元アイドルの天才プログラマー
璃香は真剣な眼差しを俺に向けた。いつもとは違う表情に俺は少し戸惑う。
「分かった。なんだ?」
「これから“アーク”を経営していくなら、お金が必要でしょ」
「そうだな。今のところは資本金ゼロ円だからな」
俺の貯金を足しても十万円も届かない。これでは直ぐに経営破綻だ。破産だ。だから、この場合、出資や融資をして貰う必要がある。あるいは金融機関と相談し、借金をするか。当然、学生の身分ではかなり厳しいだろう。
「賢、やりたい事業は決まってるの?」
「実は、オンラインゲームの運営をやってみたいんだ」
「えっ、オンラインゲーム?」
あまりに意外だったらしく、璃香はキョトンとしていた。
「もっと先の予定だったから……なんと言っていいやらだが、同学年に凄腕のプログラマー女子がいてな。しかも
「ま、まさか……賢ってば、あの隣のクラスの『
「なんだ、知っていたのか」
「有名人だもん、知ってるよ。あの子って、明るい性格で誰にでも好かれるタイプじゃん。優等生ってタイプで、生徒会長候補でしょ」
一年の時、数々の成績を残し、伝説となった。その名、噂は県内に留まらず全国に
「その和泉をスカウトしようと将来的に思っていた」
「そんな無茶な……」
呆れる璃香は、頭を抱えていた。
確かに無謀な計画で、到底実現しないだろう。
これを最大の武器にする。
「諦めるには早いと思うぞ。璃香、和泉を引き入れる為にも力を貸してくれ」
「でも、面白そうね。和泉さんを仲間に……いえ、社員に出来れば相当な戦力になると思うし、オンラインゲームの開発もお願いできるかもね」
「おぉ、乗り気じゃないか、璃香」
「秘書だもん、当然でしょ」
と、璃香は静かに俺に密着する。……なんだろう、良い匂いがする。ふんわりとした感触に包まれ、俺は心臓のドキドキが止まらない。
「よろしく頼む」
「うん。それで資金の事だけどさ」
「おう?」
スマホをタップし、画面を見せる璃香。なんだ? 画面に何が……って、なんだこれ。そこには恐ろしい桁の金額が記載されていた。
「これ、アークの運営資金にして」
「さ……三千万円!?」
何度数えても、それは『三千万円』だった。そんな桁、人生で初めてみたよ。てか、どこから沸いて出てきたんだか。
理由を聞くと、どうやら『株』で儲けたものらしい。親が投資家とか言っていたけど、本当らしいな。璃香にはその才能が受け継がれているようだ。
「最近、海外株を取り引きしていてね~。それで儲かっちゃった」
「す、凄いな。でも、いいのか……璃香にだってやりたい事とかあるんじゃないの?」
「それがねー、あたしに夢ってないんだよね。欲しい物は大抵、お父さんに買って貰って満足しているし。お金の使い道に悩んでいたの。……で、そんな所に現れたのが夢を持つ、賢だった。だから、あたしは賢の夢を追いかけたい」
ここまで全力サポートされているんだ、それを無駄になんてしない。追いかけてくれるのなら、俺は寧ろ引っ張っていく存在になりたい。だからこその社長だ。
今こそ、自分の人生を変えるチャンス。……いや、既に大きく変わった。俺にとって璃香は女神様だ。でも、恩は返していかねば罰が当たる。
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