天使な妹の面白エピソード

ロサンゼルスの話からは、ちょっとずれるのですが、家族の話を。


当時の私にとって。

家族は、心置きなく日本語で懐かしい故郷の話をできる、仲間みたいな存在でしたが。


特に、姉と妹は、同じような経験をしていた分、とても仲がよかったと思います。


子どもの頃の私と妹は、「双子じゃん?」

と言われるくらい、そっくりな顔だったのですが。

真ん中っ子で、少し斜に構えたひねくれ者の私(真ん中っ子が皆こうというわけではなく、あくまで私の話です)と違い、天使か、と思うくらい性格がよく、またかわいくて面白い性格でした。

(成人した妹にこの話をすると、うざがられてしまうので、申し訳ないのですが、やっぱりかわいいものはかわいい)


例えば。


ある日のことですが。

ロサンゼルスで私たち家族が住んでいた家についていた、ジャグジー、屋外のお風呂のような、小さなプールのようなものの周りで妹と遊んでいたときのことです。


今はロスの不動産価格はバブルで大暴騰しておりますが、当時は日本に比べ、不動産価格はまだまだ安く、日本の感覚でいうと大豪邸といえるような家に住む人も、数多くいた時代でした。

ちなみに、私たちが住んでいた家はというと。

お庭にリスやシカなどの野生動物が現れる、野生味あふれる、まるで大きなログハウスのような家で。

坂道を登り、着いた先には、三台ほどの車を入れられる、広い駐車場。

駐車場の中には、一人暮らしならばできそうな広さの、薄暗い汚いステューディオ。(水道くらいしかありませんが)

家に入ると、玄関の長い広い階段を登った先に、絨毯敷きの廊下、

ガス式の暖炉のあるダイニング、

反対側に歩いて行くと、高い天井のリビング、

書斎、

マスタールームや子供部屋、お客さま用バスルームもある、

古いお化け屋敷みたいな雰囲気だけれど、私たち家族は大好きな家でした。


当時はごく普通に暮らしていましたが、今はとてもあのおうちには住むことはできないと思います。


その、お家の庭の、ジャグジーの周りで。


妹と仲良く、追いかけっこをしていたら。


私の前にいた妹が不意に、ぼちゃん!と、ジャグジーに落ちてしまいました!


え……、と一瞬固まって。


妹を、引っ張り上げながら。


あれ、さっき、妹に触ってしまった気がするけど、気のせいだよね、妹が、勝手に落ちちゃったんだよね、と内心汗がだくだくになりながら、言い聞かせていると。

(自分でも不思議なのですが、本当にそう思っていたのです)


「ハチミツちゃんてば、もー、全くもー」

と、穏やかに、でも少し恨みがましそうに一言。


やはり、私が、突き落としてしまったのでした。


ずぶ濡れになった妹に、平謝りしながら。

バスタオル、着替え、その他もろもろを用意し、甲斐甲斐しくお世話をしたのは言うまでもありません。


それにしても。

妹はもっと怒ってもよいはずだし、実際、怒ろうかな、と思ったそうですが、怒るタイミングを外して、そのままになったと後々言っていました。


末っ子気質で脳天気だけど、本当に穏やかな子どもでした。


また、一時帰国で、祖父母の家に長期滞在している際。

アメリカと日本は、時差もあるので私たち家族は朝早く起きてしまったり、夕方には眠くなってしまったり、体がついていかなかったのですが。

四、五日ほどたって体も慣れてきたころ。


皆で楽しく会話している中、急に妹が、

「もう私、ぼけなす治ったよ」

と。


???


なんのこっちゃ。

一瞬、全員の頭にハテナマークが浮かんだのですが。


「もしかして、時差ボケ??」


わざとでないのに、あまりのナイスボケに、全員が爆笑。

さすが、全員のアイドル、いったところです。

当の本人は、少し憮然とした顔をしていて、またそこがかわいかったです。


アイドルといえば、もう一つ。


ロサンゼルスに住むようになって半年ほどたったころ。

ある日、子どもたち三人がなぜかはしゃいで。

(姉妹がそろうと、何かとかしましいです)

日々こつこつと努力を続けている姉の方が語学力は上で(結局その差は縮まらず、今では残念ながら私たちの英語力は姉、妹、私の順番です)、姉がそのことを自慢して、私がそれに対抗して言い合っていたら。

妹が、

「わたしは、英語がうまくなるのだ、

わっはっはっはっ、」

と言って、

アチョー!と天井に飛び蹴り。


その、なんでもない瞬間は、

父がばっちり、ビデオに収めてくれていたので、私たちの記憶に残っているのです。


妹はあの頃のことを振り返るたびに、

「いやー、我ながら、あの時はいいやつだったよねー」

としみじみ言いますが、本当に優しい子で、優しすぎるくらいでした。


優しい子って、時々損することがあるから。

大人になって、あのころのびっくりするくらいの純粋さが少しなくなって、代わりに大人の女性として成長したことは、むしろ見ていて安心します。




ちなみに、学校でもいろいろ面白いエピソードがあったようで。

例えば、まだ英語に不慣れなころ、隣の席の子に、

「教科書を見せてくれる?」

と頼みたくて、

"Watch, watch (見て、見て)"

と声をかけて、隣の子もそう言われて一度は妹の方を見てくれたそうですが、また

"Watch, watch.”

と妹が繰り返し、二度目も振り向いてくれたけど、三度目はさすがに無視されたそうです。

隣の子、優しいね……。

そして妹、それを言うなら、せめて指差して、

”Let me see”

と言えばたぶん伝わったけど……。


海外に渡航したばかりの子あるある珍事件だけど、同級生の穏やかな対応含めて、微笑ましいエピソードです。

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