悪の秘密結社の首領秘書(愛人)をNTRして世界を救う!って、俺も一応悪の戦士なんですが......
せんと
第1話・転生だァァッ
「――ついに完成だ! 苦節50年......我が理想の悪の戦士が今ここに!」
真っ暗闇な部屋の中から聞こえる狂気を帯びた老人の笑い声。
素っ裸で仰向けの状態、円形の台の上に乗せられている俺に、そいつは言った。
白いタキシードに黒いマントをまとった、聞いていて気持ちの悪い笑い。
昭和生まれの俺にはすぐにピンときた。
マッドサイエンティストという、できれば関わりたくない職業の輩だ。
長身で顔中しわだらけの彼は、目覚めたばかりの俺の顔をじっと
「......やっぱり、ちとイケメン風にし過ぎたかな?」
言葉の意味がわからない。どういうことだ?
......俺は、必死に直前の記憶を思い出す。
*
......その日、俺は徹夜明けだった。
大人気特撮ヒーロー番組のメダルを買うため、日付が変わる前に店頭に並んだ。
仕事を終えたあとで
眠ると奴らに列を割り込みされるので、一睡もせず、修行僧のごとく真冬の外で一夜を
過ごした。
その身を犠牲にした買う努力のおかげで、俺は無事にメダルを購入できた。
本当、転売に対する法整備を早く国はなんとかするべき。
メーカーが転売対策を販売店に丸投げしている今の異様な状況は、いつ死人が出てもおかしくはない。
悲惨な事件が起きなければ本気で動こうとしない。人間はおろかな生き物だ。
一人心の中で自分に酔っていた、その時。
何者かが俺の後ろから買ったばかりのメダルの入った袋を奪い、走り去ろうとしていた。
やられた! こんなストリートチルドレンまがいな所業をする奴がこの国にいるなんて。
重たくだるい身体にムチを打って、不届き者の背中を追おうと走り出した。
が、すぐに急に心臓の辺りを経験したことのない激しい痛みが襲い、俺はその場に倒れ込んでしまった。
それ以降の記憶はない......。
どうやら俺は助かったらしいのだが、何か様子がおかしい。
真横のガラスに映っているのは俺の顔、ではなく、全くの別人の顔。それもかなりの美形、しょうゆ顔タイプの。
体系ももやしのようなガリガリくんから細マッチョへ。
......それになんだ? この謎に身体の奥底から溢れ出ている力は。
「......ここは、どこだ?」
声まで低めのハスキーイケボに変化していることに驚きつつ、俺は事情を知っているであろう老科学者に尋ねた。
「ここか? ここは秘密結社・クアトロノヴァの改造実験ラボ。言ってみれば、ワタシの専用の部屋じゃ」
確かに、見渡すと獣? か何かを培養しているような巨大なカプセルが数台。周囲を取り囲むように配置されていて、いかにもそれっぽい。
「そしてお前は、私が作り出した究極の対ヒーロー用決戦士。さぁ! 立ち上がってこう言うのじゃ! [
言われるがまま、俺は台から起き上がって。
「............邪結」
変身コードを口にする。
すると、その時、不思議なことが起こった。
俺の瞳が怪しく赤く光ると同時、つま先から一気に頭頂部まで、あっという間に俺の身体は漆黒のメタリックスーツに身をつつまれた。
その間、かかった時間はわずか一ミリ秒の出来事である。
「おぉ! 我ながらなんと美しいフォルム! 余計なものが一切なく、格闘戦に超特化した
その能力に敵う者等誰もいない。更にこのスーツのテカり具合......そそるのう......」
俺の太ももあたりに
どうやら俺は『クアトロノヴァ』という悪の秘密結社に改造されてしまったようだ。
普通は悲観するところだと思うでしょ? でも俺にはそんな気持ちはこれっぽちもございません。
だってあんなイケメン男子に改造された上に、ダークーヒーローみたいな姿に変身できる力を与えられたんだよ?
特撮ヒーロー番組大好きな俺にとっては憧れのシチュエーション!
光が輝くところ、闇もまた輝く......これ以上の幸せな人生の再就職先がどこにあるというんだ。
「今日からお前の名前は[デモンギャラン]じゃ!」
「デモンギャラン......悪くない名前だな」
「おっと、こうしてはおれん。早速首領に完成の報告をせねば!」
腰をさすりながら老科学者は俺を一人ラボに残し、どこかへ姿を消した。
これは首領の前で性能テストとかする流れがやってくるな。噛ませ犬相手に。
ていうか、俺の武器って剣か? それとも銃かな? あ、でも最近はどっちにも変形する武器が陣営問わず主流だよな~。
呑気にこの先の展開を楽しみにしていた時......。
「――私の声が聞こえますか? もし聞こえているのなら、今すぐ目を
と、優しそうな女性の声が頭の中に。直接脳に語りかけられている感じで、少々気持ち悪い。
わけがわからないが、とりあえず俺は支持に従い、スーツの中で目をつぶった。
次第に周囲からは音が無くなり、意識も
「......もう大丈夫ですよ」
そう言われて静かに目を開ける。
声の主は、先程までとは対照的な真っ白な部屋の中を、ぽつんと立っていた。
派手な印象を感じさせるオレンジよりの赤くて長い髪。
上半身を西洋の鎧、下半身はドレス調のロングスカートをまとった服装は、戦女神のような印象を与える。
彼女は警戒する俺に水色の瞳を向け、優しく微笑んで。
「申し訳ございません。これが私の制服なものでして。決して怪しい者ではありません」
両手を右に左に振りながらアピールしたと思いきや、すぐさま真顔になり、こう続けた。
「――短刀直入に言います。この世界を救う為に、首領の秘書を寝取ってください」
女性の口から直接”寝取る”というパワーワードを聞いたのは、人生初だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます