第2話これって確かにあの場所行きだったよな。

周りを見渡してみる。


自然豊かな森の中を馬車に乗って移動してる。


手を縛られた状態じゃなきゃ完全に観光に来た気分だろう。




空が素晴らしく青い。


鮮やかな緑の合間に白い雲が見える。澄んだひんやりとした空気が鼻を通って肺に入ってくる。


美味いな…




「ちょっと待って。ゲームなのに空気が美味い?そんなわけないだろう。まさか感覚に干渉するVRなんか買った覚えないし、実用化もされてないだろうし。どうなってんだ?」




ぶつぶつと独り言を喋ってるのを見た私を斜め方向に座った男が目を丸くして見てる。


「おまえさん。死ぬ時が近づいてるから頭がおかしくなったのか。まあ無理でもない。」




???「なんで私があんたらと一緒に死ななきゃならんのだよ。おかしいよこれは。」




もう1人向かい側に座った男が自分の潔白を訴える。




これは知ってるぞ。おっさん馬盗んだ泥棒やん。そしてここは反乱軍を処刑する為に移動してる真っ最中だ。




何度やったか分からないくらいこの場面は覚えてる。




そして急に時間が止まったかの様に風景の流れがゆっくりとなる。




「うん?」




SYSTEM


「外部からのデータを認知しました。」


「強化スーツ[サイラス]を認識しました。」


「現地言語能力を認知しました。」


「能力値を引き継ぎます。」


「スキルツリーの解放を行います。」


「レベル1により解放出来る武器が限定されます。」


「種族[バトルウォーリア]により全ての能力値に補正が掛かります。」


「種族補正により薬物耐性、精神汚染耐性が大幅に上がります。」


「強化スーツのコールサインを認知します。」


「行動制限の解除を行います。」


「…」「…」


目まぐるしく目の前をメッセージが流れて行く。




これはもしかして異世界転移ってやつか⁉︎




ひょっとしたら夢かもしれないと思い口の中を噛んでみた。


痛いわ…




色んな情報が流れる中で頭は冷静になっていく。




そして、今の私の姿はどうなってるんだ?急に知りたくなった。


SYSTEM


「モニターをミラーモードに切り替えます。」


おおっと!親切だなおい。




そこにはしっかりした体格の20代の男が居た。


ああ、この顔には覚えがある。


もし生まれ変わるならこういういい男になりたいと思って作ったアバター だ。




顔立ちはアジアンと西洋人のハーフの様な雰囲気。


髪は少し赤みがかった短髪の黒髪。


目は落ち着いた深い青色の瞳が自分を見ている。


鼻は高くも低くも無く、整った顎ラインとマッチングしてる。


肌色はノーマルベースから少し白みを加えた。


まあ貴族肌と呼ばれたらそうかもしれない。


確かにキャラ作りだけで結構な時間を費やした結果物だ。




そうする内に大体状況がわかって来た。



現在、私の身体は下手したら何らかの事故により脳死状態で、自分が作った幻想である可能性も念頭に入れてる。



じゃなきゃこんな都合の良い事なんて起こる訳がない。


しかしもしそうだったとしてもだ。

自分が追い求めた世界がここにあるなら最大的に徹底的に楽しむべきではなかろうか?



絶対そうである。そうすべきである。


そう決めた瞬間、時間の流れが正常に戻ろうとしていた。


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