5-14
炎が燃え上がり、周囲の温度は上昇していく。それに伴い、宮西の逃げ場は次第に失われていく。
そして宮西の周囲にあった五つのビルは全て崩壊した。瓦礫に引火した炎は激しさを増す。 宮西とは十メートルほど隔てた
「……そろそろくたばれよ」
低い声でそう言い放った。
――刹那、
結局、その防御壁は破られることはなかった。
「その防御壁の持続効果はおよそ四秒、そして魔法を構築するのは三秒かかる」
突如冷静に述べ始めた
「瓦礫まみれな場所で、疲れ切った頭で、はたして上手く下がることができるかな?」
宮西はほんの僅かだが、瓦礫に足を引っかけ、もたついてしまった。急いで『
「――――」
声すら発することができなかった。宮西は数秒間宙を飛び、瓦礫に身体を叩きつけるように、破片の絨毯を転がっていく。そうして口元から血を吐き出し、ぐったりと人間の座高ほどはある瓦礫に身を預ける格好となった。当然のように、少年の身体はピクリとも動かない。
「終わり。意外と呆気ない結末だったね」
ボロボロになった宮西に、ゆっくりと掛けよる
「『
その時、かすかに宮西の眉が動いた。
「まだ……おわ……りじゃ、……ありま……せん…………よ……」
そしてゆっくりと右腕を挙げ、力なく
「京ちゃんはすごく頑張ったよ。それは認めてあげる。足りない能力をフルに活用してこのあたしをここまで追い詰めたのは誇っていいよ。もう馬鹿になんかしないからさ、その拳を下ろして。勝負はもう付いたから、みっともないことはしない」
語りかけるように言う
「たとえ……僕が終わりでも……」
宮西は知っている。彼が一人で闘ってはいないことを。そして信じている――彼女のことを。
「――――夏姫が……います!」
「なっ、に……」
「――――動くな」
宮西の言葉だった。その一言に、ピタリと
「……僕も、……どこにトランプが……隠されているのかは分かりません……。なんせ……夏姫が勝手に……攻撃を受ける直前に……仕掛けたものですから……」
魔法でもロジックでもない。タネも仕掛けもないなんて枕詞が似合いそうなほどの単なる手品。それは姉の夏姫――
「あ、あたし……そんな手品知らないよ? いや……、魔女ちゃんが手品好きなのは知ってるけど……。あたし…………」
次第に揺れる少女の瞳。
宮西は心の中でクスリと笑った。いつの間に『
「……二人で……つくり……あげた……手品です……」
「チッ、あたしの負けね。
力が抜けたように、膝から崩れるタキシードの少女。こうべを下げ、ロングの茶髪が垂れるように少女の顔を覆う。
だけれども、少女は首の動きだけでフワリと髪を振った。
「でもね、あたしは諦めてないから。またいつか
「ハッ、笑ってるけどね、メチャメチャ悔しいんだよ? ここまでくるのに何年かかったと思う? でも、でもね、最後に取り乱す悪役ほど情けないモンはないから。途中で取り乱したことは反省しないとね」
「最後くらいはカッコつけて終わらせてね?」
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