第179話 グレイベア村侵攻3
決戦は、神聖帝国軍がグレイベア村まで20キロに迫ったときに開始された。
場所は深い森の真っ只中。
神聖帝国軍は、夜に動く岩トロルを使って森の木々をなぎ倒し、その後をショゴタンを乗せた橇を森の黒山羊が曳くという方法で、森の中を進んでいた。
決戦の火ぶたを切ったのは、【幼女化ビーム】による岩トロルたちの一掃である。
俺は、ラミア族のミケーネ(金髪碧眼青体。Dカップ)にお姫様抱っこされた状態で、岩トロルの隊列を横から突っ切って行った。
ミケーネの後ろから、ラモーネ(黒髪青眼黒体。Fカップ)とトリフィン(青髪金眼青体。Dカップ)が追走してくる。
ラミアは夜目が効くこともあって、夜の森の中をかなり早いスピードで進んで行く。
岩トロルの巨体が目に入ってくると、俺は【索敵】マップで彼我の距離を正確に把握しながら、
「【幼女化ビィィィム!】」
射程内に捉え次第、岩トロルたちを【幼女化】(1秒)して回った。
「「「岩トロルが消えた!?」」」
岩トロルの後方で指示を出していた魔族兵たちが驚愕の声を上げる。
だが奴らがもし【幼女化ビーム】で放たれる一瞬の光を視認していたとしても、岩トロルが消えた衝撃から回復する頃には、そこに俺たちの姿はない。
最前線の岩トロルが全て消えて、追随していた魔族兵が混乱に陥った。そこを側面からフワデラさんが率いる白狼族の部隊が、闇に紛れて一気に狩りとって行く。
それから、しばらくして最前線の異常に気が付いたのだろう。そこかしこから低く唸るような角笛の音が響き、神聖帝国軍が進軍を止めた。
そのとき、
ビカーーーッ!
神聖帝国軍の正面に強烈な光が輝いた。
光は一瞬にして消えてしまったが、その代わりに、
「ぐおぉおおおおおおおん!」
巨大なレッドドラゴンが、神聖帝国軍の正面に現れた。
「「「うわぁぁ!」」」
突然のドラゴン出現で、魔族兵の隊列が動揺して大きく揺れた。
ブフォオオオオオ!
レッドドラゴンは、ファイアブレスを下方に向って吹き付けながら、神聖帝国軍を縦断する。
最前列の正面に位置していた夜鬼の部隊、その後ろに連なる森の黒山羊、ショゴタンの部隊がファイアブレスの洗礼を受ける。
ブレスの勢いが衰え始めた最後の炎が、恐らく大将であるイゴーロナックル将軍が乗っているだろう要塞馬車の一部を焦がした。
ブロロォオオ! ブロロォオオ! ブロロォオオ!
角笛と太鼓の音が戦場に響く。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!ドンッ!
ドンッ! ドンッ! ドンッ!ドンッ!
ドラゴンの炎に混乱していたのは一時だけで、神聖帝国軍はすぐに体制を立て直し始めた。
ブファッ! ブファッ! ブファッ!
ブファッ! ブファッ! ブファッ!
投げ槍を手にした夜鬼の部隊が、一斉に上空に飛び立って、ドラゴンの後を追う。
先ほどのファイアブレスで幾体か焼かれたはずだが、空に飛び上がった夜鬼は相当の数がいるように見える。
こうして空中ではドラゴンと夜鬼の戦いが始まった。
一方、地上では夜鬼がいなくなったことで、魔族兵だけになった前列約400名の部隊に、ステファン率いる海賊部隊が右翼側から突撃を仕掛けていた。
一時は動揺した魔族兵たちは、相手が人間であることを知ると、すぐに攻撃に転じる。それを見て、ステファンの海賊部隊も転進。背を向けて逃走を始めた。
相手を弱いと見た魔族兵たちが、追撃を仕掛けてくる。
だが逃げていく海賊部隊の方向から、入れ替わるように飛び出してきたのは……。
「「「グ、グリフォン!?」」」
魔族兵たちが驚愕の声を上げる。彼らが見上げるその先には、巨大な鷲の上半身とライオンの身体を持っている怪物がいた。
ドシーンッ!
グリフォンは、ステファンの海賊部隊を追撃していた魔族部隊の先頭に、大きな音を立てて降り立った。
「ぐおぉおおおおおお!」
グリッちが大きな咆哮を上げると、魔族部隊の先頭が左右二つに分かれる。
「「「うわあぁぁぁぁああ!!」」」
ドシンッ!
グリフォンに巻き付いていた何かが音を立てて地面に落ちたものの、グリフォンのインパクトがあまりにも大きかったためか、それに気づく魔族兵はいなかった。
ドシンッ!
ドシンッ!
グリフォンが歩みを進めると、魔族兵の隊列がまた左右に開いた。
ドシンッドシンッ! ドシンッドシンッ!
勢いよく進み始めたグリフォンを避けようと、魔族兵の隊列がモーゼの海のように分かれていく。
ドドドドドドッ!
「「「うわぁぁぁぁあ!」」」
グリフォンが駆け抜けたことで生まれた隊列の合間を、先程、地面に落ちたものがスルスルと音もなく進んで行った。
それはラミアのミケーネ(金髪碧眼青体。Dカップ)だった。
ミケーネはその胸に一人の男を抱きかかえていた。
俺である。
俺は両腕を精一杯左右に広げて叫ぶ。
「【幼女化ビィィィィィィィィィィィム!】」
俺の両方の掌から、左右それぞれ15メートルの【幼女化ビーム】が放たれた。
俺が叫んでいる間も、ミケーネは止まることなくグリフォンの後を追うように、隊列の間を突っ切って行った。
「【幼女化ビィィィィィィィィィィィム!】」
一回目の掃射が終われば、直ちに二回目の【幼女化】に入る。
ミケーネが魔族兵の隊列を掛け抜けて森に入った頃には、四回目の【幼女化】が終わっていて――
俺たちの背後には数多くの魔族兵が地面に倒れ伏していた。
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