第5話・第四の生徒相談【進路相談】『あたし、女の子のお尻が大好きなんです!』
今日もまた、保健室に悩める生徒がやって来た。
椅子に座った勇奈が、悩み相談でやって来た女子生徒に訊ねる。
「で……どんな悩みなの?」
少し思い詰めた、様子の女子生徒が口を開く。
「将来の進路について、話しを聞いてもらいたくて」
「医療関係の学校に、進学したいって相談?」
「いいえ、もう将来のビジョンは決まっているんです」
ここで、女子生徒は自分を落ち着かせるように、大きく息を吸い込んでから言った。
「あたし【女の子のお尻が大好きなんです!】」
数秒の沈黙の後に、勇奈は首を横に倒して、疑問符が付いた返事をする。
「…………はぇ???」
「将来どうするか? 考えて考えて……やっぱり、好きなコトを仕事にするのが、一番だと言う結論に至ったんです……だから【女の子のお尻を、好きなだけ触れられるコトを仕事にしようと】」
「…………はぇ? 女の子のお尻を触る仕事なんて……あったかな?」
「だから、なければ。最初に自分が作ればいい! 【尻マッサージ師】にあたしはなる!」
まるで、どこかのアニメキャラのセリフのような口調で、女子生徒は鼻息も荒く言った。
腕組みをして考える勇者。
「尻マッサージ師? 確かに臀部にもツボはあるけれど……お尻専門のマッサージ師なんて、しかも女の子専門の?」
「女の子専門と言っても、趣味と実益を兼ねて。
処術する年齢幅は決めるつもりです……もう、お店のデザインも決めてあります」
そう言って、女子生徒は持ってきたスケッチブックを広げて勇奈に見せた。
そこには、女子生徒がイラストでデザインした。
マッサージ店『尻押し屋』のラフ画が描かれていた。
「女の子のお尻を専門にマッサージする『尻押し屋一号店』です、この店で毎日、あたしが楽しみながら……もとい、女の子にお尻で癒しを感じてもらいたいんです」
若干、イヤな予感を覚えながら勇奈は女子生徒に聞いてみる。
「相談事って何?」
「お尻専門のマッサージ師になるにも、今から多くの女子のお尻を触って経験を積まないといけないと思うんです……でも、いきなりクラスメイトに『お尻を触らせて』ってお願いするのも変ですし」
「そりゃ……そうよね」
「不自然でなく、女の子のお尻を、好きなだけ触るためにはどうしたらいいのか……アドバイスをください。
まずは、勇奈先生のお尻を触らせてください!」
「そういうコトなら、ご自由に……おいっ、違うだろ」
勇奈は、椅子から立ち上がるとお尻を手で隠して。
モミモミの危ない手の動きをはじめている、女子生徒と距離を開けて後ずさる。
(危うく、この子の熱意に引っ張られて……保健室で教師が生徒にお尻を、不用意に向けて触らせるところだった……そんな現場を誰かに見られたら、どんな誤解をされるか)
お尻を押さえながら、勇奈は思った。
(でも、この子にしてみたら。本気で悩んで保健室に相談に来てくれたんだし……う~ん、落ち着けあたし、素数を数えろ)
勇奈は、異世界前世で『プレイボーイな剣士』と、ギルドの食堂で交わした会話を思い出していた。
プレイボーイの剣士に、言われるままに広げた手の平を、剣士に触らせている女勇者の勇奈が言った。
「これが、女性と簡単に親しくなれる方法なの?」
「手相を見てあげると言えば、たいがいの女の子は違和感なく。自然に手を触らせてくれるからね……スキンシップを重ねていけば、親しくなれる。
もっとも、占うボクの方も女性の幸せを願って手相は、ちゃんと学んでいる」
「ふ~ん、手相ねぇ」
前世の記憶から、保健室にもどってきた勇奈が、女の子のお尻好きな女子生徒に言った。
「手相があるんだから、『尻相』を見てあげると言って触らせてもらいなさい」
「尻相? ですか」
「そう言って切り出せば、占い好きな女子は違和感なく。お尻を触らせてくれると思う……たぶん」
「わかりました! 尻相を見ると言って、女の子のお尻を思う存分、触りまくります! 勇奈先生、アドバイスありがとうございます」
そして、女の子のお尻大好きな女子生徒は、学校中の女子から。
「やたらと、お尻を触ってくる変なヤツ」と思われた。
しかし、それでもめげなかった。女の子のお尻が大好きな女子生徒は卒業後、指圧の学校で熱心に勉強をして日本初の『女の子のお尻専門のマッサージ師』となり。
さらに数年後──女子生徒は『尻押し屋〔一号店〕』を開店させ連日、女性客で賑わった。
そして、女性専門のヒップマッサージ店『尻押し屋』は、なぜか物珍しさからメディアで取り上げられて。
なぜか? 人気店となり全国展開でチェーン店数を増やしていき。
女の子のお尻が好きだった普通の女子生徒は、年収数十億円の大実業家へと変貌した。
さらに、女子生徒の回想録として出版された『わたしの人生を変えた勇奈先生のお尻』は……なぜか、大ベストセラーになり。
映画化が計画されているコトを、知った勇奈は頭を抱えた。
第四の生徒相談~おわり~
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