第3話 ギルドからの依頼 02

翌日に村の人間と合流して探索を開始した。

バジリスクが相手なので特に腕の立つ人間が集まっている。

目立っているのは村長と宿屋の親父だろう。


「甘いわ!!」

「ふん!」


大蛇が茂みから襲って来るも、村長の大剣で一刀両断にされる。

反対側のトレントも動き出したが宿屋の親父が瞬殺する。

宿屋の親父は長爪を手にはめており、熊人だけあってまるで野生の獣のような動きだった。


「今の、偶然だと思う?」


「いや…、多分だけど統率者がいると思うよ。」


ワドとシザーが話し合っている。

大蛇とトレントが連携じみた行動をした事を言ってるのだろう。


「ならバジリスクが統率者になるか?」


「そうなると思う。バジリスクは知性も高いって話だし不思議じゃないよ。」


ゲインも話に加わる。

シザーは魔法使いだけあって博識で、2人から頼られる事もよく有る。


オレは荒事専門だ。

大蛇を倒してポーズを決めてる村長アレと同類かと思うと頭が痛いが、まだオレはマシなはずだ…。


3人の話はすぐ終わり、バジリスク以外の敵にも警戒して進む事になった。

先ほどの襲撃から考えると既にこちらは補足されているから、オレの光魔法は控えるように言われた。

警戒されて逃げられるのを避ける為だ。


「ならこれだけでも渡しておくぞ。」


光の護符をいくつか渡しておく。

自作なのでそこまで効果は無いが、薬と合わせれば石化も大分弱まるだろう。


「私達のも有るのか!ありがたい!!」


村長がバシバシと背中を叩いてくる。

自分の腕力を分かっていないのかと思うほど力強く、本当に感謝してるのか疑ってしまう。


「分かったから叩くのを止めろ!どれだけ強く叩くんだ!!」


我慢出来ずに叫ぶと親指を上に立てて爽やかに笑ってくる。

どうしてオレの周りにはこんなのばかりが集まるのだろうか…。


騒ぎながら奥へと進むと川が見えて来た。

こんなに騒いで探索するなど普通はやらないのだが、今回は敵をおびき出すのも兼ねている。

自分達の庭で騒がれて苛立っているのだろう、川辺には多数の魔物が待ち構えていた。


「バジリスクもいるな。」


奥に5匹ほど見える。

本来ならSランクのチームでも厳しい敵だが、どうなるか…。


少し色のついたバジリスクが魔眼を発動する。

初手で最強の攻撃をしてくるとは、余程苛ついてたのだろう。


「光よ!」


すぐに障壁を貼る。

他のバジリスク達も魔眼を重ねてくるが、こちらも魔力を込めて対抗する。


「イケるぞ!」


青色のバジリスクが弱体化、赤色が魅了の効果を追加して来たようだが、問題無く防ぐ事が出来た。

すぐにドーツと村長に防御魔法をかける。


「赤と青からのは2発も防げん!オレが赤に行く!!」


かけ終わると同時に3人で動く。


「ならワシが青いのを貰おう!」


「では私は露払いを任された!!」


オレを先頭に最奥のバジリスクまでかけて行く。

他のメンバーも護符が有るから少しは持つはずだ。


立ち塞がるウルフやオークをすれ違いざまに切り捨て、川に突っ込む。

魔法で足場を作り水面を駆けて行くが、残りの2人はそのまま進んでいく。


「道をけい!!!」

「くらえ!!」


自然の川に対して言う台詞じゃ無いと思いながら、その非常識さに呆れる。

2人の斬撃で川は割れ、水に濡れる事無く川を渡って来た。


バジリスク達もその光景に驚いたようで、ノーマル種は少し後ずさっている。

村長が笑いながら攻撃を加える。


「ワハハ!後ろに下がるとはな!!気迫が足りんわ!!!」


村長が一振りで3匹の相手に攻撃を加える。

衝撃の余波を受けて後ろの木々も倒れている。


その横を通り抜け、赤色のバジリスクまで辿り着いた。


「今更逃げようとするな!」


劣勢を悟ったのだろう、逃げようとする相手にそのまま斬りかかる。

光を纏わせた剣は硬い皮を簡単に切り裂き、尻尾を両断した。


ようやくこちらに攻撃をしてくるが、石化の魔眼を闇雲に放ってくるだけだった。


「効かんわ!!」


叫びながら首をはねる。

魔眼に頼らなければもう少しは戦えただろうが、戦闘経験が足りない個体だったのかもしれない。


