5-9
学校の教室程度の広さの暗闇に染まる部屋、二人の少女が間を空け相対す。間合いはおよそ十メートル、一つの動作で十分に距離を詰めることが可能。
「お久しぶり――――セリア=ベケット。いや、今はその名前で呼んでも分からないか」
ピクリと、その名を耳に入れたと同時に反応を示す
「生まれた時の名前なんてどうでもいいよ。今の私は
「ふぅん、身体の優先権を京ちゃんと
「そうだよ、こうしていられるのは持って三分くらい。本当は京ちゃんと一緒に闘いたいけど、
「あっそ。二年前は情けなく弟に助けを求めてたクセに。そうやって強気になれる気が分からないんだけど? 舞台が〈R4〉になっただけでしょ?」
「
――――互いを潰しにかかるため、二人は同時に一歩を踏み出した。
「まずはこんな狭っ苦しい場所を変えよっか」
「――――吹き飛べ、『
「――――ッ!? なんつー攻撃、これだけ離れても風が消えないとは――……」
〈ブロムベルグ〉から距離を置いても強力な風は止むことを知らず、速度を保った空気の流れにしばらく身を預けた
だが、
「行動を読む能力を持ってるなら、それに追いつけないほどの攻撃を浴びせればいいだけ」
再びトランプに高速で数式を書き上げ、空に放り出した。
「――――貫け、『
言葉とともに
五百メートル離れた
「チッ、このっ!!」
レイピアを振り抜き、自らに降り注ぐ弓矢を風のようになぎ倒すものの、振り払えなかった弓がいくつも腕や胴体を傷つけた。
「――――『
しかし、
だが、
「その程度の攻撃、私が読んでいないと思ってた?」
防御魔法――『
一枚だけではない、五重の薄緑色の壁が
「――――『
その声と同時に、
「……くっ、なんて重さ……ッ!」
ギリギリと奥歯を鳴らし、
「チッ! 自由落下はマズイ!」
頭から、茶髪を顔や首に絡ませて、力を抜くように落下する彼女。
「逃がさないからっ」
「――――消し炭になれ、『
ビルに囲われるようにポツンとある平らな場所、遙か離れた高さからも分かるほどの巨大な赤い魔方陣が
轟々と音を立て何度も噴き出す炎、
対照的にふわふわと紺のマントを風に靡かせ、逆さまに自由落下する
「あれれ、先が読めるんじゃないの? 反撃らしい反撃は見当たらないけど? ほらっ、魔法なんて軽く躱して反撃してみなよ」
ちょこんと首を傾げて呟く
「――――『
トランプを夜空に向かって放った
大量の雨粒を全身に浴びる
「ハァァァァァァァァァァァァッ!!」
自由落下により生じたエネルギーを相殺するがごとく、レイピアを鋭く地面に叩きつけた。しかし立つという動作はできたものの、彼女の足元はよろよろとふら付く。水分を吸って重みを増した服が枷になるように、彼女の身体の動きは鈍い。
魔法によって降り注がれた水は洪水を造り上げ、両者の膝元を濡らすほどだった。
「まだまだ終わりじゃないから」
痛みで喘ぐ
「――――『
トランプは光り、八方に広がる水の絨毯は
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