14:露天巡りをしたよ!/決意
孤児院で二日ほどゆったりと過ごすことになった私は、久しぶりにリナと遊んだりしていた。
遊ぶと言っても一緒にお昼寝をしたり、少し街を見て歩いたりと変わった事はしていなかったけれど、安心して街の中を歩く事が出来たのがなんだかとても嬉しく感じた。
最初はシスターさんが着いていこうとしていたんだけど、他の子達も来る時間だったと言う事もあり、二人で大丈夫と伝えた。
身体能力強化を取得したおかげで、少しの魔力を身に纏えばリナくらいなら持ち上げられてしまうようになったから、危険を感じたらすぐに逃げられるように気を配っていたのだけど、それは杞憂だった。
前の街でも私たちを襲おうとする人なんて殆どいなかったから、その辺りの常識は持った人が多いのかもしれない。
「おねーちゃん、この街、なんだか賑やかだね!」
「うん、そうだね。
向こうの街は何か、少し暗い雰囲気だったから、新鮮な気分だよね」
「うん! あっ、あそこのおみせおにく焼いてる⋯⋯おいしそう⋯⋯」
リサは街中あちこちにある露天に目を輝かせながらお腹を鳴らした。
「⋯⋯お腹減ったの?」
「えへへ⋯⋯」
恥ずかしそうにリサは笑うと、ふと私は前実験で取り出した銀貨が1枚ある事を思い出した。
「そう言えば1枚だけあったっけ⋯⋯」
「おねーちゃん?」
「お金少しだけならあるから、1個だけ何か買ってみよっか」
「いいの!?」
「その代わり⋯⋯銅貨2枚で買える物だよ?」
今はあんまりお金を使ってはいけない気がするけど、銅貨2枚くらいまでなら⋯⋯良いかな?
最悪でも3食分くらいはお金残しておかないと怖いしね。
「どーか2枚! わかった!」
リサは周りのお店をじっくり見ると、何かのソースを付けながらお肉を焼いているお店に行きたいと言い始めた。
「ここ! 美味しそうなにおい!」
「ここだね。
すいません、このお肉の串って一本いくらですか?」
「ん? 嬢ちゃん2人なんて珍しいな!
1本なら銅貨2枚、あーそうだ、この小さめの串で良いなら2本で銅貨3枚でもいいぞ!」
小さめと言いながらそれなりに大きな串を見せて来た店員のお兄さんはいい笑顔で私達にそう言った。
「結構大きいと思うんですけど、良いんですか?」
「嬢ちゃん達、普段から食べてるか?
凄い痩せてるだろ、だから遠慮するなって!」
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
見た目で同情されたのか結局銅貨3枚で串を2本渡された私はリナと一緒に肉串を食べ始めた。
「はむっ⋯⋯おいしい!」
「あっ、本当に美味しい⋯⋯」
「だろ? 俺の特製ソースがオーク肉に合うんだよ!」
お兄さんは私達の反応を見ると嬉しそうな顔をしながら説明してくれた。
「ごちそうさまでした!」
「とても美味しかったです!
冒険者で稼げるようになったらまた来ますね!」
「なんだ、冒険者なのか!? その時はサービスしてやるから、無理はすんなよ!」
「はい! まだなったばかりですけど⋯⋯
無理はしないように頑張ります!」
「気を付けてな!」
「ありがとうございます!」
そして食べ終わり、お店を離れた私はそれからも街中を散策してリサと露天巡りを楽しんだ。
⋯⋯次は買いに行くから今日見て回ったお店の人ごめんね。
それと今日も配信はしていたんだけど、コメントは書き込まれなかった。 きっと忙しかったのかな。
「おねーちゃん、たのしかった!」
「うん、そうだね。
次はお姉ちゃんがいっぱい稼いで色々買えるように頑張るからね!」
「わたしもがんばるね!」
「⋯⋯? どう言う事?」
「お手伝いするとおこづかいもらえるってシスターさん言ってた!」
「⋯⋯リサ、無理はしなくて良いんだよ?
