚えておくように!」
声にならない声が漏れ出て、たまらずその場で悶絶して床の上をのたうち回る。
「ごめんね
るからさ」
「そうしてください。個性を持たせるのは良いですが、ほどほどにお願いします。あと何度も言いますが、ここでは私のことは秘書Kと呼んでください」
スーツの上からこのダメージ......やるじゃねぇか......それでこそNTRのしがいがあるってもんだぜ......。
強制的に機能を停止される直前、俺の視界に映ったのは、それはもう立派な彼女の黒パンツでした。
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