第119話 ライラと水着の温泉回

「そういえば、ルカちゃんもグレイちゃんも、あの妖異を見ても怖がらなかったね」


「ん-っ、そういえばそうじゃったかのぉ」


「うーっ! 全然、怖くなかった、うーっ! でも気持ち悪かったー!」


 森の黒山羊を倒した後、俺たちはそんな会話をしながら、グレイベア村に戻る道を歩いていた。


 散歩しながら帰ろうというルカの提案に乗ったわけだが、言い出しっぺの本人は、いま俺の肩に乗っている。もちろん、歩くのが疲れたから肩車しろと駄々をこねた結果だ。


 グレイちゃんの方は、俺の目の前をしっかりとした足取りで歩いている。疲れている様子は微塵もない。


 いつもならルカに嫌味のひとつでも言ってやるところだが、今はご機嫌を取りたい時期なので、俺は文句を言わずにルカを肩に乗せたまま歩いている。


「だが確かに奴からは、恐怖を媒体とした威圧を感じておったぞ。アレは並みの人間や魔族なら正気を失ってしまうじゃろうな」


「ショゴタンのときは、ライラでさえ怖がっていたからね」


 ネフューネ村の帰りにショゴタンと対峙したとき、初めてショゴスを見たライラは恐慌状態に陥ってしまった。そのときはただの幼女だったルカもグレイちゃんも、同じく恐怖で身動きが取れなくなっている。


「うむ。いくらライラでもアレばっかりはどうしようもなかろうよ。よほど強い魔法耐性でも持っていない限り、どんな強靭な精神を持っていたとしても恐怖を防ぐことはできんじゃろう」


「それじゃ、普通の人間が妖異に出会ったら、もうどうしようもないの?」


「うーむ。予め妖異が現れるのを知っていて、事前に腹を括っておれば、いきなり気を失ってしまうことはないかもしれんが、それでも恐怖でまともに動くのは難しかろう。というかわらわとしては、お主が妖異を見ても平気なのが納得いかんのじゃが?」


「俺は、頭の中の精霊さんたちが守ってくれてるんだよ」


「普通に聞いたら頭のおかしい人間の言い草じゃが……なるほど精霊の守護によるものか。ふむ。精霊を使って妖異の影響から守れるか、調べてみる価値はありそうじゃ」


 そんな話をしながら歩くこと数時間。俺たちはグレイベア村に戻ってきた。


 もちろん、ずっと肩車をしていた俺はヘロヘロだった。


「づ、疲れた……妖異を倒すより帰り道の方がずっと大変だった……」


 村長宅の受付ロビーでルカを降ろした後、床にへたり込んだを俺の頭をグレイちゃんがナデナデしてくれる。


「妖異を倒したのはわらわじゃろうが! だがシンイチ、ご苦労じゃったな! ちゃんと褒美は用意しておるぞ!」


「ほへ? ごほうび?」


 パンッ!とルカが手を叩く。


「ライラ! シンイチが戻ったぞ! 温泉に入れてやってくれ!」


「はーい!」


 ルカの声に応えて、ライラが小走りで受付ロビーにやってきた。


 なんということでしょう! ライラは水着姿でした!


 しかもビキニである!


「お帰りなさい! シンイチさま!」


 汗びっしょりで床にへたっている俺を、ライラが優しく抱き起こしてくれた。


 はぁ……ライラの匂いで癒される。


 まるで温泉にでも入ったかのようなライラの回復力……って、


「温泉!? ルカちゃん、今、温泉って言った!?」


「うむ。確かに温泉と言ったぞ、さっさと行ってライラと浸かってくるがいい」


 マジで!? 温泉あるの?


 という視線をライラに向けると、ライラがコクリと可愛く頷く。

 

「うぉぉぉ! 行こう、ライラ! 早く温泉に入ろう! 一緒に洗いっこしよう! いや、俺がライラの身体洗うから! 隅から隅まで全部綺麗にしちゃうから! 早く早く! 早く行かないと……」


 俺はライラを急かせて温泉へ向った。


 早く、早く、早くしないと……


 前屈みになっちゃう!


 実際、温泉の入り口に着いたとき、俺は完全に前屈みになっていた。


 村長宅内にあった温泉は、マジ温泉だった。


 俺はライラの身体を丁寧に、超丁寧に、隅々まで、やさしくソフトに厭らしい手つきで洗った。


 ライラもお返しにと、俺の身体を洗おうとしたが、俺はもう我慢しきれなくなりつつあったので、自分でさっさと身体を洗い……


 また二人で身体を洗わざる得なくなるようなことを色々あれこれ頑張った後、


 二人でゆったりと温泉に浸かった。


 途中で誰かが入ってくるようなことはなかったよ。


 何故なら、温泉入り口にある大きな木札をひっくり返しておいたからな。


 木札の裏には、手彫りの大きな文字が彫られていた。


『シンイチとライラが交尾中! 只今、立ち入り禁止!』


 例えイタズラであっても、この警告を無視できるものはタヌァカ三村にはいない。


 自ら好き好んで、半年も幼女暮らしをしたいと思う者はいないのだ。


 いや、もしかしたらいるかもしれないけど、それならそれで普通に俺に言ってくれれば、いつだって幼女にしてあげるからね。


 というわけで、俺とライラは温泉で楽しい時を過ごした後、コーヒー牛乳を飲み、遊戯室で卓球をして、村長宅に作られたシンイチ&ライラの間に案内してもらい、畳の上に寝転んで、ライラに膝枕と耳かきをしてもらい、それからライラにエロエロとエロいイタズラをした後、そのまま再びライラと夫婦合体!


 ……しようかと思ったけど、どっと昼間の疲れが襲ってきて、結局、その日はそのまま眠ってしまった。


 

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