皆と遊んだりしてて良いんだからね?」
「だいじょーぶ! 皆と一緒にお手伝いすればきっとたのしいから!」
「なら良いけど⋯⋯」
かと言って私も全く無理をしないかと言われるとそれも無理な気がするから強く言えない気もする。 ただ、リサが体調を崩したりしなければ良いんだけど。
そして孤児院へ戻って来た私達はシスターさんのお手伝いをして、また皆と一緒に夜ご飯を食べた。
誰かと一緒にご飯を食べるのってやっぱり良いなと改めて感じた。
明日には防具も出来るし、本格的に活動を開始すると言うこともあり、今日は早く寝る事にした。
♢
「⋯⋯お金が欲しい」
ただのニートである俺がお金が欲しいだなんて親に言えば何を言われるか分かったものじゃない。
だけど、両親を亡くしたリナちゃんみたいな子でもあんなに頑張って生きている事を知った俺は、少しでもリナちゃんの支えになってあげたいと思っていた。
「かと言って、チャンネルの宣伝をしようにもなぜかチャンネル自体が無いんだよな⋯⋯URLは保存してあるから見れるけど、何でなんだろうな」
俺に細かい事なんて分かるわけも無いしそれは一旦置いておこう。
「そうなるとやっぱりスパチャだよな⋯⋯もう俺の口座にお金なんてないし、良い方法はないかな⋯⋯」
親に相談しようとも思ったけれど、母親にそんな事を言えば間違いなくネットを取り上げられる、それは間違いないだろう。
「となれば⋯⋯やはり父さんに相談か」
俺は勇気を振り絞り、父さんに相談する事にした。
「なぁ父さん、少し、良いかな」
「どうした、急に。
金なら渡さんぞ」
冷たい態度でそう言われて一緒頭に血が上りそうになったが、今までの俺が父さんにこんな対応をさせるようになった原因だと考えると、それも仕方ないと思い一度冷静になる為に深呼吸をした。
「⋯⋯金といえば金だけど今日は違うんだ」
「言ってみろ」
「お金が欲しい、だけど俺は正直外に出られる自信は無いんだ、まだ外はどうしても怖い」
「⋯⋯何が言いたい?」
「家で金を稼ぐ方法を知ってたり、紹介とかって出来ないかな」
「お前が、働く?」
「出来る事なら何だってやる、と言っても家で出来ることだけ⋯⋯だけど」
ここで大見得を切って実行出来るような人間じゃないのは自分でも理解している。
「どうしていきなりそんな事を?
理由を教えてくれないか?
勿論、母さんには黙っておく」
父さんは俺にそう言ってきた。
正直に話すべきか一瞬迷ったけれど、やはり正直に話す事にした。
「実は⋯⋯」
俺は父さんに事情を話した。
「Youtubeに異世界の映像? そんな事、あり得るのか?」
「じゃあさ、これを見てくれないか?」
俺はスマホの画面を父さんに見せると、日本では馴染みのない景色などが映し出された。
「これが⋯⋯異世界だと言うのか?」
「この配信をしている女の子の視点が見えているらしい。
パッと見た感じ獣人なんかもいるらしいんだけど、この視点の女の子、両親を殺されたらしいんだ」
「そんなのこっちの世界でだってよくある話だろう? 発展途上国なんかではありふれた話だ」
「実はこの子にスパチャ、投げ銭って言えばいいかな、それをするとこの子がご飯を食べたり、特殊な力を身に付ける事が出来るらしいんだ」
「不思議なものだな」
「本当だよ、でもこの子にピンチが訪れた時にお金を投げる事が出来れば助ける事が出来るかもしれない。 だからお金が欲しいんだ」
「でも、お前がわざわざやる事じゃないだろう?」
「俺が初めて配信見た時さ、この子死ぬ寸前だったんだよ。
それでさ、俺が口座にあった500円投げただけでさ、この子の命が救えてさ、俺なんかでも誰かの役に立てるんだって感動したんだよ。
⋯⋯それがただの自己満足だって分かってる。
だけどさ、それで少し前向きになれたんだ。
腐ってた俺に希望を与えてくれた、消えてたやる気を復活させてくれた、その恩返しの為にも金が欲しいんだ」
「⋯⋯分かった、パソコンはまだ使えるか?」
父さんは俺の話を聞き終わると俺にそう問いかけた。
「勿論!」
「じゃあ家でできる仕事を少し教えてやる。
その代わりこれには納期とかがある。
しっかりやらないと違約金なんかにも繋がる、だから絶対にやり切れ、いいな?」
「分かった」
「じゃあお前の部屋に行こう、教えてやる」
「ありがとう、父さん」
そうして俺の社会復帰の第一弾として、在宅ワークを始める事にした。
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