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「まあ〜、あなたったら、急にどうしたんですか〜」


 湖都が疑問に思うのも当然です。


 けれども…


「うむ〜…あの有田くんという彼は、なかなか頼もしい青年だ〜。彼になら、史都を任せても大丈夫だろう〜」


 これまでの有田くんの行動や、史都に対する気使いを目にするうち、帝都はそう思うに至ったのです。


 かたや、黙って頷く湖都は、いま心の中で微笑んでいます。


 理由は、あえて言うまでもないでしょう。


「さあ、いこう〜」


 静かに立ち上がったが帝都が、湖都を促しつつテーブルを後に。彼女の少し先を行く形で歩き出しました。


 しかし、その背中…どこか寂しそうに見えます。


 ああ・・は言ったものの、やはり娘の父親として、胸中は複雑なのでしょう。


「あなた〜…」


 その帝都の気持ちを察したのか、慰めるかのよう湖都が、ソッと彼の腕を取りました。


 そうして無言のまま2人…遊園地の方へと戻っていきます。


 が、やがてその中ほどまで来た頃、


「あなた〜、あれを見てくださいな〜」


 帝都を立ち止まらせるや湖都が、やや遠く上方を指差しました。


 して見れば、その先には大きな観覧車があります。


「観覧車がどうかしたのかね〜」


 帝都が、観覧車と湖都とを交互に見ています。


「私たちも学生の頃、よく遊園地でデートしましたね〜」


「あ〜、そういえばそうだったな〜。我が青春の良き思い出だ〜。と、そうそう〜…その後、観覧車の中で、君にプロポーズしたんだっけな〜」


 ほほう、そんなことが。帝都さんも、なかなか隅に置けませんね。


「覚えていてくれたんですね〜。あの時は嬉しかったです〜」


「もちろん、覚えているさ〜。私も君にOKを貰って嬉しかった〜」


 いま帝都と湖都の脳裏には、若かりし頃の思い出が俄に、しかも溢れんばかりに蘇ってきています。


「ねえ、あなた〜…せっかく来たんですから、乗っていきませんか〜、久しぶりに〜」


 言って湖都が、それこそ若い頃に戻ったように、帝都に身を寄せます。


 どうやら気を取り直したか。帝都もまんざらではなさそう(表情や口調からは伝わってきませんけどね。やっぱり)です。


「うむ〜、そうだな〜。こうして2人とも、若い顔に代えてきたことだし、ひとつ昔に戻ったつもりで、いこうか〜」


「はい〜」


 こくっ、と小さく頷き合ってまもなく、帝都と湖都が、2人して観覧車の方へと歩き出しました。


 若き日の思いを胸に、しっかりと腕を組んだままで…


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