2人を見ると既に戦いは終わった後だった。

ドーズはオレと同じように首を切っており、村長は3匹まとめて2枚に開いていた。

川向こうを見てみると既に敵は逃げ始めており、掃討戦に入っているようだ。


「見事だったぞ!!」

「全くだ!良い鍛え方だ!!」


2人が叫ぶように称えてくれる。


「2人もな。一瞬で終わったみたいだな。」


バジリスクはS級の敵だが魔眼が無ければA級下位まで落ちるだろう。

S級の2人が苦戦する筈も無く、オレの戦いを見守る余裕まで有ったみたいだ。


2人と共に戻ると、こちら側も戦いを終えていた。

バジリスク以外は普通のモンスターだから深追いしなかったのだろう。


「3人ともお疲れ様…。どうして戻って来たの?」


ワドが笑顔で聞いてくる。

何でか知らないが怒っている雰囲気なのだが…。


「どうしてって…。全部倒したし後は帰るだけだろう?」


ドーズと村長に押され、仕方なくオレが答える。

その内容に納得がいかなかったようで、目頭を指で押さえている。


「バジリスクの素材は高級品なのよ?戦いが終わったらすぐ処理しないと駄目じゃない!」


そう言って奥を指差す。

シザーも「何で忘れるんだよ…。」と言って頭を抱えている。


「確かにな…。」


何も反論する事が出来なかった。

敵を倒した事で満足してしまい、後は帰る気満々だった。

オレは脳筋では無いが、たまにはこう言うことも有るだろう。


「もう!すぐに行きなさい!」


急かされるように押される。

後ろを見ると2人は既に居なくなっており、バジリスクの処理を始めていた。

慌ててその後を追い、全員で解体をするのだった。



「今日は宴だ!!」


村へと帰ると早速村長が叫ぶ。

森の異変は恐らく終わっただろうとの事で、少し気が早いが宴をすると言い出したのだ。

オレ達も強制参加で、任務中にも関わらず酒盛りする事になった。


「これって良いの?もう少し継続調査は必要だよね?」


「折角の宴を断る訳にも行かんだろう。討伐に協力もしてくれたんだ。」


シザーの呟きにゲインが返す。


「S級チームに地道な調査は似合わんさ。少し確認したら後は任せれば良いだろう。」


異変の調査なら未知の敵がいるかも知れんが、終わった後の経過観察までずっと付き合う事は無いだろう。

元々『鉄と酒』は討伐主体だし問題無い筈だ。


「ツェートの言う通りね。マスターもその辺りは分かってるわよ。」


ワドの了解を得られた事で急いで広場へと向かう。

バジリスクの肉も提供しており、肉を焼いた良い匂いがしてくる。


「おお!!主役が来たか!!」


すぐ村長に見つかり、肩を掴まれる。


「今日は助かったぞ。」


宿屋の親父に酒を渡され、宿屋にいた女性に食べ物を渡される。


「ウチの旦那を助けてくれてありがとうね!光魔法に助けられたって言ってたよ!!」


女性はそう言って親父の腕を組む。


「あ、ああ…。」


まさかの事実にうまく言葉が出ない。

まだ若い女性に見えたが、まさか結婚していたとは…。


「にーちゃ、にーちゃ!」


膝を叩かれたので見てみると子供がよじ登って来ていた。


「メイ!お兄ちゃんが気に入ったのかい?」


その様子を見た宿屋の女将が笑顔で話す。


「ほう!もう若い女子を射止めるとは!手が早いな!!」


膝によじ登ってくる幼女を見ながら村長が大声で笑う。


女将も「良い男を見つけたねぇ。頑張るんだよ!」とか言っている。


「い、いや…何を言ってる…。」


オレが求めているのはロリでは無いのだ。

まだ青い果実も否定はしないが、この子では幼過ぎる。


「そうだ!メイは父ちゃんのお嫁さんになるんだぞ!!」


宿屋の親父も混乱しているのか、大声で叫び出している。

幼女に手を伸ばしているが、幼女はオレの服を掴んで離さない。


「ヤーー!にーちゃと一緒ーー!」


幼女の言葉に親父は打ちのめされてしまい、酒も飲んで無いのに真っ白に燃え尽きている。

オレも子供を抱えたまま酒を飲む訳にもいかず、シザー達にからかわれながら過ごすのだった。

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