義賊の選択②

 彼はギルド集会所に行き、受付のレナにメンバー募集の求人を尋ねた。


 「残念だけど、今は若葉色の剣士での求人はないわね。チームだったら、その辺にいる方達に直接声を掛けて見るしかないわね。臨時で雇ってくれるかもしれないけど……。育成を重視したグループだと、人員も限られるから中々入隊も難しいわよ。せめて青色まで単独で頑張るしかないわね」


 それを聞いたティオロは、少し単独で魔物狩をしようと城壁の外へと出て、装備を整えて、その辺で彷徨いている小鬼の魔物に攻撃を仕掛けて見た。


 バシッ!


 グオオッー!


 一体の小鬼に攻撃した直後、相手は仲間を呼び、数匹が集まって襲い掛かって来た。


 「ヒエエー!」


 必死に逃げたティオロは、上手く隠れて敵が来ないのを確認する。


 逃げた直後、別の小鬼を見つけて攻撃した。


 背後からの攻撃で、彼は初めて自分の実力で魔物を倒した。


 結局……その日に倒した魔物は3匹で終わり、前回の湿地帯の魔物の数を換算すると、計8匹と言う事になった。



 ~現在……


 自分で稼ごうとして行動して見たものの、彼は数日掛けて、やっと紺色の称号が得られたが、それでも先は長かく感じた。


 「これじゃあ、到底アイツの役には立てそうにないな、はあーあ……」


 そう言っていると、ギルド集会所に人組のメンバーが入って来た。その中の1人がティオロの姿に気付く。


 「オイ、あれ……以前、湿地帯で一緒だった者だろう?」


 それに気付いた男性が、彼を見て「おお、そうだアイツだ!」と、ティオロに気付いて彼の側へと近寄って来た。


 「よお、ボウズ、元気そうだな」


 聞き覚えのある声に気付いたティオロは目の前の男性達を見た。そこにはフォルサとカルファ、それにアメリも一緒だった。


 「どうしたんだ1人で、転生者の子は一緒じゃないのか?それともフラれたのか?」


 カルファが皮肉そうに言う。


 「違うよ、アイツは、今は光の洗礼を受けて、光の魔法を覚える為に神殿に居るんだ」


 それを聞いたアメリが「ええッ!」と、驚いた口調で言う。


 「どうしたんんだアメリ、なんか知っているのか?」


 「私の友達が言ってたのよ。先月、夕刻時に神殿が眩い光を放った……て、もしかしてリーミアちゃんだったの?」


 「そうなんだ。まあ神殿に居れば、魔剣士にも襲われないから安全らしい」


 「そっか、それで別居生活で寂しい思いをしてるのか……お前さんは?」


 「別に寂しくは無いけど…あんまり彼女からお小遣いもらうのも失礼かな……と」


 「良かったら、恋人募集中の子が居るから紹介しても良いわよ」


 アメリが珍しく皮肉を言う。


 「そうだね、口数が少ない子で、根が優しい綺麗な子が良いね」


 「あんまり理想を高く掲げると、ずっと独り身の生活を送る事になるわよ」


 アメリが少し手厳しい発言を繰り返して来た。


 等と会話している最中、フォルサが、向かい側の席に腰を下ろして来た。


 「ところでお前さん、現在の称号はどうなんだ?少しはあれから上がったのか?」


 「単独で狩をしていて、やっと紺になった所だよ」


 「転生者の子とは真逆だね」


 カルファが横からツッコミを入れて来た。


 「今の様子じゃあ、何処のギルドのチームも無理だな。剣士なら…せめて青くらいで、前衛で戦えるのが条件になるからね」


 「現在のギルドに集まる武器持ちは、大半が槍使いだからね。盾持ちは希少価値はあるけど、その分多少の経験ある人物が求められるからね」


 そう言いながら、フォルサはティオロを見る。


 「で……お前さんは、どうする?あの転生者の嬢ちゃんの為に、少しでも役に立ちたいと本気で思っているなら、俺達がお前さんを鍛えてやるぞ。そうでなくて1人でずっとのんびりと狩りをしたいなら、俺達は止めはしないが……どうなんだ?」


 ティオロは少し考えた。彼等の言う通り、今のままだとずっとこのままの状態でしかないと思った。神殿で少女神官達が言った『国の為に行動している』リーミアを少しでも彼女に成長した姿を見せ付けたいと彼は本気で思った。


 「もし……ご迷惑で無ければ、俺を鍛えさせてくれませんか、アイツを少しでも見返させてやりたいんです!」


 その言葉にフォウルサ、カルファ、アメリの皆が微笑んだ。


 「よし、決まりだ。今日からお前は俺達フォルサチームの一員だ。言っとくが入ったからにはしっかり働いて貰うぞ。泣き言は許さないからな」


 彼は大きな体でティオロの肩を叩きながら受付のレナに自分達のチーム名簿にティオロの入隊申請を行わせた。

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