4

 僕は目を白黒させてしまった、一体ここはなんなのだろう。アトラクションにしては不思議すぎる。

 ここも押せと催促されてるみたいでつい押してしまう。


「これなんだろ」


 黄色いボタンを押すと上からブランコみたいなのが降りてきて、僕は上を見上げながら無言でそれが降りてくるのを見ていた。


「で、これでなにすんの?」


 まぁ、いっか。残りは……。

 ピンクのボタンを押すと、いきなりベッドが回転しだした。


「うわあ!」


 僕はベッドごとくるくると回ってしまう。


 ああ、なにこれ。メリーゴーランド?


 洗面所から戻ってきた隆二がタオルで顔を拭きながら、シャツを着崩していて、クルクルしている僕を呆れ顔で見た。


「いいから、もう止めなさい」

「ああ、でもっ、止まらないっ、隆二止めて!」

 慌てる僕にため息をつくと隆二は素早くベッドに乗ってきてボタンを押してくれた。


「遊びにきたわけじゃないんだけどな」

「ごめんなさい」


 しばらく止まるまで回転するベッド。


「いや、本当は僕が謝らなきゃいけないことが沢山あるんだけど」

 

 静かになった部屋に僕ら二人。


「あの人は、昔付き合ってた人なんだ。僕がそう、この世界に来た時に最初に知り合った」

「この世界って、ボーイズラブビデオの?」

 僕の問いかけに隆二は僕を見つめたまま頷いた。

 僕は隆二の瞳が綺麗だな……なんて思ってしまった。

 少し潤んでるし、形のいい眉毛に鼻筋が綺麗で高くて、唇の形も綺麗。

 こんな人を僕が独り占めできるわけないんだと思うとまた少し胸が痛くなる。


「あの頃の僕は自暴自棄になっていて、むしろ抱かれる事で自分を壊そうとしていた」

 僕は妙にしおらしい隆二の姿がなんだか嫌だった。

 さっきのことを思い出したらなんだか胸が焼け付くように痛くなった。

「今は自暴自棄になってないんだよね。それじゃなんでキスしたの?」

「それは」

「避けようとすればできたはずだよ、そのっ、彼にどこか負い目とかそういうのがなければ」


 隆二は僕の言葉に少しだけ目を見開くと、瞳を伏せて息を吐いた。


「負い目か。なかったと言ったら嘘になる。僕は彼から逃げ出したからな」

「彼の中では終わってないの?」

 僕の疑問に隆二は少し動揺したようだった。


 僕は隆二はそのことで真剣に考えているように見えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る